かつて「子どもが長期休みの夏は学園ドラマの季節」と言われていたが、00年代から10年代、20年代にかけてジワジワと減っていった。しかし今夏は『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)、『ちはやふる―めぐり―』(日本テレビ系)が放送され、「夏らしい」と往年のドラマファンを喜ばせている。

さらに特筆すべきは、もう1つ子どもがメインのドラマが放送されていること。月9ドラマ『明日はもっと、いい日になる』(フジ系) は児童相談所が舞台の物語であり、週替わりでさまざまな年齢の子どもが登場する。

さまざまな事情を抱える子どもたちの苦境と成長を描いた同作を見ていて思い出したのは、『明日の光をつかめ』シリーズ(東海テレビ・フジ系 ※FODで配信中)。10年、11年、13年に放送された夏のシリーズ作で、当時15歳の広瀬アリスが初主演を務めた作品としても知られている。

平成の『明日の光をつかめ』と令和の『明日はもっと、いい日になる』には、どんな共通点と違いがあるのか。その魅力をドラマ解説者・木村隆志が掘り下げていく。

  • 『明日の光をつかめ』

    『明日の光をつかめ』

どちらも「海辺の町が舞台」の物語

『明日の光をつかめ』の舞台は海の見える丘にある「たんぽぽ農場」。主宰者の北山修治(渡辺いっけい)は、農業を通してさまざまな問題を抱える子どもたちの社会復帰をサポートしている。一方、『明日はもっと、いい日になる』の舞台も海沿いの街にある児童相談所。主人公の新人児童福祉司・夏井翼(福原遥)らが子どもたちの異変に気づき、助け出す様子が描かれている。

『明日の光をつかめ』の子どもたちは、ネグレクト、性被害、母に捨てられる、一家心中、いじめなどの過酷な過去を持っていた。それが傷害や窃盗などの犯罪歴、自傷行為、引きこもり、ティーンでの妊娠・出産などにつながり、そこから一歩を踏み出していく様子が描かれている。

一方、『明日はもっと、いい日になる』で子どもたちが抱える事情は、ネグレクト、面前DV、育児ノイローゼ、外国人母の手続きミスによる不法滞在など。子どもたちが非行に走る描写はほとんどなく、親が変わることで問題を改善していく様子が描かれている。

『明日の光をつかめ』は、30分×45話という構成のため、どん底の状態から北山や仲間とふれ合うことで少しずつ光を見つけていく子どもの心理を丁寧に描写。一方、1話60分の『明日はもっと、いい日になる』は、子どもの心理に加えて親の再起や夫婦の関係修復など“大人の物語”という意味合いも濃い。

『明日はもっと、いい日になる』を見ていると、『明日の光をつかめ』第1シリーズが放送された2010年から15年間で「より問題のある親が増え、社会問題化しているのではないか」という制作サイドからの問題提起がうかがえる。