スーパーの惣菜はどんどんパワーアップしている。それに伴い、私たちの食事の選択も、「この惣菜を食べたいからここに買い物に行こう」など、惣菜を一種の判断軸とするようになってきている。

そんななか、どこか親しみのある大手総合スーパー「イトーヨーカドー」が、惣菜をさらに強化していくという。今回、その発表会を取材した。本記事では、話題のご褒美プリンや本格麺、健康志向の新惣菜など、実際に試食して見えてきた同社の"本気の戦略"を紹介する。

  • イトーヨーカドー、惣菜をさらに強化

    イトーヨーカドー、惣菜をさらに強化

同社オリジナル惣菜ブランド「YORK DELI(ヨーク・デリ)」は「毎日食べたいおいしさ」をコンセプトに始動。誕生2周年を迎える今回、惣菜を中心に強化していくとのこと。

なぜ、「惣菜」に着目したのか。同社執行役員 フード&ドラッグ事業部長 土居仁氏は、「共働きや単身世帯の増加や食事の時短・簡便ニーズの高まりに加え、スーパーを選ぶ基準として『惣菜で選ぶ』と回答した人が40%という結果がありました。これを受け、惣菜が売り場の一部ではなく、戦略の軸として捉える必要があると判断しました」と語った。

イトーヨーカドー惣菜ブランド「YORK DELI(ヨーク・デリ)」、どう変わる?

今回の強化ポイントは2つ。1つは食卓に並ぶことの多い唐揚げやロースカツなどの主菜や麺などの主食に着目した「日常惣菜の進化」と若い世代を中心とした「新しい客層の取り込み」だ。

これを実現するために、同社の強みである「PEACEDELI」の最大限の活用に取り組んでいくという。PEACEDELIは、セブン&アイ・ホールディングスのグループ会社で、同じ館で商品の加工・加熱ができる。そのため、店舗によるばらつきを防ぎ、安定した品質と安定供給の実現が可能になるのだとか。

特に"本気"の惣菜をピックアップ

自分への「ご褒美スイーツ」の拡大

"プチ贅沢"文化の高まりから、大手コンビニやスーパーなど、さまざまな小売企業が今力を入れている"スイーツ"ジャンル。イトーヨーカドーも負けじと強化していくという。同社の戦い方は「素材の味を活かしたシンプルな設計」だ。

なかでも「とっておき! わたしのご褒美プリン(まごころたまご使用)」(344円)は、テスト販売から想像以上の好調ぶりだったそう。すでにSNSでも「これ以上ないおいしさ」「どこか懐かしいレトロプリン」などのポジティブな声が寄せられ、話題になりつつある。

  • 「とっておき! わたしのご褒美プリン(まごころたまご使用)」(344円) 店頭陳列

    「とっておき! わたしのご褒美プリン(まごころたまご使用)」(344円) 店頭陳列

写真を見るとわかると思うが、どこか不思議な形。プリンの上に別添えで四角い生クリームが乗っている。食べてみるとその理由が分かった。

  • 「とっておき! わたしのご褒美プリン(まごころたまご使用)」

    「とっておき! わたしのご褒美プリン(まごころたまご使用)」

まずはクリームなしでプリンだけを一口。すると、卵の濃厚で素朴な味わいを感じられた。固めだけれど、喫茶店の固いプリンよりは少し柔らかい食感で、とてもやさしい味わいだ。

次に、別添えのクリームと一緒に一口。クリームも甘さ控えめでミルクの素材の味が感じられる。そしてなによりプリンとクリームの食感と味わいの相性が抜群。

  • 「とっておき! わたしのご褒美プリン(まごころたまご使用)」上には四角いクリームが

    「とっておき! わたしのご褒美プリン(まごころたまご使用)」上には四角いクリームが

そして、「そろそろ飽きてくるかな」と思った頃にカラメルが登場。カラメルは控えめの量で苦すぎず、あくまでプリン本来の味の引き立て役をまっとうしていた。

はじめに(1)プリンだけで素材の味を楽しんだ後、(2)クリームをつけてさらにご褒美感アップ。そして(3)アクセントにカラメルと絡めて味わう。クリームが別添えなのは、この3ステップで味の違いを楽しんでほしいという開発者の想いが込められているように感じた。そして、プリンにしては強気な274kcal。ただ、重さは全くなく総じて優しい味わいのしつこくないご褒美プリンだ。

ちなみに、プリンなどの洋菓子のカテゴリーだけでなく、和菓子も拡充していくとのこと。従来のおはぎに加え、わらび餅や芋を使ったスイーツなども展開していくという。

ヘルシーで色鮮やか、毎日食べたい「ヴェジボックス」

今回、新しい客層の取り込みは若年層に限らず、「健康志向の人」にもターゲットを置いている。惣菜売り場を鮮やかに彩る新ジャンル「ヴェジボックス」。満足感はありながらもさまざまな野菜をバランスよく摂取でき、お弁当替わりとしても楽しめるボックスだ。

