お正月の帰省で高齢の親と接し、「実家じまい」を考え始めた方もいるかもしれません。「実家じまい」のタイミングは、相続が発生したときや、親が施設に入居したときが考えられますが、親が元気なうちに検討しておくことは、後のトラブルを防いだり、費用を抑えたりすることにつながります。あまり考えたくはないけれど、「実家じまい」は遅かれ早かれ、多くの人に訪れる人生のイベントです。本記事では、その大まかな流れや費用について解説します。

  • 「実家じまい」は遅かれ早かれ多くの人に訪れる人生イベント

    「実家じまい」は遅かれ早かれ多くの人に訪れる人生イベント

「実家じまい」ってどうやってする?

「実家じまい」とは文字通り、実家を売却・処分して、しまい(終わり)にすることです。何とも寂しい話ですが、実家に親だけが住んでいるケースでは避けては通れないものです。

「実家じまい」を進めるタイミングとして、以下のような場面が考えられます。

  • 相続が発生したとき
  • 親が施設に入居し実家が不要になったとき
  • 親が住み替えを考えたとき

相続以外は、親と相談しながら進めることができます。その際、兄弟・姉妹がいる場合は、全員で意見を共有することが大事です。

それでは、「実家じまい」の進め方をみてみましょう。

1.家族で話し合って方向性を決める

家族みんなで話し合って、実家の処分方法を決めます。方向性として次の4つが考えられます。

  • 現況のまま売却する
  • 解体して売却する
  • 解体して別用途で利用する
  • 賃貸物件として活用する

売却して手放す以外にも、建物はそのままにして賃貸に出す、解体して駐車場にするなどの方法もあります。手放さない場合は後の維持・管理問題も含めて考えておく必要があります。

方向性を決めるにあたっては、建物の状態や立地などが重要になります。不動産業者に査定を依頼して客観的な情報を得ましょう。

2. 不用品の処分・片付けをする

方向性が決まったら、不用品を処分したり譲ったりして、家の中を片づけ始めましょう。

ここで注意したいのは、親が亡くなって相続開始となった場合の不用品の処分です。不用品も含めて相続財産となるので、相続人の1人が勝手に処分するとトラブルに発展する恐れがあります。相続人全員で遺産を把握し、同意の上で不用品の処分を始めましょう。また、相続放棄を考えている場合は、家の片付けによって相続放棄ができなくなる可能性があります。家の片付けが遺品整理に着手したことになり、相続を認めた扱いになるからです。

親が存命中の不用品の処分はすぐに始められますが、親の意見が入ってくるため、なかなか処分が進まないという状況に陥りがちです。思い出の詰まったものは簡単には捨てられないでしょう。

広すぎる自宅の維持が難しくなって、バリアフリーの賃貸マンションに住み替えるケースでは、家財は最小限にする必要はありますが、無理に捨てずに新しい住まいに持っていってもいいでしょう。「実家じまい」は感情的な負担が伴うものなので、先送りにできるものは先送りにしてもいいと思います。

いざ不用品を処分する段階になったら、業者に依頼するのが手っ取り早い方法です。不用品の中でも一定の価値があり売却できるものがあれば、不用品買取業者を利用して処分すれば費用が賄えます。業者によっては買取と処分の両方を行っているところもあります。

3. 不動産業者に依頼する

実家を売却する、あるいは賃貸に出すことが決まったら、不動産業者に相談しましょう。売却なら、複数の不動産業者に査定を依頼し、比較検討しましょう。これによって適切な価格を知ることができます。

老朽化した建物の場合、解体して更地にして売却した方が、買い手がつきやすい傾向があります。建物の解体は解体業者に依頼する必要があります。この場合も複数の業者から見積りを取って業者を選定するといいでしょう。解体は行政への手続きが必要です。また、近隣住民への配慮も怠らないようにしましょう。解体後に不動産会社に査定を依頼し、売却の流れとなります。

4. 実家を手放す

不動産業者に依頼し、売却が成立すれば「実家じまい」は終了です。売却までに数か月はかかると見越して、実家が遠方の場合は、信頼できる不動産業者に管理を一任できるといいでしょう。

「実家じまい」の費用は?

「実家じまい」にかかる費用をみてみましょう。実際は、立地や物件の状態、依頼する業者などによって費用は大きく異なります。ここでの金額はあくまでも目安です。

不用品の片付け・処分にかかる費用

<自分たちで片付け・処分する場合>
粗大ごみ回収費用など・・・数千円から数万円

<業者に依頼する場合>
平均的な一戸建て・・・20万円~40万円

建物の解体費用

一般的な木造住宅の解体・・・1坪あたり3万円~5万円
木造30坪では90万円~150万円
木造40坪では120万円~200万円

不動産の売却にかかる費用

不動産会社への仲介手数料がかかります。仲介手数料の上限は以下となります。

<売却価格が400万円超>
「売却価格×3%+6万円」+消費税(10%)

<売却価格が200万円超400万円以下>
「売却価格×4%+2万円」+消費税(10%)

<売却価格が200万円以下>
「売却価格×5%」+消費税(10%)

ただし、物件価格が800万円以下の空き家などについては、上記の上限を超えた仲介手数料(最大「30万円+消費税」)を受領できる特例があるため、手数料負担が重くなる場合があります。

「実家じまい」にかかる費用の目安

  • 「実家じまい」にかかる費用の目安

費用を抑えるには

業者に依頼して、処分、解体、売却によって「実家じまい」をした場合の費用の総額は、およそ150万円~300万円になります。費用を抑えたい場合は、不用品の処分を自分たちで行うのがいいのですが、なかなか手間や時間をかけられないのが現実でしょう。

結果的に業者に依頼するにしても、一括処分は避けた方がいいでしょう。価値あるものを見極められれば、専門の買取業者に買い取ってもらうことができ、買取によって少しでもお金に換えることができれば、処分費用がプラスになるかもしれません。実家にある物の価値は、買った本人が一番知っているので、親が元気なうちに、少しずつ身の回りを整理していくことは、物が適正な価格で市場に戻ることにもつながります。その結果、処分費用も抑えられます。

ただ、親の目が黒いうちに親の物を売るというのは、現実問題難しいと思います。その場合は、価値のあるものを親から聞いておくだけで「OK」です。忘れずにメモしておくといいでしょう。