2番目に注目されたのは20時35~36分で、注目度79.9%。藤原伊周が再び勢力を盛り返そうと一条天皇に接近するシーンだ。

「中宮様を御自らお助けくださった由、強きお心に感服いたしました」左大臣・藤原道長は一条天皇に、内裏をおそった火事から、娘である中宮・藤原彰子を助けてくれた御礼を述べた。「中宮ゆえ、当然である。そなたのことは頼りにしておる。されど中宮、中宮と申すのは疲れる。下がれ」一条天皇にとって、ことあるごとにわが娘を引き合いに出し、その存在を訴えてくる道長は、わずらわしいとしか言いようがない。「はっ」そんな一条天皇の心情がわからない道長ではない。表情も変えず一礼し、それ以上はなにも言わずその場を立ち去った。

帝の元から下がる道長とは逆に、帝の元へ上がろうとする者がいた。近ごろ陣定に復帰した藤原伊周である。2人は視線も言葉も交わすことなく廊下をすれ違うが、互いに心のうちは平穏ではない。伊周は笑みを浮かべ帝の元へと進んだ。一条天皇に謁見した伊周は、「誰も申さぬと存じますが、この火の回り具合からすると、放火に違いございませぬ。火をつけた者が内裏におるということでございます!」火事の原因は未だ究明されていないが、放火だと強く主張した。

「こたびの火事は私を陣定に加えたことへの不満の表れだと言われております。たとえそうであろうとも火をつけるなぞ、お上のお命を危うくするのみ。そういう者をお信じになってはなりませぬ。お上にとって信ずるに足る者は私だけにございます」伊周の言い分に論理的な矛盾はない。伊周は、一条天皇の妹・皇后藤原定子への変わらぬ寵愛とその子・敦康親王の存在をよりどころに、道長を追い落とし、自身が復権する日を信じて疑わなかった。

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「妹を盾にした兄アピールがすごい」

このシーンは、性懲りもなく権力を取り戻そうとする伊周を、視聴者は温かい視線で見守ったのではないだろうか。

伊周は初登場時こそ高い家格を誇り、才能にあふれる強キャラとして描かれていた。しかし、長徳の変で失脚してからというもの、流罪を命じられても往生際が悪く逃げ回ったり、ノーコン呪詛を連投したりするうちに、すっかり愛すべきネタキャラへと変貌を遂げてしまった。

そんな伊周だが、清少納言が書いた『枕草子』を内裏で流行させ、すでに崩御している妹である皇后・藤原定子の影響力を持続させることに成功。その甲斐もあって、再び陣定に出席する立場を取り戻すことができた。

なりふり構わず復権を果たした伊周に対して、SNSでは「伊周、堂々としていて素晴らしかった」「伊周、悦ってる」「現在の敵役をすべてになっている」「伊周の妹を盾にした兄アピールがすごい」と、温かく見守るコメントが多く寄せられた。

なお、直前の場面に登場した居貞親王(木村達成)は、次の天皇と約束された東宮、つまり皇太子でのちの三条天皇。一条天皇の前に在位していた花山法皇(本郷奏多)の異母弟で道長の甥にあたる。一条天皇の譲位を強く望んでいる居貞親王は伊周にとっては政敵と言える。花山法皇・居貞親王の父にあたる冷泉天皇は丸1日のあいだ蹴鞠をしたり、病気で寝ているのに大声で歌ったりとクレイジーな逸話が多く伝わっている。花山法皇はその血を色濃く受け継いでいるが、居貞親王はどうなのか。今後の言動に注目だ。

今回の火事で焼失したとされる「八咫鏡(やたのかがみ)」は、ファンタジーものなどでもおなじみの三種の神器の一つ。「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ/草薙剣)」「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」とともに歴代の天皇に古代より伝わってきた宝物だ。今回焼失した「八咫鏡」だが、史実では火事が起きる前は3枚存在し、そのうち2枚が今回の火事で焼失したといわれている。しかし、残る1枚も1040(長歴4)年に起きた火事で焼失し、修復もされずに鏡の破片などが神鏡として安置されていたようだ。長年伝わった神器を焼失したことは、譲位を迫る材料の1つとするには十分だろう。