ビッグバンド「岡宏&クリアトーンズ・オーケストラ」のバンドバスター・岡宏さんが11月8日、脳梗塞のため83歳で亡くなった。そんな岡さんが1992年の第1回から演奏を担当してきたのが、テレビ埼玉(テレ玉)の正月恒例特番『埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』だ。

プロの歌手ではない出場者は、歌のテンポがずれてしまうこともあるが、熟練の技術で歌唱に演奏を合わせるなど、欠かせない存在だっただけに、ベテラン勢を中心にショックを隠せない様子。11月30日に行われた第33回(1月1日19:00~、再放送:1月12日19:00~)の収録で、本番を終えた常連出場者らに岡さんとの思い出を聞いた――。

  • 岡宏さん=『第32回埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』(2023年12月2日収録)より

    岡宏さん=『第32回埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』(2023年12月2日収録)より

今回のステージにも「岡さんがいました」

第1回から3代にわたって全回出場を続け、自身も17回目の出場となるエネルギー事業のサイサン・川本武彦社長は、父親の代から公私にわたる交流があっただけに「本当につらいですね」と打ち明ける。

「父がずっと(埼玉政財界人チャリティ歌謡祭の)実行委員長をやっていたので、当時奥様だったキム・ヨンジャさんと一緒に家に遊びに来てくれたりしましたね。父が亡くなってからもご縁があって、京王プラザホテルで毎年やっていたディナーショーには、時間が合う時は伺っていました。いつもお中元・お歳暮を贈り合う仲で、岡さんはいつも韓国のりをくれるんですよ」

性格は温かくて男前。番組がコロナの影響で総集編になった年、その収録の際に楽屋で「バンドマンだから昔はモテたでしょう?」と聞いたら、「当たり前だろ!」と返ってきたという。

印象深いエピソードは、同社が主催する少年野球大会「ガスワンカップ」でのこと。いつも入場曲の演奏を頼んでいたブラスバンドが来れなくなったが、「岡さんが“川本会長(父)の大会だったらギャラなんかいらないよ”って来てくれたんです。子どもの野球大会なのに、暑い中手弁当でフルメンバーで来てくれました」と、男気あふれる人柄が伝わってくる。

『埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』の演奏は、「やっぱり生バンドって初めて聞く音なので不安なんですけど、岡さんがそこにいてくれているのは本当に心強かったし、終わった後にアイコンタクトして、いつも“バッチリだったよ”とか言ってくれるんです」という存在。今回の本番も「やっぱり岡さんがいましたよ。だから自信を持って歌えました」と見守られているのを感じたそうだ。

  • サイサン・川本武彦社長 (C)テレ玉

ワインを贈っても連絡なく…「まだ信じられない」

全回出場の清水園・清水志摩子社長は、10月のディナーショーに行けなかったお詫びにワインを贈ったが、いつもなら届いてすぐに「清水さん! そんな気を使わないで!」と連絡が来るところ、音沙汰がなかったことから、「忙しいんだろうなくらいに思ってたんです」という。それだけに、突然の訃報は「ちょっとまだ信じられない気持ちです」とショックを隠せない。

17回目の出場となるケアハウス和みの里の山中和子理事長は、岡さんに「俺んとこに練習に来い」と声をかけられたことがあるのだそう。実際に行くことはできなかったが、コーラスをやっている姉の指導で自主練習すると、「声の出し方が変わったな」と気づいてくれたといい、山中理事長は「本当に優しいお父さんのような存在でした」と述懐した。

  • 清水園・清水志摩子社長

  • ケアハウス和みの里・山中和子理事長

  • (C)テレ玉

「いつも必ず声をかけてもらって、去年も“いやあ、うまくなったね”と言われたばかりなんです」と話すのは、18回出場の馬車道・木村徳治名誉会長。今回のステージも、「岡さんの顔を思い浮かべて、後ろで指揮棒を振ってくれてるんだろうなという気持ちで歌えました」と、背中で存在を感じていた。

大野元裕埼玉県知事は「ついこの前までお元気だったと聞いてますし、急にお亡くなりになったというのは痛切の思いであります」と追悼。いつも本番に向けてデモテープを送ってくれていたそうで、「大変優しい方でした」と振り返りながら、今回の演奏も「岡宏&クリアトーンズ・オーケストラ」の名前が残ったことに「とてもありがたいと思います」と感謝した。

  • 馬車道・木村徳治名誉会長

  • 大野元裕埼玉県知事

  • (C)テレ玉