星野リゾートが展開する「リゾナーレ那須」(栃木県那須郡那須町)で、究極の美食体験ともいえる特別なブランチが、11月7日までの期間で開催されている。その名も「YATAI to FARM」。野菜やハーブを育てるホテルの農園で、自ら収穫したばかりの野菜をシェフに調理してもらい、田んぼの目の前に設えられた特等席で味わうという、この上なく贅沢なプログラムだ。そんな夢のような時間を体験すべく、秋の気配が漂い始めた那須へと足を運んだ。

農園「アグリガーデン」で土に触れる、贅沢な時間

「リゾナーレ那須」のコンセプトは、日本初のアグリツーリズモリゾート。農業(アグリクルトゥーラ)と観光(ツーリズモ)を組み合わせたこの言葉の通り、ゲストは滞在を通じて那須の豊かな自然や農業の営みに触れることができる。

その中心となる舞台が、ホテルの敷地内に広がる農園「アグリガーデン」と、その奥に広がる8,500平方メートルもの広大な田んぼだ。

この日はせっかくなので、ホテルの無料アクティビティの一つである「ファーマーズレッスン」から体験させてもらった。ゲストが野菜やハーブの種まきや耕うん、収穫など、その日の農作業を体験できるというもので、毎日開催されている。長靴と軍手を借りて畑に入ると、専門のスタッフが笑顔で出迎えてくれ、農園を案内してくれた。

この日は、土を耕すための耕うんを体験させてもらった。まずは土を酸性から中性に近づけるため石灰をまき、栄養を与えるべく、ぼかし肥料をまいていく。

まき終わったら、耕うん作業だ。ずっしりと重い機械のハンドルを握り、スタッフに操作方法を教わりながらゆっくりと前進させる。ガソリンエンジンの振動が腕に伝わり、硬かった土が足元でみるみるうちに柔らかくほぐれていく。普段、スーパーマーケットでパック詰めされた野菜を当たり前のように手にしている私たちにとって、その野菜が育つための「土づくり」という原点に触れる時間は、非常に新鮮で学びの多いものだった。

続いて、野菜の収穫へ。畑には、ぷっくりと艶やかなナス、鮮やかなピーマン、見事な大きさに育った万願寺唐辛子など、旬の野菜たちが生き生きと実っている。

スタッフから「このナスは皮の張りが良くて、ヘタのトゲがしっかりしているでしょう?これが新鮮な証拠ですよ」と、おいしい野菜の見分け方を教わりながら、宝探しのように収穫を進めた。

アグリガーデンでは年間約120種類の野菜やハーブを栽培。しかも普段目にしないような黄色いピーマン「浜ニュークリーム」や真っ黒なピーマンの「浜クロピー」など、珍しい品種も育てている。

この「ファーマーズレッスン」で収穫した野菜は、自宅へ持ち帰ることができるという嬉しい特典付きだ。朝獲れ野菜を、帰宅後すぐ調理して味わう、なんていう贅沢な体験も「リゾナーレ那須」では叶う。

このアグリガーデンでは野菜だけでなく、広大な田んぼで米作りも行われている。品種は日本人にとって馴染み深い「コシヒカリ」。2019年から始まったこの米作りは、試行錯誤の末、2024年には収穫量が2トンを超え、今年ついに、ビュッフェレストラン「SHAKI SHAKI」で年間を通して宿泊者に振る舞われている。さらに、宿泊者が田植えから稲刈り、脱穀までを体験できるプログラム「お米の学校」も開催されており、まさに「リゾナーレ那須」の"農"への取り組みの象徴といえるだろう。

田んぼの畔に現れる、3組限定のプライベートレストランで贅沢ブランチ

「YATAI to FARM」では、アグリガーデンで収穫した野菜を手に、田んぼの畔へ向かう。そこには広大な田んぼを見渡す一等地に、パラソル付きのテーブルが3組設えられている。

席のすぐ隣にはグリル屋台が設置されており、シェフが笑顔で私たちを迎えてくれた。

収穫したばかりの野菜を手渡すと、「ありがとうございます。最高の状態に焼き上げますね」と頼もしい言葉が返ってきた。

シェフは受け取った野菜を巧みな手つきでカットし、炭火が熾されたグリル台の上へ。ジュージューという心地よい音、そして立ち上る香ばしい煙が、私たちの食欲を否応なく刺激する。このライブ感こそ、「YATAI to FARM」の醍醐味の一つだ。

