timeleszという若いパワーとタッグを組むにあたっては、番組のビジュアル面にもこだわった。番組ロゴやAIのキャラクターなどをデザインしたのは、博報堂の30代のアートディレクター・小暮菜月氏。昨年実施した『プレバト!!』のUI変更や、ダウ90000・蓮見翔のYouTube番組『トキトケトーク』のタイトルロゴを手掛けた実績があり、いつも「視聴者がどう感じるか」を起点に、視聴者と番組の間をつなぐデザインを提案してくれるのだという。

また、「SNSの投稿の頻度や文言も、会社の若いスタッフに完全に任せてます」ということで、動画作成は水野氏と一緒に芸能人のTikTokなどを手掛けてきた23歳のクリエイター・関戸かのん氏が担当し、投稿するたびにバズり続けている。こうした若いクリエイターとチームを編成することで、timeleszのファン層と高い親和性を生んでいる。

今回のラインナップは、日曜昼帯の特番として最適な対決として選んだそうだが、このフォーマットにはもっと広げられる可能性を感じている。

例えば、「大喜利対決」でtimelesz側が芸人に弟子入りして1週間かけて答えを準備し、回答を出す。ティーンの悩み相談や、かつての「亭主改造計画」のようなコーディネート対決も成立する。「いろんな対決を試して、番組が大きく成長したらいいなと思っています」と意欲を示した。

AI時代でもゆるがない俳句は“人間の文学”

テレビの制作現場では、ネタのリサーチやアイデア出しをはじめ様々な場面でAIが活用されており、「企画のブラッシュアップも、ナレーション原稿の推敲も、AIを活用するのがすっかり当たり前になってます」と明かす。

ただ、「あくまで伴走者的な存在かなと。例えば、番組のトーンに合うようにナレーションを仕上げるのは、人間のほうが上です」と評価。自身の中で、ナレーション原稿における約束事を5つ設定しているが、AIはケースごとに細分化してしまうため、番組のトーンの精度が失われてしまうのだという。

『プレバト!!』の看板企画である「俳句」作りも個人的に試してみたそうだが、「名人・特待生のレベルには発想のオリジナリティーが全然たどりつけない。凡人レベルがせいぜいです」と限界を感じた。

その理由は「俳句は季節を体で感じた“人間の文学”なんだと思います」と説明。AIは触覚や匂い、温度、湿度といった体感の蓄積がないため、どうしても感動の起点がありきたりになってしまうのだ。過去の大量の“それっぽい句”を参照しても、面白い句にはならないという。

最近、各地の「川柳コンテスト」で、AIと人間の作品が見分けられなくなったため、中止する大会も出てくるなど対応が迫られているが、俳句においては「五感で詠む」という創作方法が人間を優位に立たせている。水野氏は「俳句界の大御所の皆さんからは、“AIの登場で俳句は揺るがない”という気概を感じます」と頼もしく感じているようだ。

●水野雅之
1977年生まれ、愛知県出身。慶應義塾大学卒業後、2000年に毎日放送入社。営業局で6年勤務した後、大阪本社の制作に異動。2年後に東京支社の制作に異動し、『イチハチ』で初の総合演出となり、以降は『林先生が驚く初耳学!』『教えてもらう前と後』などを企画・演出・プロデュース。現在は『プレバト!!』総合演出のほか、新木優子の公式YouTube・TikTok、ダウ90000蓮見翔の音声コンテンツ『トキトケトーク』など、地上波テレビにとどまらないコンテンツ制作を手がける。