東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『浅草ラスボスおばあちゃん』(7月5日スタート 毎週土曜23:40~24:35)の取材会がこのほど行われ、主演を務める俳優・梅沢富美男が、自身が演じる役どころやドラマの見どころについて語った。
妻からの「素晴らしい助言」を明かす
今回が全国放送連続ドラマ初主演となる梅沢。演じるのは、型破りで自由奔放なおばあちゃん・日向松子役だ。
「舞踊ショーで女形を何十年もやらせていただいていますが、おばあちゃん役となりますと、自分の中で想像するものがなかったものですから、戸惑っていたんですよ。そしたらですね、うちの奥さんが素晴らしい助言をしてくれまして。『お父さんさ、ジジイって呼ばれてるけど、ジジイだって初心者だからね』と言われて、そうだよなと。世の中のおじいさんもおばあさんも、みんな初心者だから、おばあちゃん役だって同じなんですよね。今、考えると、いい加減な回答なんですけど(笑)。(女形を演じるのと)考え方が一緒なら、おもしろそうだなと思って、引き受けさせていただきました」
75歳で職を失った松子は、思い切って便利屋「ラスボスおばあちゃん」を始める。そして、完璧主義で真面目な区役所職員の30代女性、動画クリエイターの20代女性、人力車の車夫の大輔、韓国人留学生など、若者たちが松子との出会いを通じて少しずつ変わっていく。また、松子自身も、老後の孤独や人生の意味と向き合い、進化していく。
「(松子は)自分の人生を謳歌したって言うのかな。いろんなことを経験してきて、『世の中ってもっとこうなんだ』ということを今の若い子たちに教えたいと思っているおばあちゃんなんですよね。ところが、今の若い子たちってタイミングが大事なんだと思うんだな。昔だったら、何も考えないでパッと教えてやれば、素直に受け取った。今の子が素直じゃないと言ってるんじゃなくて、考え方が違うので」
梅沢は今と昔の違いとして、新入社員の早期退職が増加しているというニュースを一例に挙げ、「3年や5年は人生の修行かなと思う」と説く。痛快な口調は、テレビのイメージそのままだ。
「今は分からないことがあった時、携帯電話で調べれば、答えが出てきますからね。でも、世の中は、1+1が2じゃない時があるんです。3になることがあれば、1になっちゃうこともある。それが人生だと思うんですよね。そして、それを経験してるのが、お松さん(松子)なんだろうな。このドラマでは、そういう若い子たちとのギャップもたくさん出てきます。今のジジイ、ババアの方は(おじいさん、おばあさんの)初心者ですから、ドラマを観て、勉強してくれればうれしいです。もちろん若い子たちにも(観てほしい)。困った時、一人じゃないんだよと感じてもらえたらいいな」
“親友”研ナオコの力が必要だった理由
松子には、竹子と梅子という腐れ縁の仲間がいる。意気消沈するなか、便利屋を始めることを思い立つのも、気の置けない二人に愚痴をこぼしている時だった。梅子を演じるのは、梅沢と舞台の共演で親交を深め、彼が“親友”と呼ぶ研ナオコだ。
「このお話をいただいた時、僕のお友だちの力がどうしても必要なんだと。最初に研ナオコさんのお名前が浮かびましたね。研さんのお母さんが本当にテキパキした人で。98歳で亡くなったんですけど、お松さんによく似ていて、白いものは白! 黒いものは黒! というように、ハッキリした方だったんですよ。研さんはその娘さんですから、お松さんのお友だちには最高の人選だなと。お芝居って、自分にないものを演じようとしちゃうんですよね。でも、それって大体失敗しちゃう。だから、研さんの知識がどうしても必要なんですよ。彼女は僕なんかよりももっと、若い子たちに寄り添っているおばあちゃんですから」
「みなさんもご存知のように、研ナオコさんって歌い手として大成功されたスターじゃないですか。でも、ちっとも偉ぶらないんですよ。一緒に舞台でも共演していますが、どんなに下っ端のスタッフにも、どんなに偉いスタッフにも、みんな同じように接するんですよ。今回のドラマの話をいただいた時に、梅ちゃんにはもってこいだなと思って、研さんに『出てください』と交渉したんです。すぐに『やりたい!』と言ってくれました」
梅沢は「僕なんかより」と言い、研を称賛するが、きっと彼自身の人柄も通ずるところがあるから、二人は親友なのだろう。今回の取材会でも、「お時間をいただき、ありがとうございます」「(質問に回答いただき)ありがとうございます」と伝える記者たち一人ひとりに、「とんでもない!」「いえいえ!」と応じる姿が印象的だった。
最後に、梅沢からのメッセージをお届けする。
「今回のドラマは久しぶりの人情芝居になると思います。昔はよくやってましたが、『困った人がいたら、助けてやれよ。いつかあんたも助けてもらえるよ』という義理と人情。泣いたり笑ったり、時にはちょっと怒ったり、ドラマを観ていただいて、人と接触するって、こんなにいいことなんだと感じてもらえたら、とても幸せです」
(C)東海テレビ
【編集部MEMO】
梅沢富美男が演じる日向松子(ひなた まつこ)は、浅草のアパートで50年以上、ひとり暮らしをしてきた庶民派の女性。仲間の竹子、梅子とは腐れ縁だが、家族はいない。浅草には多くの人脈があり、街の裏も表もよく知るが、実は岐阜・飛騨高山の出身。20代の頃に訳あって家を出てから、浅草のアパートで暮らしてきた。アパートの住人たちは松子を温かく受け入れてくれた。家族のように醤油の貸し借りができる、長屋のような居心地の良い場所だったが、老朽化が進み取り壊しが決定。いつのまにか住人は松子だけに……。「50年以上、笑った思い出も泣いた思い出も全部ここにある」古くなり見放されたアパートと今の自分を重ね合わせ、思い出のある場所から出ていくことに抵抗していたが、高齢者の孤独死が増える社会で「最期をひとりで迎える」かもしれないことに、心の奥に孤独感も抱えている。