収穫したての野菜をシェフが青空の下で調理! 10種類以上のグリル野菜を食べ比べ

席に着くと、炭火でトーストされたライ麦パンとともに、シェフ特製の5種類のソースが振舞われた。そして驚くべきことに、このブランチではドリンクがフリーフロー(飲み放題)。メニューには、イタリアビールの「モレッティ」や、白ワイン、そしてリンゴジュースやザクロ&オレンジソーダなど、多彩なラインナップが並ぶ。まずは「モレッティ」で乾杯。きめ細やかな泡と爽快な喉ごしが、農作業でかいた汗を心地よく癒してくれる。ワインを選べば、まるでヨーロッパのワイナリーで開かれる収穫祭のブランチに参加しているかのような、優雅な気分に浸ることができそうだ。

  • ※写真は全て2名分

    ※写真は全て2名分

5種類のソースとともにいただくパンも素晴らしい。ソースはアンチョビマヨネーズ、バイオレットマスタードと蜂蜜、ハーブがたっぷりのサルサヴェルデ、バルサミコ酢、トマトレリッシュ。個人的には、トマトのフレッシュな酸味と甘みを感じるトマトリレッシュとパンの組み合わせが好きだった。

そうこうしているうちに、1皿目の「グリル野菜プレート」が運ばれてきた。大皿の上には、ズッキーニ、ナス、長ネギ、シイタケ、エリンギといった野菜たちが並んでいる。シンプルに塩・オリーブオイルを塗り、炭火で焼いただけのはずなのに、その味わいは衝撃的だった。ナスは驚くほどクリーミーでとろけるような食感。ズッキーニは瑞々しい旨みが口の中で弾ける。野菜が持つ本来のポテンシャルを、これほどまでにダイレクトに感じた経験は初めてかもしれない。

続く2皿目では玉ねぎ、サツマイモ、バターナッツカボチャのグリルに加え、ピッツァ窯で焼き上げられたトマトの香草パン粉焼きが登場。玉ねぎにはバイオレットマスタードと蜂蜜、バターナッツカボチャとサツマイモにはバルサミコ酢、というようにおすすめのソースとの組み合わせもメニュー表に記載されているので、参考にするのもいいだろう。

そして3皿目(皿の数は日によって変動あり)が、自分たちで収穫した野菜のグリルプレートだ。この日は万願寺唐辛子、浜クロピー、ローザビアンカ、敷地内に自生していたミョウガを収穫しており、これらをグリルしてもらった。収穫して1時間以内の野菜を、すぐにシェフに調理してもらって食べると、ここまで野菜がはつらつとしたおいしさを放つのかと感動する。そして普段味わえないような様々な品種の野菜を、食べ比べできるということが、希少な高級食材をいただく以上に贅沢なことのようにも感じた。

豚肉のスパイスグリルや、焼きたてのアップルパイも!

コースはこれだけでは終わらない。メインは、肉厚でジューシーな「豚肉のスパイスグリル」。香り高いスパイスが豚肉の旨みを引き立て、赤ワインをオーダーしたくなる。

そして、食事の締めくくりには、ピッツァ窯で焼き上げられた「アップルパイ」が登場。サクサクのパイ生地の中から、甘酸っぱいリンゴとバランスの良いカスタードクリームがとろけだす。食後にはコーヒーやハーブティーをオーダーすることもできる。コース全体では、イタリアのマヨリカ焼きのお皿も使われており、テーブルも鮮やかで可愛らしい雰囲気だった。

大人も子どもも学びがあり、体の中から元気になる、唯一無二の食体験

自らの手で土に触れ、作物を収穫し、それが最高の料理へと昇華される過程を五感で味わう。しかも青空の下、どこまでも広がる緑の絨毯を眺めながら、最高の食材とフリーフローのワインやビールに酔いしれる。「YATAI to FARM」はまるで、自然からの恵みに感謝する、ヨーロッパの田舎にあるワイナリーのガーデンブランチのようでもあった。

都会の喧騒から離れ、那須の雄大な自然の中で心と体を解放するリトリート。リゾナーレ那須が提案する「アグリツーリズモリゾート」の真髄が、この「YATAI to FARM」には凝縮されていた。

「YATAI to FARM」概要
期間: 2025年9月1日~11月7日(平日限定)
時間: 9:45~11:30
料金: 大人(12 歳以上)3,200円、7~11 歳 2,700円、4~6 歳 2,400円
※プランに含まれている朝食に追加料金として。
含まれるもの: ブランチ、畑ツアー、野菜の収穫体験
場所: 田んぼ、農園「アグリガーデン」
定員: 3組12名まで(1組上限4名)
予約: 公式サイトにて3日前15時まで受付
備考: 悪天候時は野菜の収穫体験は中止。屋内レストランでの提供に変更。

取材協力: リゾナーレ那須