今アメリカで、Z世代を中心に、「ラウド・バジェティング」という言葉がマネートレンドとなっています。直訳すると「声高な予算管理」となりますが、言葉の意味は、「支出を減らし、貯蓄目標を達成するための取り組みをできるだけ高らかに表明すること」となります。どういう経緯で広まったのか、具体的にはどうするのかなど、いろいろ疑問が浮かぶでしょう。そこで、いち早く、このマネートレンドをFPの立場からわかりやすく解説します。
きっかけはTikTok
「ラウド・バジェティング(loud budgeting)」という言葉は、ニューヨーク在住のルーカス・バトルさんによるTikTokの投稿がきっかけで広まりました。
@lukasbattle Replying to @operelly ♬ original sound - Lukas Battle
これまで、裕福な芸能人やインフルエンサーを崇拝したり、SNS上で自分の富を偽ったりする文化がありました。バトルさんはこれに対抗して、正反対である「ラウド・バジェティング」という言葉を生み出しました。
ラウド・バジェティングは、「支出を減らし、貯蓄目標を達成するための取り組みをできるだけ高らかに表明し、そのことに対して透明性を持つこと」を意味しています。わかりやすく言うと、「私はこれから節約してお金を貯めるのでよろしく!」と皆に宣言することで、目標を達成しやすくなり、また、それに対してのネガティブな印象もなくすことができます。
多くの若者がこの言葉を支持した背景には、アメリカのインフレが影響しているようです。バトルさんもTikTokで「国のインフレ水準について、立ち上がろう」と発言しています。物価が高騰している中で、贅沢に憧れるのではなく、地に足をつけてできることをやっていこうという考えが共感を得たのではないでしょうか。
ラウド・バジェティングはどんな効果がある?
節約することを公言する「ラウド・バジェティング」にはどんな効果があるのでしょう。
たとえば、お友達と食事に行くときに、予算オーバーのお店を提案されたら、それを理由に断るのは勇気がいるでしょう。仕方なく誘いに乗れば大きな出費となり、嘘をついて誘いを断るのもあまり気分はよくありません。
しかし、あなたが「ラウド・バジェティング」を実践していたらどうでしょうか。誘いを断るのは節約のため、節約するのは貯蓄目標があるためと、明確でポジティブな理由を示すことができます。そもそも、それを知っているお友達は、高いお店での食事は提案しないでしょう。あなたが、お友達と一緒に食事をしないのは、お友達側の問題ではないことが明らかなので、あなたの予算に合わせた提案をしてくれるようになります。あるいは、あなたがイニシアチブを握ってお店を決めることができるようになります。こうしたことが習慣となれば、過度な支出を抑えることができ、目標達成に近づけます。
また、「ラウド・バジェティング」によって、同じ目的意識を持った仲間が集まる効果もあります。その結果、効果的な節約方法を共有できたり、強制力が働いたりするので、目標達成の可能性が高まります。
ラウド・バジェティングの始め方
SNSなどを使って、貯蓄目標を掲げて取り組むことを宣言するだけです。現在TikTokやXで「#loudbudgeting」で検索すると、たくさんの仲間や関連記事を見つけることができます。日本では、「ラウド・バジェティング」という言葉はまだ浸透しておらず、今後わかりやすい日本語の言葉に置き換わって流行る可能性があります。
ポイントは、節約を全面に出すよりも、貯蓄目標を全面に出すことで、ポジティブにアピールすることです。そしてその取り組みに対してオープンにすることが重要です。日本ではお金の話を表立って話すのはタブーとする向きがありますが、包み隠さないこと(透明性があること)で、その人の本気度を示すことができ、その結果、周りの理解を得られやすくなります。
誤解しないように言っておくと、オープンにするというのは、全財産を開示するようなことではなく、目標達成までの取り組みをオープンにするということなので、抵抗を感じる必要はありません。また、SNSでの発信ではなく、家族や友人に宣言する形でもいいでしょう。むしろこちらの方が実践的な効果が得られる可能性があります。
ラウド・バジェティングの注意点
ラウド・バジェティングを正しく行えば、自分の価値観に基づいた支出管理ができ、経済的な目標に近づくことができます。しかし、やり方を間違うとデメリットになることもあるので、注意点もお伝えしておきます。
*節約が目的にならないようにする
節約は貯蓄目標を達成するための方法であり、節約が目的にならないようにしましょう。普段から節約を習慣にしているのは問題ありませんが、節約することが第一になってしまうと、過度な節約に走り、日常生活に支障が出るまで行ってしまうことがあります。時には、ご褒美支出もあった方が、長く続けることができます。
*他人の価値観は尊重する
ラウド・バジェティングは節約志向を声高に宣言する行為であるため、それに対して、よく思わない人も当然出てきます。オープンにしたことで誰もが共感してくれるわけではないことは理解しておきましょう。一方で、ラウド・バジェティングを行わない人に対して、無理に勧めたり、自分の価値観を押し付けたりしないことも大事です。
*完璧主義にならない
ラウド・バジェティングの実践は節約であるため、節約ができないとストレスになることがあります。特に完璧主義の人は、一度でも無駄な支出をしてしまうと失敗と感じ、そこで挫折してしまうことがあります。
ラウド・バジェティングの目的を考えよう
ラウド・バジェティングの目的は、貯蓄目標を達成することです。そのために、節約をすることを高らかに宣言するわけです。節約とは、無駄なお金を使わないということであり、何が何でもお金を使わないということではありません。ここを誤解してしまうと、お金を使うことに罪悪感を覚えるようになってしまいます。そうすると、貯蓄目標を達成したとしても、お金を有効に使うことができなくなってしまいます。節約とは、冷静なお金の使い方ができるようになることであり、その結果お金が貯まれば、有意義なお金の使い方ができるようになるでしょう。それは経済的な不安を軽減してくれることでもあります。このように目的がポジティブであれば、楽しみながらラウド・バジェティングを実践できるでしょう。