フジ・メディア・ホールディングス(FMH)が12日に公表した「グループビジョン」で、子会社・フジテレビジョンの放送インフラ機能や放送用設備などをFMHに移管する検討を進める方針を示した。番組制作、報道、営業といった“ソフト”機能はフジテレビに残し、放送インフラなどの“ハード”機能を持ち株会社側に切り分ける「ハード・ソフト分離」を目指すもので、地上波テレビ局では制度上可能ながら、実現すれば前例のない取り組みになるという。
FMHは、同ビジョンでフジテレビを「有力なメディアを有するコンテンツカンパニー」と位置づけ、グループのコンテンツビジネスを統括する中核企業としての役割を明確にする方針を示した。事業領域ごとにグループから人材と知見をフジテレビに集め、戦略を統括する責任者を置くことで、グループ連携と機能の集約・増強を図るとしている。
その一方で、「放送インフラ機能、放送用の設備などハードアセットをFMHに移管することを検討する」と明記。将来的には、グループ会社の設備投資や保守・運用も集約し、グループ全体のハードアセットの最適化を進める。
12日に取材に応じたFMH・フジテレビの清水賢治社長は、フジテレビが持つ放送用インフラの部分を分離してFMHに移管する一方、番組制作や報道、セールスといった機能はフジテレビに残す考えを提示。このような地上波テレビ局のハード・ソフト分離については、2011年施行の改正放送法により「制度上はできるようになっているんですけども、実際にこれをやったところはまだない」ことから、今後は行政サイド(総務省)とも折衝しながら、具体的な実現方法を検討していくという。
背景にあるのは、放送事業の収益性改善だ。FMHは、2030年度のメディア・コンテンツ事業の営業利益目標を「350億円」に設定。さらに2033年度には「450億円」を目指すとしている。
その中で、地上波テレビ事業については、2025年度実績から440億円の営業増益を目標に掲げ、コスト構造改革とIP開発の強化、制作力・番組の商品力向上による増収を進める。
清水社長は、放送事業の粗利率を上げることについて「放送事業の持続性を考えたときには、取り組まなくてはいけないこと」と強調。放送事業は、関東エリアだけでも大きなインフラを抱え、全国規模ではさらに莫大な設備が必要になるとした上で、マスター設備や営業放送システムなども含め、「非常にインフラが複雑なものがたくさんある」と説明した。
かつては放送事業の収益性が高かったため、少しのミスも許されない放送の性質に合わせて、極めて高いスペックのインフラを整備してきたという。清水社長は、放送収入の将来的な減少が想定される中で、「ここを抜本的に改革していく必要がある」との認識を示した。
さらに、「言ってみると、インフラに過剰に投資されてきたんじゃないか」とも指摘。改革には「10年単位の時間がかかる」としながらも、「ちゃんと手をつけていけば、放送インフラにかかるコストはかなり減らすことができるだろう」と述べ、結果として放送事業の粗利率向上につながるとの見通しを語った。
FMHが掲げるのは、放送局を従来型のテレビビジネスにとどめるのではなく、IP・コンテンツの商品力とメディアの発信力が補強し合う「メディアで強化されたコンテンツ企業」への転換だ。放送インフラを切り離し、フジテレビ本体をコンテンツ制作・展開の中核に位置づける今回の「ハード・ソフト分離」は、その事業モデル転換を象徴する施策となる。
