「愛は地球を救うのか?」という新たなテーマを掲げ、8月31日~9月1日に生放送された日本テレビ系大型特番『24時間テレビ47』。系列局での寄付金着服というチャリティー番組の信頼を揺るがす事件に加え、台風10号の接近という悪天候にも見舞われるというまさに逆風の中での放送となったが、“能登復興”と“信頼回復”という柱を軸に、刷新姿勢を強く打ち出した内容となった。

  • (左から)総合司会の羽鳥慎一、チャリティーマラソンランナーのやす子、総合司会の上田晋也、水卜麻美アナ

    (左から)総合司会の羽鳥慎一、チャリティーマラソンランナーのやす子、総合司会の上田晋也、水卜麻美アナ

松平健、相葉雅紀、ヒロミ、土屋太鳳、内村光良ら続々能登へ

47回におよぶ番組の歴史で、防災の日に当たる9月1日に初めて放送された今回は、1月1日に起きた能登半島地震の被災地復興支援をテーマにした企画が多数放送された。それは、昨年11月に寄付金着服が発覚してから、年明け2月まで番組制作がストップしたことも、一つの背景にあるとみられる。

事前に公開されたタイムテーブルに明記した企画だけでも、「松平健&羽鳥慎一アナ能登の夏」「伝説の家政婦志麻さんが能登で作る! 生産者の想いを胸に…沸騰朝採れキッチン」「オモウマい店 出会いから2年…能登のずっと明るい寿司親子 2024」「相葉雅紀とメダリストが能登に笑顔を届ける! 被災したワンちゃんを出張トリミング」「能登の野球部 震災でたった5人に…長嶋一茂&レジェンドと“野球しようぜ!”」「朝ドラ『まれ』土屋太鳳 復興へ… 能登で合唱『希空~まれぞら~』」「出張! チャリティー笑点 in 能登」「もう一度 能登で踊りたい! 日本航空高校石川&イッテQ! ダンス部の夏祭」をラインナップ。メイン会場の両国国技館の敷地内には「出張輪島朝市」が出店した。

さらに、「Song for 能登! 24時間テレビチャリティーライブ」(神奈川・ぴあアリーナMM)と、「三代目・岩田剛典が挑む生アート制作 一流画家の作品をオークション」の収益は、能登の被災地復興支援に。やす子のチャリティーマラソンは、児童養護施設への支援の募金に特化したものになっていたが、これらの企画も同様に“目的別募金”として実施されていた。

“能登復興”というコンセプトを画面から分かりやすく伝えたのは、石川・七尾市の能登食祭市場に設置したステージだ。土曜日は国技館にいた総合司会の水卜麻美アナが、翌朝にはこのステージから出演し、再び国技館に戻ってくるという異例のフォーメーションを組んだ。水卜アナは2019年、24時間駅伝のチャリティーランナーの1人として、放送中に国技館を離れたことがあったが、各地で台風の影響を受ける交通事情の中で、ここまでの移動距離に驚いた視聴者も多かったようだ。

能登食祭市場のステージにはほかにも、笑点メンバー、土屋太鳳、藤井貴彦というメイン級の出演者が集結。日曜朝だけでなく夕方にも複数の企画をここから発信しており、いわば“第2のメイン会場”であることを印象付けていた。

  • 能登食祭市場のステージ

「明るく楽しく」を有言実行した上田晋也

刷新姿勢を象徴したのは、長年にわたり旧ジャニーズ事務所所属タレントが務めてきたメインパーソナリティーを置かないというスタイル。例年、彼らが体当たりで様々な企画にチャレンジすることで応援や共感を得る形が定着していたが、今年は番組に“賛同”した出演者たちがその役割を担った。

さらに、総合司会に上田晋也が加わったことで構図が変化。後輩芸人や『上田と女が吠える夜』の出演陣ら親しみのあるタレントたちはもちろん、スポーツ番組のMCを長年担当する関係性から、時にはオリンピアンにまで容赦なくツッコミを入れる“兄貴”的存在が、今までにない立場で新鮮に映った。

特にスポーツのチャレンジ企画では、失敗が続いて微妙な空気になりそうなところで本領を発揮。卓球ラリーの世界記録を目指す中で少年が失敗してしまうと、「今のはまひる(ガンバレルーヤ)が流れを崩したのが悪い」と断じてフォローしながら、挑戦者たちの緊張を和らげていた。

上田は制作発表会見で、「つらくて厳しくてあまり笑顔になれない状況の方もたくさんいらっしゃると思うんですよ。そういう人の気持ちが分かるって言うと非常におこがましいんですけども、決して他人事だと思わず自分のことと思って、そういう立場の方に思いを馳せながらも、楽しく明るくお送りしたいなと。やっぱり明るく楽しくやらないと人は集まらないし、エネルギーが生まれないと思うんで、楽しく明るいチャリティーにできれば」と話していたが、まさに有言実行となった。