注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。2015年12月のスタートから、おかげさまで100回&10周年を迎えることができました。
10年にわたり連載を続けられたのは、ひとえに、ロングインタビューで番組への愛や裏側を熱く語ってくださった皆様、そして記事を楽しんでくださった読者の皆様のおかげです。感謝申し上げます。
そこで当記事では、各局を代表するエースにレジェンド、さらには業界で注目を集める若手の皆さんまで、実にバラエティに富んだのべ100人のリレーをデータを元に振り返っていきます。
局の垣根を越えた「憲法」の共鳴
毎回インタビューの最後に「気になっている“テレビ屋”」と聞いて、次のインタビュー対象者が決定する当連載。仕事仲間や知人だけでなく、面識がなくても面白いと思った番組のスタッフを指名していく形式で、ここまでリレーがつながってきた。多くの人がこの人選に悩まれるものの、途絶えずに続いてきたのは、テレビ業界の人材の豊富さを裏付けていると言えるだろう。
これまで登場したのは、マイアミ啓太氏(元フジテレビ/#001,#032)と上出遼平氏(元テレビ東京/#035,#075)をそれぞれ2回取材しているため、98人。これを属性別にみると、キー局では、日本テレビとテレビ朝日の比率が少し高くなっている。
要因として考えられるのは、やはり個人視聴率トップを争う局だけに、ヒット番組のクリエイターが多いこと。また、基本的に「次に指名する方は他局でお願いできれば」しかこちらの希望は伝えないので、それに沿った形で人選が行われるが、例外が2件あり、それが日テレとテレ朝だった。
テレ朝同士のリレーは、加地倫三氏(#021)→森川俊生氏(#022)。『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』というバリバリのバラエティ演出家が、第二の人生を謳歌する人々の生活を追っていく『人生の楽園』のプロデューサーを指名するという意外性が興味深く実現した。加地氏は「僕も歳をとって、ゆっくりした番組が視聴者としては合うようになってきて、『人生の楽園』って気持ちいいんですよ」とその理由を明かし、「ゆっくりした企画をケンコバ(ケンドーコバヤシ)と(博多)華丸くんとやりたくて、自分がお笑いでやってるノウハウと融合させて、お昼とかで流したいんです(笑)」と希望を語っていた(2017年12月掲載)。
日テレ同士のリレーは、清水星人氏(当時、#045)→島田総一郎氏(#046)。島田氏が当時統轄プロデューサーを務めていた『ザ!鉄腕!DASH!』に出演するTOKIOから長瀬智也が離れ、城島茂・国分太一・松岡昌宏が「株式会社TOKIO」を設立するというタイムリーなタイミングだった。真正面から取材を申し込むのはハードルの高い話題でも、「指名」という形で切り込めるという当連載の強みが発揮された事例だ(※この話題は「テレビ屋の声」とは別の記事で掲載)。
指名形式のリレー連載は、編集者にない発想で取材対象の人選ができるのが大きなメリット。これにより、テレ朝・藤井智久氏(#054)というレジェンドが、放送作家・北本かつら氏(#053)の指名によって初めてウェブニュースのインタビューを受けてくれた。
この事例の最たる例が、名城ラリータ氏(#068)→有田哲平(#069)の『全力!脱力タイムズ』リレー。演者である有田が、『脱力タイムズ』の“総合演出”としてロングインタビューに応じた記事は反響が大きく、他媒体でも追随したインタビュー記事が見られた。
リレーの中でしびれた事例の一つが、テレ朝・米田裕一氏(#044)→清水星人氏(#045)。米田氏が清水氏について、「それぞれの番組ごとにまるで“憲法”があるような、番組コンセプトとはまた違う次元の思想とも言えるものを感じます」と話していたことを本人に伝えると、「米田さんが“憲法”と言っていたんですか!? 実はスタッフに話をするときによく使う言葉なんですよ」と驚きを持って反応した。制作者ならではの視点で共鳴するのを目の当たりにした瞬間だった。

