2026年5月6日、俳優の大葉健二さんが惜しくもこの世を去りました。71歳でした。
1955年、愛媛県松山市に生まれた大葉さんは、1970年に上京し、千葉真一さんが創設したジャパン・アクション・クラブ(JAC/現:JAE)に入門。スタントマンとして『仮面ライダー』(1971年)や『人造人間キカイダー』(1972年)などに参加した後、『バトルフィーバーJ』(1979年)のバトルケニア/曙四郎役でレギュラー出演を果たしました。続く「スーパー戦隊シリーズ」の『電子戦隊デンジマン』(1980年)ではデンジブルー/青梅大五郎役、そして『宇宙刑事ギャバン』(1982年)でギャバン/一条寺烈役を演じ、鋭い切れ味とダイナミックな迫力のスタント&アクションと、メイン視聴者である子どもたちの心に響く情感のこもった演技の魅力で、幅広い世代から愛されるアクションスターとなりました。
このコラムでは在りし日の大葉さんを偲び、東映特撮ヒーロー作品の中から大葉さんが出演した、忘れられない珠玉のエピソードを10本チョイスし、その見どころを簡単に語ってみたいと思います。大葉さんが魂を込めて演じ上げた歴代のヒーローたちの勇姿は、今や各種サブスク配信や映像ソフトなどで比較的容易に視聴が可能です。これからも「アクション俳優・大葉健二」のすばらしさは熱烈なファン諸氏によって、永遠に語り継がれていくに違いありません。「前編」となる今回は、スーパー戦隊シリーズにおける大葉さんの活躍をふりかえってみることにしましょう。
1 『ジャッカー電撃隊』(1977年)第3話「5フラッシュ!! ほえろパンサー」
本名の「高橋健二」名義で出演した作品。大葉さんが演じたのは、天才空手家・小野夏子(演:志穂美悦子)の弟・隼人です。隼人は犯罪組織クライムの誘いに乗り、空手選手権で優勝しますが、勝利とひきかえにコマンド(戦闘員)となって働くことを強制されました。優秀な姉を尊敬し、追いつきたいと思うあまりに悪の手に落ちる悲劇の若者を、大葉さんはまっすぐな姿勢で演じ上げました。後半では、隼人の命を奪ったクライムに復讐するべく、夏子がハートクイン/カレン水木(演:ミッチー・ラブ)と共に激しいアクションを繰り広げます。
2 『バトルフィーバーJ』(1979年) 第30話「悪食雑食の料理長」
『バトルフィーバーJ』での大葉さんは、アフリカで生まれ育った野生児・バトルケニア/曙四郎を演じました。本エピソードは秘密結社エゴスが生み出した「ヘンショク怪人」の暗躍によって、四郎が生命の危機に陥るという筋書き。運動が苦手な都会の少年マサルに泳ぎを教えたり、森の中でターザンのように綱渡りしたりと、真っ黒に日焼けした健康的な肉体を誇る四郎の魅力が強く打ち出されています。四郎の衣服やバイクのサドルは好んで食べるわりに、肉体そのものはマズくて食べられないという、ヘンショク怪人の名前どおりの偏食ぶりが大きな見どころ。眠っている四郎に焼肉のタレをつけ、ライターの火であぶり焼きを試みるほか、ヒトデ状に変身して体内から食いつくそうとするヘンショク怪人の暴れっぷりと、四郎の生命力の強さを信じ、あえて無謀ともいえる作戦で怪人を撃退するバトルジャパン/伝正夫(演:谷岡弘規)の判断力にも注目です。
3 『バトルフィーバーJ』(1979年) 「暗殺者ジャッカル」
曙四郎は、個性派ぞろいのバトルフィーバー隊の中でもひときわ自由なふるまいを好む男で、海底基地ビッグベイザー内に子象を連れ込んだり、マムシを蒲焼きにして食べたりしています。本エピソードは、彼がアフリカで野生動物の保護をしていたころの旧友・竹内剛(演:友田僚)と再会を果たすお話。現在の剛は「ジャッカル」と呼ばれる凄腕のスナイパー(狙撃手)に堕していましたが、四郎はライオンの子どもを三日三晩寝ないで看病していたころの剛を信じ、あえて丸腰で彼に歩み寄ろうとします。嬉しいときは無邪気に笑い、深い悲しみで涙をこぼす、ストレートな四郎の感情表現の数々が今回の最大の見どころ。演じる大葉さんはふだんのコミカルさを抑え、シリアスな演技で観る者の心をつかんでいます。
4 『電子戦隊デンジマン』(1980年)第31話「魔法使い秘術合戦」
『電子戦隊デンジマン』で大葉さんが演じたのは、元サーカス団員で抜群の身体能力を備えるデンジブルー/青梅大五郎です。野性的なバトルケニアとは一味違い、スピーディなアクションを決めた直後、ヘーイ! と叫んで見得を切る、エンタテインメント性を重視した戦闘スタイルが大きな特徴です。本エピソードは、青梅がサーカス時代に生活を共にしていたマジシャン・朝風天山(演:高原駿雄)とまり(演:朝風まり)をゲストに迎えた回。朝風まりとは、世界的に有名なマジシャンとなる「プリンセス・テンコー(二代目・引田天功)」のことで、本作の後『宇宙刑事ギャバン』『超人機メタルダー』(1987年)でも華麗かつ大胆なマジックを披露しています。ピエロに化けたベーダー怪物ミミラーに翻弄され、デンジイエロー/黄山純(演:津山栄一)を誤ってキックしてしまう青梅といったコミカルなアクションがある一方で、父を失ったまりの心の支えになり、危険なマジックに挑む青梅のりりしい表情も見どころとなりました。
5 『電子戦隊デンジマン』(1980年) 第44話「不思議ランプ物語」
師匠・千葉真一さんゆずりの「激しいアクションとコミカルな演技」をモットーとしている大葉さんの、コメディ要素が前面に打ち出されているのが本エピソード。青梅はデンジマン5人の中でもっとも優れた運動神経を備えている一方で、もっともおっちょこちょいで敵の罠にはまりやすいという、極端なキャラクターとして描かれています。大葉さんが竹本弘一監督と相談して決めた「アンパンが大好物」という設定も、回を追うごとにエスカレートし、今回では「アンパンがないとイライラするんだよ」と、アンパン中毒のような描かれ方をして笑わせにかかります。今回の見どころは、赤ん坊や神様、アラブの王様といった突飛すぎる青梅の変化ぶり。ランプの精と自称する美女(実はベーダー怪物アラジンラー)の策略に青梅が引っかかり、デンジマンの本拠・デンジランドへの侵入を許してしまうという、コミカルでありつつサスペンスフルな展開は見ごたえ満点です。バトルケニアと同じく、デンジブルーのスーツアクターもこなす大葉さんのスタント・アクション(アラジンラーのロープで崖から吊るされる!)や、デンジマン5人のチームワークの良さがうかがえる愉快なラストカットも必見です。
後編では、大葉さんの単独主演作にして大ヒット作『宇宙刑事ギャバン』を中心に、エピソードを厳選してご紹介します!
