今回の作品を「地上波でやりたい」と考えたのは、なぜか。配信サービスでは、視聴者が自ら作品を選ぶ文化の中で、「飲み会の場で、政治と宗教の話はしてはいけない」と言われる日本においては特に、政治や選挙という題材はどうしても敬遠されやすい現状がある。
「ある種、間口の狭いテーマだからこそ、親が見ていたからたまたま目に入ったとか、なんとなくつけていたテレビで見てしまったといった偶然性の中で広がるほうがいいと思いました。だからこそ、“政治ドラマ”として構えるのではなく、広い人たちが入り込める物語として届けようと思っています」
どの選挙を描くかという選択でも、その考え方が貫かれている。放送番組として政治的公平を課される中でイデオロギーの対立にならず、外交や税制のように答えが一筋縄では出ないテーマよりも、選挙自体の面白さを描けるものとして、有権者が自ら代表を決める選挙で最大規模である「都知事選」をモチーフに据えた。
その中で、「都知事選は特に実質人気投票になっている部分もあると思うので、そこに対する疑問を投げかけたい」とメッセージを込めている。
実際の選挙を経て脚本作りに反映
2023年夏頃に取材をはじめた当初は「みんな政治にもっと興味持とうよ」というメッセージを伝えようとスタートした。それから都知事選(24年)だけでなく、勢力図が大きく変わる国政選挙も複数あったが、「すごく注目が集まっても、投票率が大きく上がっているわけではないんです。だから、自分たちの力で社会が変えられるというのを信じられることが大切なのではないか」と意識が変わり、後半の脚本作りにも反映されているという。
一方で、テレビドラマは現実と近接しているからこその難しさも抱える。放送直前に起きた現実の事件や社会情勢に応じて差し替えや微調整が必要になるケースもあるが、今作の最終話脚本の打ち合わせでも、「今の社会状況を考えると、こっちじゃなくてこっちにしたほうがいいかもしれない」といった議論があったという。
しかも、結末はまだ決まっておらず、さまざまな可能性がある中で、撮影を進めながら議論が続いている。そんな作り方も、出産を経て3年半ぶりの復帰作となった佐野氏は「久しぶりにちょっと連ドラ感を味わっています(笑)」と、楽しんでいるようだ。
