本コラムでは、2026年5月6日に惜しくもこの世を去った俳優・大葉健二さんを偲んで、大葉さんが出演した東映ヒーロー作品から忘れられない珠玉のエピソードをチョイスし、その魅力をご紹介しようと試みています。「スーパー戦隊シリーズ」を中心とした「前編」5本に続いて、「後編」での5本のエピソードは大葉さんが単独主演を務めた『宇宙刑事ギャバン』(1982年)を中心に選びました。

6 『宇宙刑事ギャバン』(1982年)第14話「愛と悲しみの別れ とどめの一撃!!」

『バトルフィーバーJ』(1979年)、『電子戦隊デンジマン』(1980年)と、ヒーロー作品のレギュラーを2年連続で経験した大葉さんは、次に『宇宙刑事ギャバン』で一条寺烈/ギャバン役に抜擢されます。東映の吉川進プロデューサー(当時)が『バトルフィーバーJ』と『電子戦隊デンジマン』での大葉さんの活躍を認め、東映ヒーローの「新路線」を担う本作の主役に推したのです。大葉さんは各方面からの大きな期待に応えるべく、時に熱血、時にクール、そしてコミカルさ、親しみやすさなど、戦隊ヒーロー5人分の持ち味をひとりで表現しようと考えたそうです。また、スタントマンとして参加した『人造人間キカイダー』(1972年)のころから共に経験を積み重ねてきた東映テレビ・プロダクションのスタッフたちとアイデアを出し合い、ギャバンスーツアクター(アップ用スーツ/山口仁、アクション用スーツ/村上潤)とイメージを共有しつつ、迫力あるスタント・アクションの見せ場を創り上げていきました。

第14話は、宇宙犯罪組織マクーが「生体合体装置」によって獣星人ダブルマンとベム怪獣を合成し、強敵ダブルモンスター(サイダブラー)を生み出した第13話から続くエピソード。ダブルモンスターの挑戦状を受け取った烈は戦いに赴く前、子どもたちを動物園や遊園地に連れていき、楽しいひとときを過ごします。終始、明るくふるまっていた烈でしたが、強敵と刺し違えたときのことを考え、内心「もしかしたら子どもたちの笑顔を見るのはこれが最後になるかもしれない」という思いを抱いていました。今回は激しいアクションで敵を倒すだけではない、ヒーローの「人間味」という部分にスポットを当てた、ドラマチックな名編といえるでしょう。

7 『宇宙刑事ギャバン』(1982年)第28話「暗黒の宇宙の海 さまよえる魔女モニカ」

銀河連邦警察・コム長官(演:西沢利明)の一人娘ミミー(演:叶和貴子)は、ギャバンのことが大好きなあまり超次元高速機ドルギランに勝手に乗り込んで、押しかけパートナーとなりました。本エピソードは、そんなミミーが宇宙の女殺し屋モニカ(演:吉岡ひとみ)に猛毒の矢を撃ち込まれ、生命の危機に陥るという筋書きです。

ミミーを助ける唯一の手段、それはモニカが手にする「命の花」のエキスを飲ませることでした。どうしてもミミーを助けたいと願う烈の熱い言葉が、冷酷な魔女と呼ばれたモニカの心の奥底に眠っていた「愛」の心を呼び覚ますといったドラマ展開が、観る者の胸を打ちます。卑劣なマクーによって命を奪われたモニカから「命の花」を託され、悲しみと怒りで激高しながらコンバットスーツを蒸着する、烈の美しいまでのポージングも心に残ります。悲劇の女殺し屋モニカを熱演した吉岡ひとみさんは、次回作『宇宙刑事シャリバン』(1983年)にて宇宙犯罪組織マドーの大幹部ドクターポルター役でレギュラー出演し、妖艶な美貌と威厳に満ちたふるまいで強烈な存在感を発揮しました。

8 『宇宙刑事ギャバン』(1982年)第41話「魔空都市は男の戦場 赤い生命の砂時計」

宇宙犯罪組織マクーの首領ドン・ホラーは、地軸転換装置によって一種のブラックホールというべき「魔空空間」を作り出すことが可能です。この空間に入り込んだダブルモンスターは、通常の3倍のパワーを備えてギャバンを襲うのです。通常はコンバットスーツを蒸着したギャバンが飛び込む魔空空間ですが、第15話「幻?影?魔空都市」では一条寺烈が生身の状態で魔空空間(魔空都市)の中に引き込まれ、日常と非日常の狭間でさまざまな敵の襲撃を受けるというアクションエピソードが作られました。情感のこもった熱い「演技」のほか、スピーディかつパワフルな「立ち回り」、そして高所からの飛び降りやロープによる綱渡り、爆発する車からの脱出といった「スタント」、すべてをこなす大葉さんならではの超人的アクションが、視聴者の興奮を誘いました。

