フジテレビの清水賢治社長が12日、東京・台場の同局本社で取材に応じ、同日発表した新たな企業理念について説明した。かつて掲げた「楽しくなければテレビじゃない」からの脱却を表明した同局だが、清水社長は「見つめ直した結果、やっぱり僕たちは楽しいものをお届けしたいというのが、社員一人一人の中にしっかりある」と説明。その上で、新理念に込めた思いを「いつも自分自身に問いたださなきゃいけない」と気を引き締めた。
80年代から同局を象徴してきたスローガン「楽しくなければテレビじゃない」からの脱却を掲げた上で策定された企業理念は、「その楽しさは、何のためにある?」「楽しさに向き合わなければ、フジテレビじゃない」など、複数の指針により構成。
ゼロベースで作り上げたが、結果として再び「楽しい」という言葉を核にした理由を問われた清水社長は、策定過程について「まずは全社員から意見を求めて、各局室の若い層を中心としたメンバーが、集まっては議論して、その議論がまたそれぞれのセクションに戻ってフィードバックされていく中で、いろいろな言葉、考え方が出てきました」と説明。「楽しさという言葉ではないものも非常に多くありました」と明かす。
それでも最終的に「楽しさ」にたどり着いたのは、社員たちの根底にある思いが理由だったという。「フジテレビ社員たちに、自分たちは一体何をやるためにここに来たんだろうかと自問自答していくと、最終的にたどり着くところが、やはり人々に楽しさを贈ることがしたい、人々に楽しいと思えるものを見てもらいたいという気持ちが非常に強いんです」。
80年代から同局を象徴してきた「楽しくなければテレビじゃない」が制定される前は、「テレビ文化には、作り手が作って送り出すんだという発想も多かったと思います」とした上で、「それに対して、送り出し側の文化ではなく、見る人が面白いと思うこと、楽しいと思うことが基準なんだよと言ったのが、フジテレビの『楽しくなければテレビじゃない』というキャッチフレーズだったと思います」と確認。
そして、その本来の意味を「テレビの民主化、見る人の気持ちで考えましょう、見る人が主役なんですということだった」と評価し、「本来の『楽しくなければテレビじゃない』という考え方自体は、極めて正しいものだったと思います」と述べた。
しかし、時代を経る中で、その言葉の受け止め方が変質していった面もあると見る。「どんどん時代が経るにつれて、楽しいことがあれば、その裏ではどういうことがあっても楽しいことが最優先で、他のことをないがしろにしてもいいのかというような、楽しさ最優先主義みたいなところが、一部極端な形で出てきたんじゃないかと思います」と指摘し、「それがああいう(一連の人権侵害の)問題に発展してしまったベースとなったんじゃないか」と反省。
だからこそ、「我々も自分自身をもう一回否定して、もう一回見つめ直さなきゃいけない」と考えたといい、それによって、「社会に貢献するということが、その先でできることじゃないか」と、新たな企業理念を再出発の軸にしていく考えを示した。
