日本テレビ系ドラマ『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(毎週水曜22:00~)の第7話が、19日に放送。マイナビビュースでも様々なドラマの取材を行う「テレビ視聴しつ」室長の大石庸平氏がレビューした。

  • (左から)桜田ひより、佐野勇斗

    (左から)桜田ひより、佐野勇斗

このドラマは、“逃避行”という大きな枠組みの中で、その道中で生まれる出会いの尊さや感情の揺らぎを丁寧に描いてきた点こそがアイデンティティーだった。とくに象徴的だったのは第5話だ。“逃げた距離”こそが“逃避行”をドラマチックに彩るはずなのに、物語の半分を大介の元カノ・莉里(影山優佳)の部屋におけるやりとり“だけ”で成立させたのだ。大きな展開がなくともキャラクターの厚みによって惹きつけることができる。その自信と胆力がこの作品には備わっているのだ。

しかし今回の第7話は、これまでとは対照的に、様々な事象が動き出す回となった。結以(桜田ひより)と大介(佐野勇斗)の別れ、慶志(北村一輝)の焦燥、万代(ファーストサマーウイカ)の献身、結以の出生の秘密、ガン(志田未来)の再登場、動画配信者“まぁみぃ”(加藤千尋・高塚大夢)の葛藤、白木(山口馬木也)の接触、山口(結木滉星)のたくらみ――そのどれもが劇的で、最終章へ向けた加速を強烈に感じさせる内容だった。

だがそんな大きな動きを見せた中であっても、根底にあったのは、「誰を信じられるか?(あるいは、信じられないのか?)」 という、丁寧な機微だ。

結以と大介は親を信じられず、血縁を超えた信頼関係を築いてきた。またそれは、第2話のネグレクトを受けていた少年の星(阿部来叶)を救う場面によって、ただの恋愛感情ではない、“家族以上の家族”を強調することとなり、今回の終盤であっさり元に戻ってしまう様子も、“恋愛”だけでは感じ取れない爽やかさがあった。

一方、万代は追跡役というドラマ上での単なる役割を超え、慶志の中にある“信じられる何か”を見ようとし続けた存在として描かれた。そしてガンは結以と大介が見せてくれた“青春”を、白木は“ジャーナリズム”を、山口は“金”を信じているのだろう。さらに、結以が大介と別れた後にアルバイトを始めたエピソードでは、店主の坪井(猫背椿)から、“知ること“と“信じること”は同じではないという視点も提示された。

興味深いのは、動画配信者“まぁみぃチャンネル”の2人の変化だ。当初は“バズること”や懸賞金のために動いていたはずが、“生身”に触れることで、いつの間にか“あの2人を信じる側”へと変わってしまった。虚実が入り乱れるSNSの時代の曖昧さと、人間の本質を映し出しているようでもあった。

さらに、結以の特殊能力“さとり”というSF的な視点で、触れて見えた“色”は信じられるのか?”という新たな問いも立ち上がり、“信じること”の多層性を実にカラフルに描き分けている。

そしてただ一人、慶志だけが深い孤独の中で“何も信じられなくなっている”。その不信こそが物語を混迷へ導き、逃避行を続ける2人を、そしてドラマ全体をかき回す原動力となっている。

クライマックスへ向かうドラマは時に、作品の信念を曲げてまでドラマチックを優先してしまうことがある。しかし本作は、物語を大きく動かしながらも、描くべきテーマを決して手放さなかった。機微の積み重ねと、大きな展開の融合――“誰を信じられるのか?”という、実は第1話から提示されていたテーマを、大きなドラマチックとともに今回は鮮明にしてくれたのだ。

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