「もう吉本をやめようと思った」――。限界寸前だったまちゃまちゃを踏みとどまらせたのは、ペナルティの愛と『エンタの神様』だった。芸歴30年の節目に振り返る転機の瞬間とは。(前後編インタビューの後編)

  • まちゃまちゃ

    まちゃまちゃ

『エンタの神様』出演までに立ちはだかった壁

無事にゴングショー形式のオーディションバトルを勝ち抜き、ルミネtheよしもとの舞台に立てるようになったまちゃまちゃ。そして、お笑い番組『エンタの神様』(日本テレビ系)でブレイクを果たすことになる。

「その頃、『エンタの神様』は芸人を一網打尽だったんですよね。いろんなライブにADさんがカメラを持っていって。でも、こっちはオーディションにつながるカメラが入ってるのを聞かされてないんですよ。吉本だけかもですが(笑)。だから私は普段通りの漫談で、当時やむを得ずバイトしてた中野のキャバクラのキャバ嬢の悪口を10分間言い続けてたんですけど、それで私は言葉通り、拾っていただいたというか」

ただ、『エンタの神様』に出演するまでに、ある壁が立ちはだかった。

「実は、『エンタの神様』に出るまでに1年ちょっと打ち合わせを続けることになるんですけど、(出演オファーから)3カ月ぐらい経ってからかな。これでいきましょうっていうネタがあったんですけど、それがお蔵入りになって。そのネタの内容は(『エンタの神様』で披露していたマジャ・コングに)似てはいるけど、ヤンキーの格好だったんですよね。特攻服だったんですけど、いや、これじゃねえとなって。そこからはもうずっと作家さんたちとネタ作りです」

「いろんな資料をいただいたり、週刊誌でこういうことがあったからネタになりそうですと言われたり。頭がおかしくなりそうでしたし、後半は頭がおかしくなってました。毎週打ち合わせがあるんですけど、何も思い浮かばない。日テレさんに近い新橋駅のベンチに座ってギリギリまで『本当に頼む。なんかエピソード落ちててくれ……』と祈るように探すんです。もう真っ白なんですよ」

「今ではもう何を書いてたかも覚えてないようなことをとりあえず書いて、それで打ち合わせに行って。やる気がないと思われたら嫌だなとか、ここまで続けてきたのに、そんなんだったらいいですって言われるのも絶対嫌と思ってたから、まさかそこで書いたとも言えず。そしたら、ある日突然、『プロレスどうでしょう?』って提案してもらって、もう限界ギリギリの中『やります! やりましょう!』と(笑)」

「誰よりも『エンタの神様』を神様と思ってます(笑)」

起死回生の一手。だが、精神状態はギリギリだった。マジャ・コングのネタが生まれるのがあと少し遅かったら、芸人をやめていたかもしれないという。

「本当によくないですけど、借金もあるし、当時はちょっと腐ってたんです。実は、『エンタの神様』の出演が確定する前に、ルミネで『エンタの神様』用に考えてるネタをかけてくれと言われたことがあって。でも、急にはできないので、自分なりに考えて、普段よりももっとパンクっぽい格好で漫談をしたんですけど、そのネタがダメで、たまたまその1回だけでまたゴングショーからだと言われたんですよね」

「『エンタの神様』も1回お蔵入りになってるし、いつ出られるか分からない。今まで頑張ってきたけど、ちょっと違うことをやったら急にゴングショーに落とされる。私、もう吉本をやめようと初めて思って。その時に唯一、構成作家の山田ナビスコに『山田さん、私もう考えます。ちょっときついかもしれないです』と相談したんです」

「当時、ペナさん(※ペナルティ)のイベントに出させてもらってたんですけど、私がゴングショーに落ちちゃったので、『そんな人間がペナさんのイベントには出れません。上がるまで休ませてください』と言ったら、山田さんが『分かった。止めはしないけど、ペナさんには伝える』と。私の中では、ゴングショーで上がって、ペナさんのイベントにもう一度出て、やめようと思ってたんですね」

「そしたら、今まで電話なんかかかってきたことないのに、まず、ヒデさんから電話がかかってきたんですよ。それが、たまたまロケの合間だったんで、『すみません。今、横浜でロケやってて』と言ったら、『ロケやってんだ!』って、ヒデさんの声が弾んでるんです。最初、『今何してる?』って、ちょっとお兄ちゃん声だったんですけど、声の感じが変わって、『高円寺の近くに車の修理で来てて、まちゃご飯どうかなと思ったんだけど、ロケ行ってるんだったらいいわ!』と」

「ヒデさんは何も言わなかったですけど、仕事してるっていうので、こんなに声が弾んでるってことは、止めようとしてくれてたのかなと思ってて。その後にルミネに行ったら、ワッキーさんが楽屋で寝転がってて、『まちゃ、聞いたぞ』って。『すみません、ご迷惑おかけして』って言ったら、ちょうどワッキーさんが『筋肉番付』(TBS系)でフィーチャーされ始めてる時期だったので、『いやさ、俺、ちょっと希望の光が見えてんだよ。このまんまいけたら、絶対お前のこと引っ張るから』と言ってくれて」

「なんか、そこまで言ってくれたのがすげえうれしくって。『とにかく結果を出すまでというか、ペナさんのイベントに戻るまで中途半端な状態ではやめたくなくて、『分かりました。待っててください』と言ってるところで、『エンタの神様』です。もう本当に全部が危ないところだった。だから私はたぶん、誰よりも『エンタの神様』を神様と思ってます(笑)。おかげで借金も返せましたし!」