『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』は、武将や政治家ではなく商人・蔦屋重三郎を主役に据え、江戸の町人文化や出版統制を描いた作品だった。また賄賂政治の権化としてマイナスイメージの強かった田沼意次(渡辺謙)は経済政策を重視し、十代将軍・徳川家治に二心なく仕えた忠臣として描かれ、新たなパブリックイメージを作り出した。

鬼才・平賀源内との交流も頻繁に描写され、2人のブロマンスはSNSを何度も沸かせたことは記憶に新しい。泰平の世が長く続いた江戸時代中期が舞台となったが、初回から過酷な女郎の生活が描かれ、華やかな吉原の裏側が視聴者に衝撃を与えた。忘八と呼ばれる女郎屋の主たちの迫力ある姿は「忘八アベンジャーズ」として大いに話題になった。

そして吉原での蔦重のパートナーとして物語を彩った瀬川。花魁道中の凛々しい姿は、多くの視聴者の視線を「クギづけ」にした。耕書堂を立ち上げ、北尾重政(橋本淳)、北尾政演、朋誠堂喜三二、大田南畝らと交流を深め、プロデューサーとしての実力を存分に見せつけてくれた蔦重は、多くの失敗も経験したが、不屈の精神で成長を重ね、次々に新しいプロジェクトに挑戦する姿は大河ドラマの主役に相応しい人物だったのではないだろうか。

最終話を迎えた『べらぼう』だが、派手な合戦や政争に頼らず、本と人間関係で物語を描き切るなど、大河ドラマの中でも異色かつ挑戦的な一作だった。来年の『豊臣兄弟!』は、3年ぶりに戦国時代を舞台とした大河ドラマ。太閤の弟、豊臣秀長がどのように描かれるのか、今から期待が高まる。

REVISIOでは『豊臣兄弟!』の分析記事も毎週公開予定だ。

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