2023年1月にスタートし、4年目突入を控えるフジテレビ系お昼の生バラエティ番組『ぽかぽか』(毎週月~金曜11:50~)。今年に入ってから、ネットニュースでは打ち切り説などネガティブな記事も散見されるが、実は放送開始以来、視聴率は徐々に上昇しており、MCのハライチ(岩井勇気・澤部佑)、神田愛花をはじめとする現場は、今も変わらず明るい雰囲気で毎日の生放送に臨んでいるという。

そこで、昨年から総合演出を務めるフジテレビの田村優介氏にインタビュー。生放送の舞台裏のほか、番組で大事にしている“喜怒哀楽”の意識や、それを象徴するMC・神田愛花の涙、以前担当した『ダウンタウンなう』での経験が生きること、そして今後の展望に至るまで、たっぷりと話を聞いた――。

  • (左から)神田愛花、岩井勇気、澤部佑=『ぽかぽか』生放送のオープニングより (C)フジテレビ

    (左から)神田愛花、岩井勇気、澤部佑=『ぽかぽか』生放送のオープニングより (C)フジテレビ

VTR企画と情報性をなくして『ヒルナンデス!』と差別化

『ぽかぽか』スタート時は編成部に在籍し、2023年9月に月曜担当プロデューサー、24年1月に月曜担当演出となった田村氏。『ぽかぽか』という番組の特性は、「出演者が楽しんでいる様子、そして喜怒哀楽を出せる場」であり、それが「裏番組にはない、番組の生命線」と捉えていた。

この特性により発生するのが、トークでの天然発言、ゲーム企画で起きるミラクル、さらには未解禁で言ってはいけない情報の告知…などの様々なハプニング。24年7月に全体の総合演出に就任して以降も、「生放送ならではのスリルを誘発する根幹は変えていないです」といい、むしろ“喜怒哀楽が出せる場”に特化する方針を打ち出した。

以前は喜怒哀楽の中でも「喜」と「楽」=「笑い」に寄せた企画が多かったが、より真剣さが出る要素を重視。『FNS27時間テレビ』が『千鳥の鬼レンチャン』メインで放送された2023年、総合演出の武田誠司氏は、その企画書に「真剣勝負の先に笑いがある」とキーワードを立てたが、田村氏も「その考え方に近いです」という。

喜怒哀楽をよりむき出しで見せることができる形として、生放送展開に完全シフト。VTR企画をなくし、原則として情報性に寄せない構成にすることで、同時間帯のバラエティである『ヒルナンデス!』(日本テレビ)との差別化を鮮明にした。

  • アントニオ猪木扮装で涙する神田愛花 (C)フジテレビ

予想超えの盛り上がり…本気の勝負が生んだ奇跡の瞬間

出演者の喜怒哀楽が特に表れた放送の一つが、今年6月27日。神田愛花が生放送で涙を流した回だ。

この日は、神田、齋藤孝氏(明治大学教授、ゲストの『全力!脱力タイムズ』チーム代表)、アントニオ小猪木が参戦する「燃える闘魂! アントニオ猪木選手権」の第2回大会を開催。アントニオ猪木の扮装をして、様々なシチュエーションで“猪木らしさ”を競うという神田の持ち込み企画で、決勝で齋藤氏に惜しくも敗れた神田が、まさかの悔し涙を見せたのだ。

「バラエティの一企画で、みんなが猪木さんの格好をして、本気でやって負けて泣くって、予想していた盛り上がりをはるかに超えましたね (笑)。そもそも神田さんの思いで1回目の『アントニオ猪木選手権』をやって、それから1年ぶりに復活して、神田さんもいろんな気合いが入りまくっていたと思うんです。負けた悔しさもあるし、楽しかった思い、やりきった安堵もあって、感極まったということだと思うのですが、正味15分くらいのコーナーで、感動の涙ではなく悔し涙まで行くというのは、番組として本当に素晴らしい奇跡の瞬間だったと思います」

この涙が生まれたのは、企画に“本気”で取り組んでいるからこそ。そのマインドは、ほかの出演者も同様で、クールに臨む印象を受ける岩井勇気も、「僕らが思っている以上に本気なので、クイズでちょっと緩いルール設定をすると、“どうなってるんだ!”と本番で不満をぶつけてくれます(笑)」という。

そんなやり取りも、歓迎姿勢。「岩井さんがああやって言ってくれると、他のレギュラー陣も加勢してくるときがあるのですが、きっと視聴者もそう思っている人がいるはずだから、これでいいと思っているんです。我々から、出演者の皆さんに“生放送で企画に対するダメ出しはやめてください”と言えば、皆さんすごくいい人たちなので不満を言わないと思いますが、それは番組にとって一つも得がないですから」。