今年10月、ある音楽番組の開催延期を伝えるニュースに「そんな…」「マジかよ…」「悲報」とSNSでショックの声が相次いだ。その番組とは、テレ玉(テレビ埼玉)が、1992年から29回にわたって放送してきた『埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』。その名の通り、埼玉県の財界人・政界人が一堂に会し、自慢の歌声を披露するというお正月恒例の特番だ。

年々磨きがかかる出場者のユニークなパフォーマンスと、お堅いイメージの政財界人とのギャップが大きな話題を集め、今や県を越えて“埼玉の奇祭”と呼ばれるように。Twitterでは世界トレンドに入る盛り上がりを見せている。

残念ながら、記念すべき30回大会となる2021年の放送は、新型コロナウイルスの影響で翌年に延期となったが、これまでの歴史や舞台裏を、テレ玉の川原泰博社長にたっぷりと聞いた――。

  • 『第27回埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』(2018年)のフィナーレより (C)テレ玉

    『第27回埼玉政財界人チャリティ歌謡祭』(2018年)のフィナーレより (C)テレ玉

■「みんなが一堂に会して歌謡祭をやれないか」

この番組はテレ玉が企画したものではなく、埼玉の財界側の発案だったそう。「経営者協会や商工会議所などの団体があって、財界の人たちは皆さん顔見知りなんですよね。その中で、当時はカラオケがブームというのもあったかもしれないですが、そこに政界、つまり知事や自治体にも話をされて、普段の仕事から離れて、みんなが一堂に会して歌謡祭をやれないかというお話を頂いたんです」(川原社長、以下同)と、経営者たちの趣味が、当時開局13年という若いテレビ局に持ち込まれる形でスタートした。

番組タイトルにある通り「チャリティ」も大きな目的として開催されており、収録当日の来場者や出場者からの募金に加え、テレ玉も参加する実行委員会が拠出して、毎年「埼玉県文化振興基金」に100万円を寄付。これまでの累計で、2,900万円に達した。今回はこれに加え、埼玉県の「新型コロナウイルス感染症対策推進基金」にも100万円を拠出し、合計200万円が寄付される。

現在は元日の恒例番組となっているが、第1回は2月1日の放送。会場はテレ玉のスタジオで、「最初は本当に手作りだったんです。放送の尺も短いし、参加者の人数も政界6人、財界7人の計13人で今より少なく(20年は17人)、一般観覧もしていませんでした」と、現在に比べると小規模な収録だった。

これが好評で、翌年からは1月1日の放送に“昇格”。会場も、第3回(94年)からスタジオを飛び出し、浦和市民会館(現在の市民会館うらわ)、埼玉会館大ホール、くすのきホール(所沢)、熊谷会館、春日部市民文化会館、川口リリア、大宮市民会館(現在の市民会館おおみや)と県内を回り、第10回(01年)から客席数2,500の大宮ソニックシティ大ホールに固定されるようになった。

■森光子・島倉千代子・小林旭…大物がゲストに

開催にあたっては実行委員会で協議し、毎年春頃から日程や出場者、楽曲などを調整。財界側は番組スポンサーとなって舞台に立ち、政界側は知事、県議会議長のほか、市町村の首長はエリアが偏らないように選定されている。近年は、知事が大トリを務めるのが決まりだ。出場者数が最も多かったのは、04年と08年の24組(24人)で、放送時間は3時間にも及んだ。

毎年、プロの歌手などがゲスト出演し、冠二郎、貴華しおり、香田晋、キム・ヨンジャ、市川由紀乃、島津亜矢、新沼謙治、島倉千代子、八代亜紀、森光子、美川憲一、デヴィ夫人、小林旭、長山藍子、堀内孝雄、水森かおり、松坂慶子、熊谷真実、細川たかし、千昌夫、森昌子、鳥羽一郎、山川豊など、錚々たる面々が埼玉政財界人たちの歌声を見守ってきた。

司会者は、初代が池本弘三&吉澤直美コンビ。池本は第12回まで連続で担当し、その後男性司会者は第13回~15回が佐貫洋一、第16回~22回が押坂忍、第23回から現在まで『NHK紅白歌合戦』の総合司会も経験した堀尾正明が務めている。