現在まさに受験シーズンの真っ最中だが、2012年にその現場を全面的に扱った『高校入試』(フジテレビ、FODで配信中)というドラマがあった。

作品ジャンルは入試をめぐって不穏な事件が起きる学園ミステリーで、物語の舞台は地元でも名高い名門県立高校。「進学校」「ミステリー」という点では、今冬ドラマの数字と反響で独走状態の『御上先生』(TBS)と似たところがある。

受験シーズンであり、『御上先生』との共通点もあることから、ここでは「今見るべきドラマ」として同作を掘り下げていきたい。

  • 『高校入試』 (C)フジテレビ

    『高校入試』 (C)フジテレビ

全教室に「入試をぶっつぶす!」と張り紙が…

第1話冒頭、「あなたにとって高校入試とは?」というテロップに続いて高校生たちへのインタビューが映し出される。その中の1人が「人生が決まる日」と語ったところで画面が切り替わり、物語がスタート。映像は県立橘第一高校に移り、教師たちが集まって“入試会議”が行われている。

そこでは過去に採点ミスが発覚した反省から、再発を防ぐための「入学試験要項」を作り、校内の貼り紙や忘れ物などの細部まで入念にチェックしていた。しかし受験前日、全校生徒を帰宅させ、入試準備に入ろうとしたとき、全教室に「入試をぶっつぶす!」という紙が貼られていた。いったい誰がどんな目的で入試を妨害しているのか……。

2日間の物語を13話の連ドラに

同作は過去のエピソードも織り交ぜているものの、基本的に「入試前日」「入試当日」という2日間をフィーチャーした物語。作家・湊かなえが、そのわずかな時間をめぐる人間模様をじっくり描くことで “45分×13話”の連ドラに昇華させた。

湊かなえと言えば「イヤミスの女王」(読むと嫌な気持ちになるミステリー小説)として知られるミステリーのトップランナー。ドラマ『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』(TBS)や映画『告白』『白ゆき姫殺人事件』『少女』などの原作者として知られるが、そんな湊かなえが初めてドラマ脚本を書き下ろしたのが当作だった。

湊かなえ作品の特徴は、繊細かつ多角度から描かれる心理描写。特に人間の悪意や闇、業の深さ、無自覚な攻撃性などの暗部を描くことに長けていて、『高校入試』でも中盤から終盤に向けてそれを加速させていた。