視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、 『M-1グランプリ』『キングオブコント』などの主要お笑い賞レースについて、視聴データを分析した結果を公開した。

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最も視聴者をくぎづけにした賞レースは『M-1グランプリ』

直近3年間の主要なお笑い賞レースについて、テレビの前にいる人のうち画面に視線を向けていた人の割合を示す「注目度」を見ると、個人全体・MF1層・MF2層の3属性において『M-1グランプリ』が首位を獲得。『M-1』は世帯テレビオン率(※いわゆる世帯視聴率と同義)においても他の賞レースを大きく上回り、お笑い賞レースで最も視聴者の関心を集める大会といえそうだ。大会は今年で21回目を数え、もはやお笑いファンだけでなく多くの視聴者にとっての「恒例イベント」として存在感を放っている。

なお、MF3では0.4ポイントという僅差ではあるものの、『キングオブコント』が1位を獲得した。『8時だョ!全員集合』『オレたちひょうきん族』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など大ヒットコント番組を見て育った世代にとって、コントというお笑いジャンルは若年層よりも身近な存在なのかもしれない。

では、注目度と世帯テレビオン率がともに高かった『M-1』と『キングオブコント』において、視聴者をくぎづけにした芸人とそのネタは何だったのか。REVISIOの毎秒視聴データを使って、各演目の「注視度」(※そのチャンネルがついているテレビの前にいる時間のうち、どのくらいの時間テレビ画面に顔を向けていたかを示す指標)を特定し、ランキングを作成した。

まずは、2022年から2024年の『M-1』と『キングオブコント』の歴代優勝者を振り返る。直近の2024年では令和ロマンの『M-1』史上初2連覇、そして結成15年目での悲願を達成したラブレターズの優勝が記憶に新しいところだ。

果たして賞レースの採点と注視度には相関が見られるのか。注視度ランキングを確認していく。

「ポップで分かりやすい」ネタが上位に

トップ5には歴代優勝者のランクインはなかった。トップ15まで見ても6位・8位に令和ロマンのランクインがあるのみ、という結果になった(※14位のラブレターズは優勝した年のネタではない)。

トップ5に入ったネタを確認してみると、「ポップで分かりやすい」内容が多く、瞬間的に視聴者を引き込むキャッチーさや展開の分かりやすさが注視度を押し上げていた。

例えば、1位のバッテリィズ「世界遺産」。明るく無邪気な「おバカキャラ」として展開していくエースのユニークさには勢いもあり、他にはない切り口とテンポの良さが光る。

2位のヤーレンズ「ラーメン屋」は、ラーメン屋という日常的な舞台設定の中で、クセのある高速ボケを立て続けに繰り出すスタイルが視聴者を一気に引き込んだ。

3位のヨネダ2000「餅つき」では、独特のリズム感とパワフルなボケを次々と畳みかけるスタイルで、唯一無二の世界観を生み出した。体全体を使ったダイナミックな表現とテンポの良さはコント的な要素も強く、思わず画面に「くぎづけ」となってしまうのも納得だ。

4位のニッポンの社長「新入部員」、5位のロングコートダディ「死の呪い」も小道具やセットに凝ったコントで視聴者を魅了した。

採点結果と注視度に相関は見られず

さらに、ランキングトップ15を見ると、最終決戦の演目の比率が高いことがわかる。番組が後半に進むにつれて「誰が優勝するんだろう」という期待感が視聴者の中に醸成され、注視が高まりやすくなっていくためだろう。その上で、たまたま演出上注視を獲得しやすい要素が多く含まれていた演目が上位にランクインしたと考えられる。

ただし、賞レースの採点結果と注視度には相関が無さそうだ。審査員による採点は、漫才のうまさ、ネタの新鮮さや構成、漫才師ならではのオリジナリティなどでつけられるものであり、その道のプロフェッショナルである審査員の腕の見せ所。一方、注視度にはキャッチーさや動きで視聴者をくぎづけにするといった「外見的な要素」が大きく影響する。実際の採点は、技術的な構成力や完成度も加味して評価されていることが賞レースの面白さなのだろう。

歴代優勝者たちは、注視を得やすいビジュアル的な要素は少なくても、その分審査員を魅了する漫才の技術・クオリティの高さで高得点を獲得したということが、改めてわかる結果となった。