テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、5月25日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第20話「寝惚けて候」の視聴分析をまとめた。

  • 『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第20話より (C)NHK

    『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第20話より (C)NHK

蔦重の野望が一歩前進

最も注目されたのは20時28分で、注目度71.5%。耕書堂に市中の地本問屋が仕入れに来るシーンだ。

「お約束の細見が50、富本本が5、見徳が50で」「へへっ、悪いねタダで」岩戸屋(中井和哉)が思わず笑みをこぼす。市中の本屋に耕書堂の本が並ぶことは蔦重(横浜流星)の悲願だった。岩戸屋が『見徳一炊夢』を求めに訪れたことから、「言い訳さえ立てば」市中の本屋へ卸せると気付いた蔦重は、りつ(安達祐実)や喜多川歌麿(染谷将太)とともに一計を案じた。

歌麿が西村屋(西村まさ彦)の『雛形若菜』を模倣した『雛形若葉』で客を引き抜くと同時に、りつが女郎屋に手をまわして西村屋の細見に誤った情報を流し、仕上げに岩戸屋が鶴屋喜右衛門(風間俊介)のやり方に反感を持つ地本問屋をまとめ、喜右衛門に耕書堂との取引を認めさせるという策だ。

計画は見事成功し、耕書堂には市中の地本問屋が買い付けに集まっていた。用を済ませ立ち去ろうとする岩戸屋に、蔦重は恋川春町(岡山天音)の新作『無益委記』を売り込む。手に取った岩戸屋は、その内容を確認するやすぐさま注文を決めた。りつと歌麿も殺到する注文を次々とさばいている。蔦重の野望は一歩前進した。

  • 『べらぼう』第20話の毎分注視データ推移

「蔦重と歌麿、りつさん、めっちゃ楽しそう」

注目された理由は、蔦重の“倍返し”に視聴者の注目が集まったと考えられる。

倍売れる吉原細見を作れば、地本問屋の仲間に加えてもらう約束を反故にした喜右衛門と、『雛形若菜初模様』を横取りした与八。蔦重はこの天敵ともいえる2人をついにギャフンといわすことに成功した。

精巧なニセモノを売り込んだり、偽の情報を流したりと、大河ドラマの主人公らしからぬグレーな戦略ではあったが、「蔦重と歌麿、りつさん、めっちゃ楽しそう」「蔦重がやってることが悪役なのほんと笑える」「鶴屋さんと西村屋さん、過去に蔦重にやったこと考えると妥当ではあるな」と、見事な成果にSNSでは盛り上がりを見せた。市中への足がかりも得て順風満帆の蔦重ですが、まだまだ喜右衛門と与八には油断できない。

今回、蔦重が岩戸屋に勧めた『無益委記』は、前回蔦重一派が生みだした「100年先の江戸」という案思から春町が執筆した作品。聖徳太子が未来を予言したといわれる『未来記』をもじって『無益委記』と名付けられた。その内容は未来には、初鰹の時期が3月から12月になり、さらに高騰して880両(約8,800万円)になったり、裾を引きずるほど長い羽織や釣り竿のように長い髷が流行る、真夏の6月が極寒になるなど、実に滑稽な未来が面白おかしく描かれている。

また、今回では謀略の限りを尽くした蔦重だが、その黒い笑顔に横浜流星のファンが悶えている。横浜は一流の格闘家でもあるため、基本的な所作の美しさや、着物の袖からチラと覗くたくましい腕も大いに反響を集めており、SNSでは“流星群”たちの歓喜の声があふれている。さらに6月6日に公開される注目の映画『国宝』には渡辺謙とともに出演。須原屋市兵衛のおっしゃるとおり、蔦重も横浜もノリにノリまくっている。