数々のドラマや映画に出演し、昨年放送されたNHKの連続テレビ小説『虎に翼』の語りを務めたことも記憶に新しい尾野真千子。2月22日にNHK BSで放送される特集ドラマ『憶えのない殺人』(21:00~)では、殺人事件を追う刑事役を演じた。2021年に結婚を機に沖縄に移住し、居酒屋の女将を務めるなど新生活を送っている尾野にインタビューし、本作出演の感想や沖縄移住後の変化を聞いた。
本作は、認知症の元警官・佐治英雄(小林薫)が、殺人事件の真犯人を追う刑事・北嶺亜弓(尾野真千子)にマークされ、自分が犯人かと恐れながらも真相を探ろうとするヒューマン・ミステリー。尾野がヒロインを務めた連続テレビ小説『カーネーション』(2011)で、小林が父親役を演じており、再共演に注目が集まっている。
認知症や冤罪など難しいテーマを扱った本作。尾野は、そういったことが身近にあるという事実を届けられたらと考えている。
「認知症をみんなに認識してほしいとか、冤罪をわかってほしいとか、そんな大それたことは全然考えてないです。お年寄りが増えていく中で、すごく多くなる話だと思いますが、だからといって、認知症の人を大切にしましょうと呼びかけたいわけではなく、身近にそういう人たちはいるということを伝えられたら」
そして、自分自身にも起こり得ることだという意識が高まったと明かす。
「誰かに伝えたいからやっているんですけど、自分も今後考えていかなきゃいけないことだなと。私に言われているなと思いました。認知症とか、冤罪になりかけるとか、そういうことが他人事ではなくすぐそこにあって、自分もなるかもしれないんだなと、いろいろ考えさせられました」
自分ではない誰かの人生を疑似体験できるという女優業の醍醐味も改めて感じたという。
「知らなかったことをたくさん教えてもらえるし、勉強できるし、それは本当にこの仕事をしていてよく思います。ただ、中途半端で終わってしまうんですよね。ちょっとかじって、次の作品に行かないといけないので、そこで終わってしまうもどかしさはありますが、いろいろなことを知るきっかけを与えてもらっているなと思います」
本作のような難しい役どころを任されることも多い印象だが、そういった作品はやりがいがあると語る。
「楽しいですよ! 難しいテーマの作品をやらせていただくと、求められている気持ちにもなりますし。難しければ難しいほど楽しいです。作品に入る前はすごく嫌で、『あ~重い』って思いますが、私ができるのはコメディではないので、そういうことを伝えていくしかないんです」