第41話は第15話の好評を受け、ふたたび作られた「魔空都市」第2弾エピソードです。パトロール中、子犬を助けた烈がマクーの魔女キバ(演:三谷昇)の計略にはまり、魔空空間で次々に襲い来る敵と戦うことになります。都会のど真ん中で虚無僧集団と戦っていたと思えば、次のカットではいきなり江戸時代の街並みに飛び込んで、そこでオートバイ軍団に出くわすなど、時間と空間を飛び越えて次々とアクション場面が切り替わる不条理な面白さは絶品です。白い壁で覆われた何もない部屋に閉じ込められ、筋肉質の寡黙な男(演:高橋利道)から格闘戦を挑まれたり、自分とそっくりの姿をした「ニセ烈」とジープの奪い合いをしたり……という奇抜なアクションの数々は、大葉さんや金田治アクション監督たちがアイデアを出し合って具現化されました。烈がコンバットスーツを蒸着し、光の球になって空中を飛ぶという特撮エフェクトも、大葉さんが『電子戦隊デンジマン』のころからあたためていた「変身する際、光になりたい」というアイデアが『ギャバン』で形になったものです。

第41話のラストでは、命がけで救った子犬を愛おしそうに抱き上げ、たわむれる烈の姿が描かれました。演じる大葉さんもまた、犬や猫などの動物が好きだったといいます。劇中で子どもたちや小さな動物に向ける優しいまなざしは、芝居ではなく大葉さんのナチュラルな思いが込められていたわけです。

9 『宇宙刑事シャリバン』(1983年)第51話「赤射・蒸着」

『宇宙刑事ギャバン』最終回(第44話)でマクーを壊滅させたギャバンは、その功績を認められ、銀河パトロール隊の隊長に昇進しました。ギャバンに代わって地球担当刑事となったのは、元森林パトロール隊員の伊賀電こと宇宙刑事シャリバン(演:渡洋史)です。『ギャバン』の世界観を継承しつつ、新たにSFホラー風味を加えて作品的パワーアップを図った『シャリバン』では、若き宇宙刑事シャリバンと相棒の女宇宙刑事リリィ(演:降矢由美子)に指令を与えるギャバン隊長として、大葉さんがセミレギュラー出演することになりました。

実際にJAC(現:JAE)で大葉さんの後輩にあたる渡さんは、はじける若さと伸びやかな身体能力を武器に、体当りでスタント&アクション&演技に挑戦。赤いソーラーメタル製のコンバットスーツを「赤射蒸着」するシャリバンにふさわしく、悪のマドーに対する激しい怒りの感情をたぎらせ、子どもたちに強くアピールしました。

最終回「赤射・蒸着」は、一条寺烈と伊賀電がマドーとの最終決戦に臨み、同時にコンバットスーツを蒸着するシーンが見られる唯一のエピソード。魔王サイコの化身・戦士サイコラーという強敵に対し、それぞれの得意技を交互に叩き込むギャバンとシャリバンのアクションは、しびれるほどのカッコよさに満ちています。魔王サイコとサイコラーは、どちらかが敗れても片方からエネルギーを与えられて蘇生するため、両者を倒すには同時攻撃しかありません。ギャバンとシャリバンがサイコラーと魔王サイコにレーザーブレードを叩き込む、怒涛のクライマックスが作品を最高潮に盛り上げました。

10 『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバンTHE MOVIE』(2012年)

本作はスーパー戦隊シリーズ第35作『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011年)の、劇場版第2作にあたります。第1作『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』で大葉さんは『電子戦隊デンジマン』(1980年)の青梅大五郎/デンジブルーを演じ、『海賊戦隊ゴーカイジャー』第44話では『バトルフィーバーJ』(1979年)の曙四郎/バトルケニア役で出演していましたが、スーパー戦隊シリーズではない『宇宙刑事ギャバン』が、まさかゴーカイジャーと共演するとは……と、当時は多くの特撮ファンを驚かせました。

『宇宙刑事ギャバン』テレビシリーズ開始から30年もの時を経て、映像技術や造形テクニックも数段に進歩した状態で「復活」を果たしたギャバン/一条寺烈の勇姿には、かつてのギャバンを知るものはもちろん、ギャバンの名だけは聞いたことがあるか、まったく知らないという若い世代のファンの心をも揺さぶる強烈なインパクトがありました。ギラギラと銀色に輝くコンバットスーツ、胸にあるカラーボタンの点滅、気合を入れるときに輝く目(レーザースコープ)、レーザーZビーム、レーザーブレード、そして忘れてはいけない渡辺宙明さんのBGM(新録音)など、宇宙刑事ギャバンを構成するために不可欠な要素が巧みにアップデートされ、現役ヒーローであるゴーカイジャーと並び立つ活躍を見せるのが、この映画の見どころのひとつ。『ギャバン』ナレーター・政宗一成さんの発声を強く意識した関智一さんによる「では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう」というクールなナレーションも、しびれるしかありません。ゴーカイジャーの戦いとは別な場所で、邪悪な偽物「ギャバンブートレグ」を打ち破るギャバンといった、単独での見せ場があるのも最高です。そして圧巻は、曙四郎(バトルケニア)、青梅大五郎(デンジブルー)、一条寺烈(ギャバン)が同一画面で並び立ち、3人が会話までするというエンディング映像。改めて、大葉さんが演じていたヒーローたちの親しみやすい存在感、あたたかみを噛みしめることができました。

大葉さんが魂を込めて演じ上げた歴代ヒーローの戦いは、今では各種サブスク配信や映像ソフトなどで、比較的容易に視聴が可能です。これからも「アクション俳優・大葉健二」のすばらしさは熱烈なファン諸氏によって、永遠に語り継がれていくに違いありません。