何より、今作の完成度を高めている要因は、芳根京子と本田響矢のカップリングの妙だろう。
芳根が演じるなつ美の魅力は、嫌味のないピュアさとキュートさに尽きる。なつ美は男性に免疫がなく「初夜」が一体何かも本気で分かっていない女性だ。そんなキャラクターを、いくらそんな時代という設定にしたところで、そう見えなければただのあざとい女性になりかねず、描く際に生々しさが付きまとってしまうはずだ。しかしそんな邪念を一切抱かせないピュアさとキュートさで、現代では考えられない奥手過ぎるキャラクターに仕立てている。
本田が演じる瀧昌もまた、何の邪念も抱かせないピュアさが表現できているのはもちろんなのだが、中世的なビジュアルでありながらどこかにちゃんと男らしさも感じられる、彼にしか表現できない瀧昌像を作り上げている。海軍中尉の白い軍服姿は、現代的過ぎれば浮いてしまうだろうし、古風過ぎれば現代の多くの視聴者と共鳴できていないだろう。令和と昭和の絶妙なビジュアルのバランスが本田演じる瀧昌には備わっていたのだ。
この2人のおかげで、「接吻」や「初夜」というピュアではあるけれど生々しさが避けられない事象を、かわいらしく、だけど美しく表現できている。
最終話でついに影を見せた“不穏”
この夫婦と対比するように、不器用の矛先が真逆の山本舞香演じる芙美子と小関裕太演じる龍之介のカップルも、主人公の恋愛劇を盛り上げるいいアクセントとなっている。恋愛ドラマの常套である、当て馬同士がくっつくといった展開ではなく、2組のカップルを純粋に心から応援したいと思えるほど魅力的に、生き生きと描かれる恋愛ドラマは少ない。
今作は恋愛ドラマに当然出てくる駆け引きや横やりが一切描かれず、登場人物全員が“良い人”なのも好感ポイント。また昭和初期という、この時代の作品では描かれるべき“戦争の影”もほとんど感じさせなかった点も、視聴者が安心して主人公夫婦に没頭できた要因だろう。
しかし最終話へとつながる、前回の最終盤、いよいよ瀧昌に戦争の影――無事に生きて還ってこられるか分からない“不穏”を残した。ここまではどこまでもほのぼのと描かれ、それこそが今作の持ち味だったわけだが、その“不穏”によって2人に何を及ぼすのか。そしてこの夫婦の恋愛劇はどのような決着を迎えるのか。