また、「重いテーマをやればやるほど、しっかりした女性に見えて、ちょっとした親孝行になりますよね」と冗談交じりに話し、親孝行したいという思いはずっと抱いているという。
「東京に出してもらって、この仕事をさせてもらったときから、親孝行しなきゃいけない、家族孝行しなきゃいけないと思っていて、それはずっと付きまとっています。自分だけ好きなことをやらせてもらったので」
中学3年生のときに、ロケハンのために中学校を訪れていた河瀬直美監督にスカウトされ、映画『萌の朱雀』(1997)でデビューした尾野。両親からは女優業について「高校に入って、高校生活をちゃんと送って卒業したらやっていいよ」と言われたそうで、高校卒業後に上京して女優業に専念した。
上京当初、なかなか活躍できない尾野を見て不安に思っていた両親も、尾野の活躍を見て次第に反応が変わっていったという。
「『芽が出ない』『いつ帰って来るんだ?』とずっと言われていましたが、『次は何に出るの?』『いつ公開するんだ?』『ポスターはないのか?』と言うようになって、やっと認めてくれたんだなと思ってうれしかったです」
尾野の父親は、『カーネーション』で小林が演じた厳格な父・善作に似ているそうで、「ああいうお父さんですね。厳しい。今でも怖いです」と笑った。
1997年に女優デビューしてから今年で28年となる。
「もうすぐ30年……よく頑張ったなと。楽しいと思えなかった時期もありながら、今楽しいと思えていることが幸せです。辞めようと思ったことはないですけど、なかなか芽が出ない下積み時代は、まだ自分が整ってなかったんでしょうね」
楽しいと感じる瞬間を尋ねると、「お芝居しているときもそうですし、人と再会できることも幸せです」とにっこり。本作での小林との再共演や、演出を担当した片岡敬司氏と2000年以来、久しぶりに仕事ができたことを喜んだ。