• 国技館のゴール直前のやす子

史上まれに見る低速度で進む台風10号の接近により、放送前から系列局を含めて対応に追われ、社屋等でのイベントを中止するケースが発生。やす子のチャリティーマラソンは、大雨の中でスタートとゴールを迎えることになり、スタート地点から予定されていた市民ランナーの参加イベントも中止を余儀なくされた。

そのチャリティーマラソンは、募金方法をキャッシュレスに限定し、使途を「児童福祉施設への支援」に明確化することで、寄付金着服で高まった不透明感の払拭という役割を担う形にもなった。やす子という裏表のない純粋なキャラクターも一役買ったに違いない。マラソンがスタートした途端、募金ページはアクセス集中でつながりにくくなり、募金額は日曜午前11時すぎに、昨年の放送終了時点発表の募金額2億2,223万8,290円を超え(※形式が異なるため単純比較はできない)、20時50分時点で4億3,801万4,800円まで伸ばした。

マラソンのゴール直後には、この寄付金で、児童養護施設へのアンケート結果に基づいた希望の品を、年末から来年4月にかけて届けることを説明。さらに、従来の「福祉」「環境」「災害復興」などに使われる一般募金の集計結果は10月に発表予定であることを明かした。そして、10月27日16時からチャリティー活動の報告番組を放送することを告知し、例年に増して透明化を図ろうという意識が、ここでも垣間見えた。

寄付金着服の再発防止策については、これまでも番組やプレスリリース、制作発表会見などで説明してきたが、事前番組から改めて「キャッシュレス募金導入の義務化」「封印テープ&台帳管理」「警備員・監視カメラの手配」「2名以上での募金活動の実施」という具体的な対策を告知した。

今年は、コロナ禍で実施を見送っていたメイン会場アリーナでの対面募金を5年ぶりに復活させたが、その様子を紹介するたびに「安全かつ安全なキャッシュレス募金の導入を、『24時間テレビ』を放送する31社に義務化しました」とアナウンス。画面上にしっかりと映る警備員の姿が、従来にない緊張感も生み出していた。

「やす子さんの作った輪の中に、皆さんも加わっていただけたのかな」

そんな今回の放送に懸けた思いを、総合司会の羽鳥慎一は生放送の最後で、「今年は番組第1回からの大テーマ『愛は地球を救う』にクエスチョンマークを付けました。原点に立ち戻り、番組の意味を考え直し、チャリティーの本質を見つめ直すという決意と覚悟を持って臨みました。どれだけの方にご理解を頂けたかは分かりません。ただ、放送しないことで、チャリティーが届かなくなってしまうところもある、継続することに意義があるのではないかという思いで、私たちは今年の放送を決断しました」と力説。

続けて、「能登の被災地復興支援、やす子さんのマラソンを通した児童養護施設支援という目的の募金を、今年は設けさせていただきました。今日のやす子さんの作った輪の中に、番組をご覧いただいた皆さんも加わっていただけたのかなと思っております。今年も『24時間テレビ』にご参加いただき、本当にありがとうございました」と、手応えと感謝で締めくくった。

国技館でも能登食祭市場でも、ステージには歴代各開催年のチャリTシャツに描かれたロゴを配置していた。これには、刷新を打ち出しながらも、積み上げてきた番組の基本姿勢を守っていく決意を感じさせられた。

放送前に取材に応じた吉無田剛総合プロデューサーは、『24時間テレビ』の「第1期」をスタートの1978年から91年、「第2期」をマラソンや「サライ」が生まれた92年から2019年、「第3期」をコロナ禍の2020年からと位置づけていたが、新たな時代へ方向性を示すことはできたのか。それは、10月の活動報告番組も含めてこれから評価されることになりそうだ。