テレビ画面を注視していたかどうかがわかる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、7月28日に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』第29話「母として」の視聴者分析をまとめた。

  • 『光る君へ』に主演する吉高由里子 (C)NHK

    『光る君へ』に主演する吉高由里子 (C)NHK

ただむなしく視線をおよがせた、まひろ

最も注目されたのは20時14分で、注目度83.5%。まひろ(吉高由里子)が、夫・藤原宣孝(佐々木蔵之介)の死を知らされるシーンだ。

まひろが部屋で書物に目を通していると、固い表情をしたいと(信川清順)が「お方様」と声をかけてきた。「ん?」と、まひろがいとに振り返ると、「殿の北の方様のご使者が…」と、いとは不安そうに告げる。まひろは、宣孝の嫡妻の使いがどのような用向きで訪れてきたのか、まるで見当がつかなかったが、決してよい知らせでないことだけは分かる。

「北の方様からのお伝えにございます。山城守・藤原宣孝は、にわかな病にて、4月25日に身まかりました」と、庭先に通された使者は感情を交えずに淡々と告げた。まひろは使者の言葉がすぐに理解できず、しばしぼう然。隣で聞いていたいとは、大きく口を開いたまま絶句。外で盗み聞きをしていた従者たちも、主のあまりに突然のの訃報に、ただ驚くことしかできなかった。

「弔いの儀も済ませましたので、お知らせいたします」使者の残酷な報告に、まひろは血の気がひき、顔は青ざめている。しかし、かろうじて一言、「にわかな病とは…」と尋ねた。「北の方様は、豪放で快活であった殿さまのお姿だけを、お心にお残しいただきたいと仰せでございました。私どもも、ご最期のご様子は存じませぬ」…死因について、使者は本当に知らされていないのかどうかは定かではないが、まひろは夫の死の原因を知ることはできなかった。まひろは気持ちの整理もつかぬまま、うつろな表情でひとり部屋に戻ると、その場に座り込み、ただむなしく視線をおよがせた。

  • 『光る君へ』第29話の毎分注視データ

前々回の「睡眠時無呼吸症候群」から予想も…

宣孝のあまりに突然過ぎる訃報に、視聴者はあ然として画面を見続けたのではないだろうか。

前々回では「睡眠時無呼吸症候群」のくだりもあり、宣孝の死期が近いことを予想していた視聴者は多かったとは思われるが、直前のシーンでは家族3人が仲睦まじく過ごし、元気で豪快な宣孝が描かれたわずか数十秒後の退場劇に、視聴者のショックは大きかったと考えられる。

近年の大河ドラマではよくあることだが、臨終のシーンが描かれずナレーションにより死去が報告される、いわゆる「ナレ死」での宣孝の退場に、X(Twitter)では、「宣孝様まさかのナレ死」「使者が教えてくれたからお知らせ死でしょうか」「佐々木蔵之介さん、素敵だったのにー!」などと、衝撃を受けた視聴者のコメントが多く投稿されてる。

また、藤原道綱を演じる上地雄輔のインスタグラムに投稿されたオフショットにも注目が集まっている。「タイムスリップして家族写真に混ぜてもらいました」とまひろ・宣孝一家に私服でまじった仲良しな1枚にフォロワーがほっこりしつつも、「逝っちゃうなんて…」「宣孝おじさま…最後の最後まで優しくてかっこよかったです」と、宣孝の退場が惜しまれている。一歩間違うとただのロリコンでしかない宣孝を、佐々木蔵之介は視聴者に愛されるイケオジにみごと昇華させてくれた。

残念ながら今回で退場となってしまった藤原宣孝だが、彼の子孫は今後の朝廷で大きな役割を果たすことになる。嫡男・藤原隆光は、筑前守、越前守、備前守など各地の国司を歴任し、左京大夫なども務めた。曾孫にあたる藤原光子は、堀川天皇と鳥羽天皇、2人の天皇の乳母を務め、2012年の大河ドラマ『平清盛』に登場した藤原璋子(檀れい)は光子の娘だ。璋子は、鳥羽天皇(三上博史)の皇后となり、崇徳天皇(井浦新)と後白河天皇(松田翔太)を出産。保元の乱で争う2人は宣孝の血を引いているわけだ。さらに、2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に登場した後鳥羽天皇(尾上松也さん)は、後白河天皇の孫なので、こちらも宣孝の子孫にあたる。

宣孝の正妻はまひろに、「豪放で快活であった殿さまのお姿だけを、お心にお残しいただきたい」と、使者に伝えさせたが、その想いは清少納言(ファーストサマーウイカ)の中宮・藤原定子(高畑充希)に対する想いと同じ性質のものだったのかもしれない。