新社会人になり、給与をもらったら、お金を貯める・増やすことと同時に、お金を使うことにも目を向けてほしい」と話すのは、ファイナンシャル・プランナーとして、5000名以上のクライアントに運用指南を行ってきた杉原隆さん。

  • (写真:PIXTA)

新社会人が将来にわたって豊かな人生をおくるために、杉原氏がお金の貯め方、増やし方、使い方を解説します。

■新社会人はお金を貯めることが、目的ではない

お金を貯めると夢が広がる。
お金が増えると不安が減る。
お金を使うと輝く顔になる。

新社会人になり、働いて給与を得ることになりますが、まず「お金を貯める」ことが目的になってはいけません。その「貯めたお金」をどう使うのかの「ゴール・セッティング」から始めましょう。

給与を自分のために使うのも良いでしょう。できるなら消費よりも自分磨きの投資を多くして自らの価値を高め、「将来に向けての稼ぐ力」を付けられるといいですね。
お金を貯め、増やし、使い、また貯まる、そんなプラスの連鎖に入ったら、その後はファイナンシャル・ストレス・フリーの明るい人生が待っています。

貯めたお金を誰かのために使う習慣も、若いうちからつけられるといいでしょう。夢が広がるだけでなく、顔が輝く過程を実感できるはずです。

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■誰かのためにお金を使うとは

誰かのためにお金を使いだすと、またお金が貯まりだします。お金だけでなく、ご自身の知恵も情報も経験値も時間も、自身の枠にこだわらずに誰かのために使いだすと、新たな知恵や情報が得られるようになります。また自分のために惜しみなく時間を使ってくれる方が現れます。
不思議な話のようですが、そうなるためには自分にお金の余裕がないと、みんなが笑顔になれるこのレールに乗ることができません。

新社会人のみなさんには、最初の一歩として自分ルールを作り、まずは「貯める」ことから始めることをおすすめします。とは言っても、生活を節制して貯めることだけに集中することは味気ない毎日になってしまう危険性もはらみます。

対策として、もう一つの自分ルールを作り「毎月一定の金額を使い切る」楽しみも付け加えましょう。彼女や彼との時間に使うのも良いですし、B級グルメの食べ歩きや、週末の美術館巡りもいいかもしれません。

そんな自分ルールを作って歩みだした20代も3年、5年と時が経ち知らぬ間に心にもお財布にも潤いができているはずです。

そこから結婚するまでの間が、お金を「増やす」ゴールデンタームです。ある程度まとまったお金を「時間と複利と自分の意思」で増やせる時間は長い人生の中でもそう多くありません。この時期にしっかりと「増やす習慣」を身に着けてほしいと思います。

■「新社会人」のお金の使い方、つくり方

具体的に、新社会人の「お金の使い方、つくり方」を考えたいと思います。
毎月の給与の手取り額を、3分割しそれを3つの異なる財布に入れていく「あなた使用の自動装置」を開発します。

財布の1つ目は「将来使うために『運用』する財布」です。NISAでもiDeCoでも良いと思います。できる方は株式でも不動産投資でも構いません。最近は生命保険でも「運用に適した保険商品」が数社から発売されています。ご自身の好みと得意性に合わせるのが長続きの秘訣でしょう。

キーワードは「早く始める」「複利を味方に」。
2つ目は「将来稼ぐために『自己成長』の財布」。資格取得でも、ワインの勉強でも、ネールアーティストになるための勉強でも、美術館巡りで感性を磨くでも構いません。

将来稼ぐために、人間関係を良好にするために役立つと思うことに、毎月「使い切る」お財布です。月末間近に余っているお金は、1つ目のお財布に入れようなどとは考えず、思い切り使いきってください。その継続が必ず自己成長に繋がります。
3つ目は「日々『生活に使う』お財布」です。毎月の手取り額から1つ目と2つ目のお財布に自動的に入っていった残りのお金が入るお財布です。

1つ目、2つ目のお財布は「定率(*1)」なので、お財布に入る金額は月々多少の増減がありますが、想定内として生活費を微調整してください。

(*1)たとえば、手取り額が25万円で、1つ目と2つ目のお財布はそれぞれ20%(割合は好みで調整)と決めれば、
1つ目のお財布=手取り額×20%=25万円×20%=5万円
2つ目のお財布=手取り額×20%=25万円×20%=5万円
3つ目のお財布=手取り額25万円-5万円-5万円=15万円
手取り額が増えれば、お財布に入る金額は自動的に増えていくので、運用に回る金額も自己成長に投資できる金額も増えていき、将来に対する安心と楽しみは大きくなっていきます。

  • (イラスト:ひえじまゆりこ)

1つ目の財布で運用し、増えたお金を手にする時、落とし穴に陥らないようにしましょう。頑張って貯めて、賢く増やしたのに、まさかの「税金」で泣かぬよう、「税の知識」も身に着けましょう。思うほど難しいものではありません。

■「給与所得、金融所得、一時所得」の税金の違い

給与所得には住民税、社会保険料が、株式や投資信託など金融所得には20.315%の源泉分離課税がもれなくついてきます。

では、一時所得とは何でしょうか。簡単に言うと、「払った人と受け取る人が同じ場合の利益」が一時所得となります。

具体的には養老保険の満期金、生命保険の解約返戻金、変額保険の運用益などが一時所得となり、多くの優しい優遇制度が残されています。

たとえば一時所得は、毎年50万円の控除、控除後利益の半分にしか課税されず、受取総額が支払い総額よりも少なければ非課税&申告不要などです。
将来的にもこの一時所得対象となる資産を多く持ち、インフレにも強い金融資産を持つことが「生涯可処分所得」※を最大化する近道になります。

※「可処分所得」:税金や社会保険料等を差し引いた後の「使えるお金」

自動車のバッテリーが走りながら蓄電するように、あなたの資産も増やしながら自由に使えるようにしてください。インフレにも円安にも人口減少の影響にも負けない資産の形成、運用、そして活用は若いみなさんの掌中にあります。

新NISAも良いでしょうが、それがすべてはありません。新社会人になった方々は、金融リテラシーを向上させ、ファイナンシャル・ストレス・フリーの人生を歩んでください。

 文/杉原隆(ファイナンシャルプランナー、実践医業経営コーチ)

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