きょう26日にフジテレビの動画配信サービス・FODとPrime Videoで配信スタートするドラマ『にこたま』(毎週金曜20:00最新話配信)。恋人、結婚、家族といった身近なテーマの“当たり前”を見つめ直す作品で、原作は、配信ドラマ『1122 いいふうふ』も話題を集めた渡辺ペコ氏だ。
2010年に連載開始されたタイトルだが、十数年の時を経て映像化される今作をどのような思いで受け止めているのか。作品に込めた思いなど、話を聞いた――。
映像化は、新しい世界を立ち上げていくこと
――『にこたま』がドラマ化されると聞いたとき、どんなお気持ちでしたか?
率直に、とてもうれしかったです。主演が橋本愛さんと瀬戸康史さんと知って、「お二人が演じてくださるなんて!」と驚き、ドキドキしました。
私の描くキャラクターは、どちらかというと地味なタイプが多いのですが、瀬戸さんが演じることで、チャーミングで明るい魅力が加わりそうだと感じました。橋本さんは、これまでのインタビューやラジオ番組などから、思慮深く誠実な方という印象があるので、温子の人物像と重なる部分があるのではと感じていました。
映像化というのは、そこに関わる方々の解釈で新しい世界を立ち上げていくことだと思っているので、私はただワクワクしながら完成を心待ちにしていました。
――撮影現場も見学されたそうですね。印象に残ったことはありますか?
瀬戸さんは、原作の晃平よりさらにキュートで、“人たらし”な魅力が増していました。見学したのはシリアスなシーンだったのですが、瀬戸さんのチャーミングさによって「なんてかわいい人なんだろう」と思ってしまいました(笑)。また温子は、橋本さんの表情や声を通すことで、まっすぐで誠実なキャラクターがより際立っていると感じました。
自分の描いた物語なのに、まるで新しい作品を見ているようでとても新鮮でした。他のシーンも早く見たくなりました。
今の時代にどう響くのか不安も…
――『にこたま』には、どんな思いを込められたのでしょうか。
男女の関係を描くとき、どうしても「恋愛」や「結婚」が注目されがちですよね。でもそれは、人生のほんの一部にすぎないと感じていて、そこだけにフォーカスして物語を作ることに違和感があったんです。
「人を好きになるってどういうこと?」「家族をつくるって何だろう?」というのが気になっていたので、それを物語として掘り下げたのが『にこたま』です。
もう10年以上前の作品ですが、それから恋愛や結婚の価値観は大きく多様化しています。当時描いたテーマが、今の時代にどう響くのか少し不安もありましたが、ドラマ化の際にとても丁寧にチューニングしてくださっていて、今の視点でも共感できる作品になっていると思います。
――恋人や家族の在り方を改めて考えさせられる作品でもありますね。
結婚って、“永遠に続く契約”のようですが、人の感情や関係性は常に変わっていくものなので、ある種の矛盾をはらんでいます。結婚は「いいこと」とされがちだけれど、同時に怖さや奇妙さを含んでいる。人生を大きく左右するテーマだからこそ、深く考えてみたいと思いました。
そのうえで、子どもがいる、あるいはいない関係ならどうなるのか。2人の関係に亀裂が入って、「それでも一緒にいたい」と思うとしたら、それはどんな理由なのか。そんな思考実験を重ねながら描いた作品でした。若かった当時の自分が考え抜いたひとつの答えが『にこたま』なのかなと思います。
――長年の恋人同士である温子と晃平の関係性も印象的です。どんなところに注目してほしいですか?
やはり、温子がどんな選択をするのかに注目してほしいです。女性が決断するときは、どんな選択であっても、“自分の意思で選ぶ”ことを大事にしてほしいと思っているんです。
橋本さんは、そうした温子の芯の強さを体現してくださる方で、本当にぴったりのキャスティングだと感じています。
自分が書いた物語なのにに「この先どうなるんだろう」
――『にこたま』では、食べ物が重要な役割を果たします。どんな思いがあったのでしょうか。
食べ物は、生活そのものを象徴していると思うんです。だから、カップルの関係の中で、信頼や身体的なつながりが失われても、“それでも残る絆”を表すものとして食事のシーンを描いていました。私自身も食べることが大好きなので、登場人物がどんな食べ物を好むのかを気にしていたのかもしれません。
――食べ物のシーンが映像として再現されるのを見て、いかがでしたか?
原作ではあまり細かく料理を描いていないので、改めて読み返すと「これ、本当に美味しいのかな?」と思うこともあるんです(笑)。でもドラマではフードコーディネーターさんが、思わず食べたくなるような料理として再現してくださっているので、ぜひ楽しみにしていただきたいですね。
――最後に、ドラマの見どころを教えてください。
漫画という二次元のモノクロの世界が、映像化によって色を帯びて鮮やかな世界になっているので、原作者として本当にうれしいです。いち視聴者としても心から楽しめるドラマになっていると思います。
温子が働くお弁当屋さんや部屋の内装なども、細部まで作り込まれていて、素敵な世界観が出来上がっていることに感動しました。シリアスな展開もありますが、俳優の方々の演技を見ていると、自分が描いた物語なのに「この先どうなるんだろう」とワクワクしてしまうんです。漫画を読んだことのある方も、初めて『にこたま』に触れる方も、物語の行方を楽しんでいただけたらうれしいです。
●渡辺ペコ
1977年生まれ、北海道出身。04年に『透明少女』で「YOUNG YOU新人まんが大賞」ゴールド大賞を受賞してデビュー。『ラウンダバウト』(集英社)が第13回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選ばれる。代表作に『にこたま』のほか『1122(いいふうふ)』『恋じゃねえから』『東京膜』『ボーダー』『変身ものがたり』『昨夜のカレー、明日のパン』(原作:木皿泉)などがある。『1122』は紙+電子で累計210万部を突破し、24年にはPrime Videoで実写ドラマ化された。現在、『1122 五代夫婦の場合』を「モーニング・ツー」で連載中。