  • 「ヴェジボックス」の陳列が売り場を彩る

    「ヴェジボックス」の陳列が売り場を彩る

「蓮根入り鶏つくねのヴェジボックス」「揚げ麺と鶏ハラミのヴェジボックス」「ビビンバ風ヴェジボックス」「タルタル豆腐 HBヴェジボックス」「タコライス風 ヴェジボックス トマトドレ」「緑黄色野菜のヴェジボックス 人参ドレ」の全6種を展開。

  • 「蓮根入り鶏つくねのヴェジボックス」(538円)

    「蓮根入り鶏つくねのヴェジボックス」(538円)

味わいも、1つのボックスの中にさまざまな味わいや食感、色彩が詰まっていて、一週間ローテーションして毎日食べたくなるラインアップ。ほぼワンコインの538円で、ランチにもぴったりだ。

ガツンと食べたい、でも素材を活かした優しい味わいの「揚げ物」にリニューアル

さらに、揚げ物の代表、唐揚げやロースカツがリニューアル。こちらも素材の味を活かした戦略のようだ。惣菜部 総括マネジャー 中坪礼氏は「今、味の濃い唐揚げがブームになっています。その中で、今回あえて優しい味付けで勝負しました」と話した。

だし自体は開発当初からの自慢の味を守り、その他の部分を引き算で優しい味付けに仕上げたとのこと。この「だし自慢! 鶏もも醤油唐揚げ」(268円/100g)が、からあげグランプリ東日本スーパー惣菜部門で金賞を受賞するという実績も。

  • 「だし自慢! 鶏もも醤油唐揚げ」(268円/100g)

    「だし自慢! 鶏もも醤油唐揚げ」(268円/100g)

「YORK DELI」2周年を記念して、「ヨーク・デリ2周年記念! ヒーロー丼」(754円)を発売。人気第1位「だし自慢! 鶏もも醤油唐揚げ」、第2位「ひとくち豚ヒレカツ」、第3位「旨みジューシーロースカツ」を一度に楽しめる満足感たっぷりの弁当となっている。

  • 「ヨーク・デリ2周年記念! ヒーロー丼」(754円) 店頭陳列

    「ヨーク・デリ2周年記念! ヒーロー丼」(754円) 店頭陳列

  • 「ヨーク・デリ2周年記念! ヒーロー丼」

    「ヨーク・デリ2周年記念! ヒーロー丼」

健康志向のお弁当が登場したと思えば、背徳感抜群のお弁当も展開。同社の新規層への攻めの戦略がうかがえる。

「麺類」もより本格的に

最後に、主食となる麺類。まず、容器にそれぞれ赤と青のシールが貼られた蕎麦を試食させてもらった。箸で持ち上げた瞬間、その違いは明らかだった。赤のほうが麺がするするとほどけやすく、一本一本をつかみやすい。また、口に入れた瞬間に広がる蕎麦の香りにも違いを感じた。

実は、赤がイトーヨーカドーの新製品「~極みのど越し~石臼挽き蕎麦粉のざる蕎麦」(430円)、青が他社製品だという。

  • 赤が「~極みのど越し~石臼挽き蕎麦粉のざる蕎麦」(430円)、青が他社製品

    赤が「~極みのど越し~石臼挽き蕎麦粉のざる蕎麦」(430円)、青が他社製品

  • 「~極みのど越し~石臼挽き蕎麦粉のざる蕎麦」

    「~極みのど越し~石臼挽き蕎麦粉のざる蕎麦」

同社は、今回麺類もリニューアルしたとのこと。具体的には蕎麦、うどん、中華麺それぞれ麺の特長を統一。蕎麦は「香りが立ち、のどごしが良い」を意識し蕎麦粉の配合や急冷却製法の見直しを実施、うどんは「つるっと、もちっと」を意識し国産小麦の使用や多加水比率を変更、中華麺は「小麦香る熟成麺」を意識し専門店でも行われる熟成工程を採用している。

より本格的な"麺"を楽しめるようになった。ぜひ実際に食べて、香りや食感の違いを感じてほしい。

原材料の価格高騰への対処

発表の場で最も話題に上がったのは、やはり「価格」の話題。緊迫する世界情勢や物価高が続く現代。特に生活必需品と言える食品分野で新しいことに挑戦することは簡単なことではないはず。

それについて、土居氏は「今後、値上げの可能性はあります。しかし、現時点では自社の取り組みでどれだけ対応できるかについて取り組みたいと思っています」と話した。

具体的には、包材のフタの素材変更や、容器を重ねやすい形状への統一による包材コストの軽減に取り組むほか、弁当の「バラン」や販促ツールの削減、売上拡大によるコストカットなどを通じて、価格据え置きに向けた施策を進めていくという。


今までは正直、イトーヨーカドーに「惣菜」のイメージは薄かった。だが今回のリニューアルからは、「惣菜を目当てに立ち寄るスーパー」へ変わろうとする同社の本気度が伝わってきた。