「自分より才能あるなと思ってた人がいっぱい辞めてるんですよ」――「第70回岸田國士戯曲賞」(白水社主催・公益財団法人一ツ橋綜合財団後援)を受賞したダウ90000の蓮見翔が、喜びの場で演劇界への率直な思いを語った。笑いを交えながら訴えたのは、演劇を続けることの難しさと、それでも前に進めたいという切実な願いだ。
「お笑いは流行っていない」という自身の発言が話題になったことに重ねて、「演劇は流行っていない」というコメントにも反響が集まった蓮見。授賞式の挨拶で「本気で思ってるわけないじゃないですか(笑)。だったら絶対辞めるし」と冗談めかしながら、「でも言わなきゃいけないなと思っていることがあるのも事実で、自分より才能あるなと思ってた人がいっぱい辞めてるんですよ」と打ち明ける。
大学時代の演劇仲間たちの中に、「明らかに自分より才能がある」と思っていた人物が「プロで通用するわけないから」と演劇を辞めてしまったことを振り返り、蓮見は「そういう空気が蔓延していることを、演劇界で強く感じます」と力説する。
だからこそ、「演劇は流行っていない」をめぐる声についても「僕の意見に賛同しても、反対しても、無視しても、興味がなくてもいいですけど、賛同なら賛同で、批判なら批判でエネルギーは出るはずなので、そのエネルギーで演劇が前に進むことを全員がもっと考えないといけない時期なんだと思っています」と強調。
さらに、「いいなと思っている役者さんも、バイトがキツくて公演に出れなくて辞めちゃったとか、そういうことがすごく多い界隈。そういう人のシフトを1日だけでも減らせるような活動に、僕の活動がなったらいいなと思います」と願いを込めた。
そんな蓮見のスピーチを受け、乾杯の挨拶に立った選考委員のヨーロッパ企画・上田誠氏は「演劇は本当に生き延びるのが難しい」と語り、「もちろん作品の目的は生き延びることではないんですけど、それでも生き延びないと続けられないですし、続ければ続けるほど面白くなっていくのが劇作家だったり演劇だと思っているので、これからも続けていきましょう」と、若き才能に呼びかけた。
受賞作の『ロマンス』はダウ90000の演劇公演として、25年5月14日~18日に初演。選考委員のタニノクロウ氏は「私たちは無数のロマンスに満ちた世界を歩いている。笑い笑われ、遊び遊ばれ、許し許される。その往復の中にロマンスは潜んでいる。本作は、それを見つけるための優しさを思い出させ、人生の中のロマンスから目を逸らせなくさせる。こんな魔法を待っていたた」と講評している。
「第70回岸田國士戯曲賞」はほかにも、『よだれ観覧車』で大石恵美氏が受賞した。





