2番目に注目されたのは20時38~40分で、注目度80.8%。まひろが娘の藤原賢子(福元愛悠)を強く叱るシーンだ。

まひろは『カササギ語り』の執筆に忙しく、賢子に構う余裕がなかった。夜も深まったころ、まひろは失くなった墨汁を探しに書斎を出た。賢子はまひろが部屋を出た隙に、つい先ほどまで、まひろが執筆していた「カササギ語り」の原稿を手に取り、そのまま灯明皿にかざして火をつけると、残りの原稿も火にくべてしまった。賢子にとって、母に構ってもらえない寂しさの元凶はこの原稿なのだ。

まひろが書斎に戻ろうとすると、書斎の中から足早に去ろうとする賢子の姿が見えた。いぶかしく思いながら書斎に戻ると、勢いよく炎が燃え盛っている。「誰か!」まひろは大声を上げつつ、水を汲みに庭へと走る。まひろの声を聞きつけたいと(信川清順)と為時(岸谷五朗)は「まあ!」「何事だ!」と叫んだ。まひろといとが水をかけ、大事にはいたらなかった。「自分のやったことが分かっているの!?」まひろの叱責と賢子の鳴き声が、夜の部屋に響き渡る。

「母が相手にしないからって、火をつけるとはどういうこと? 家に燃え移ったらどうなっていたと思うの!」まひろの語気は激しい。まひろのあまりの剣幕に、賢子はおろか隣に座る為時も口を挟めずにいる。「恐ろしいことをしたのですよ、賢子は。謝りなさい。悪かったとお言いなさい」まひろが賢子に畳みかけると、たまりかねた為時が「もうもう、よいではないか」と仲裁に入る。「よくありませぬ!」父・為時が賢子を甘やかす姿は、まひろの感情をさらにいらだたせる。「悪かったな。悪かった、悪かった」なおも賢子をかばう為時をよそに、「思いどおりにならないからといって火をつけるなぞ、とんでもないことです! 人のやることではありませんよ」と、まひろの追及は厳しい。賢子はとうとう「ごめんなさい…」と泣き出してしまった。

「うん。もう分かったな。うん、分かった、分かった。分かった、分かった」孫を甘やかし続ける為時を、まひろはにらみつけながら部屋を出た。書斎に戻り、すっかり灰となってしまった『カササギ語り』の原稿を見ると涙があふれそうになった。「ああ…」と、嗚咽をもらしたが、泣くのは必死でこらえた。

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子育ての難しさに共感「つらすぎる」

このシーンは、子育ての難しさに共感した視聴者の視線が集まったのではないか。まひろは賢子に学問を教えようとするが、父・藤原為時や弟・藤原惟規(高杉真宙)は、賢子をまひろのようなインテリに育てることに否定的。遊びたい盛りの賢子も、学問よりもおはじきの方が好きなようだ。しかし、仕事と子育てを両立するため、忙しい毎日を送るまひろと、母に構ってほしい賢子との間には深い溝ができつつある。平安でも令和でも、子育ての悩みは尽きない。

ネット上では、「やっぱり、宣孝は必要だったよね」「父も乳母も失った賢子がまひろに甘えたいのは当たり前だよね」「まひろが叱るシーン、つらすぎる」「原稿を燃やされたのではなく火をつけたことを咎(とが)めているのが偉い」といった、どちらの気持ちにも寄り添った意見が集まった。

賢子は成長すると歌人として名を馳せ、従三位という非常に高い位に昇る。これは作中での設定どおり、父が左大臣・藤原道長とすれば、妥当な出世といえるかもしれない。

また、母の才能を引き継ぎ(同時に強力過ぎる英才教育もほどこされている)、高名な歌人としても名を残した。小倉百人一首の第58番、「有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする」は、大弐三位と呼ばれた彼女が詠んだ、技巧を尽くした恋愛の和歌。賢子は残された作品から、母と比べて恋愛上手(母が下手くそ過ぎる気もするが)と言われている。学問嫌いの賢子が、今後どのように成長していくのかも注目のポイントだ。