『うえだしんや界隈』は、上田が監督も務めていることも大きな特徴。それは当初から本人が強く希望したのだという。

北野武以降、多くの芸人が映画監督などマルチに活躍しているのを見て、「僕もそういうのをちょっとやってみたいというのが、どこかにあったんでしょうね」と、クリエイターの血が騒いでいた。ちなみに、相方の有田哲平は『全力!脱力タイムズ』(フジテレビ)にMC兼総合演出として関わっているが、「半分作り物で、半分ハプニングみたいな有田の世界観でやっているから、それを特に意識したというのはないですね(笑)」とのことだ。

それまで縦型ショート動画を見る習慣はなかったが、「撮りながら学ばせてもらえるかなという気持ちもあって」と、新たな世界に飛び込んだ上田。実際に撮影や編集を始めてみると「こういうところで音を切ったほうがいい」「ここからフェードインで音を入れよう」「最初の2秒で食いつかせないとダメ」「決めゼリフはカメラ目線で」など、多くの発見があったという。

特に衝撃を受けたというのは、従来のコントのセオリーである「フリがあって最後にオチが来る」を覆す、「オチを最初に持ってきて展開する」という考え方。

「ダイイングメッセージがQRコード」というコントで、上田は当初、「殴られた人物がスマホに手がとどかず、最後に自分の血でダイイングメッセージを書いて息絶え、カメラが引くとそれがQRコードになっている」という流れをオチとして考えていたが、ショートコンテンツでは「そこまで待っていられないので、最初からダイイングメッセージがQRコードだと打ち出しましょう」と助言が。これを受け入れた上田は「自分が作ってきたネタ作りとはまた違う構成で、それも勉強になりましたね」と謙虚に語った。

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    イベント『うえだしんや界隈ファン界隈』では新作ショート動画をワンカット撮影する企画も

縦型ショート文化の吸収とテレビノウハウの投入「本当に名監督」

縦型ショートコンテンツの文化への上田の適応は、驚くほど早かったと米永氏は語る。これまで様々なチームと取り組む中で、スワイプ前提の視聴や「オチから見せる」という感覚になじむのに時間がかかることも少なくなかったが、上田はすぐにその文法を理解したそうで、「編集を始めて2回目のチェックで“もうちょっとテンポを上げようか”と提案されたこともあって、スマホで見るコンテンツへの感性がすごいなと思いました」という。

この文化を吸収した上で、上田がテレビの世界で培ってきたノウハウを投入することが、『うえだしんや界隈』の大きな強みに。

米永氏は「ネタのアイデアだったり、ツッコミの間だったり、どういうことだったらマスの人たちに面白いと思ってもらえるのかという感覚だったり、普段だったら出ないような視点がたくさんありました。例えば、“このツッコミ、5フレーム遅くしたら面白くなるんじゃないか”といったフィードバックも上田さんだからこそ演出できる“間”でした」といい、「本当に名監督でした」と絶賛した。

監督としてすべてのコントの映像をチェックし、詳細まで編集にこだわる上田。「テレビと同じぐらいのボリューム感で、“ここはショート動画”、“ここはテレビ”という感じで、すごくやりがいを持ってやらせてもらってます。自分の中では片手間ではやってないですね」と強調した。