このところ街でワイヤレスヘッドフォンやワイヤレスイヤフォンを着けたままの人を見る機会が増えた。そんな筆者もラジオやポッドキャストやYouTubeを、昼間の外出中はイヤフォン、夜間のウォーキングは寒さ対策のイヤーマッフル代わりも兼ねてヘッドフォンで、街歩きしながら聴いている。

どちらも「周囲の余計な音」だけを消してオリジナルの音だけがハッキリ聞こえる「ノイズキャンセリング(ノイキャン)機能」付きで、しかも「外音取り込み(トランスペアレント)モード」付き。つまり「周囲の音もしっかり聞こえる」モードがあるもの。

■「外音取り込み機能」を使っても“やっぱり不安”

そしてもちろん街を歩くときは安全のため、必ず「外音取り込みモード」にしている。それでも正直に告白すれば、やっぱり不安は消えない。不安ではなくて、実際にヒヤリとしたことも何度かある。後ろから接近してくるバッテリー走行中の電気自動車やハイブリッドカーの音や、他人が自分に呼びかける声に、気づくのが一瞬遅れた、など。

  • 左がインイヤー型でノイズキャンセリング機能付きの完全ワイヤレスイヤフォン「サウンドコア リバティー4(Soundcore Liberty 4)」。右が今回紹介するオープンイヤー型のワイヤレスイヤフォン「サウンドコア エアロフィット(Soundcore AeroFit)」。

ヘッドフォンやイヤフォンの「ノイキャン機能」は基本的に、外部の音を専用マイクで拾って電気信号にし、専用の回路でその信号とは逆位相の信号を作ってプラスすることで、外部の音を「キャンセル(消去)」してしまうもの。

そして「外音取り込みモード」は、ノイキャン機能をオフにして、この外部の音を拾うマイクからの電気信号を、聴いている音にミックスすることで「外の音」も同時に聞けるようにする。

そもそもノイキャン機能は、「ゴーッ」というエンジン音が消えない飛行機の中で、ヘッドフォンで音楽を快適に聴くために開発された。筆者も1990年代から長時間のフライトがある海外出張のときはノイキャン機能付きの有線ヘッドフォンを使ってきた。そもそも周囲の音を聞く必要がある街歩きなどでの使用は想定していない。室内や電車に乗っているなど安全の心配がない状況で使うものなのだ。

■「音のする方向」がわからない!

ただ、最近のノイキャン機能付きのワイヤレスヘッドフォンやワイヤレスイヤフォンには「外音取り込みモード」が必ず付いている。ただこのモードで聞く周囲の音の大きな問題は、その中の気になる音が「どの方向から来た音」なのか、はっきりわからないことだ。

人の脳は左右の耳に届く音のわずかな時間の差と音量の差から「音のする方向」を特定している。だが「外音取り込みモード」ではこの特定ができない。だから、時にヒヤリとする事態が起きてしまう。それに、どんなに高級なモデルでも「耳栓をしているような閉塞感」がどうしてもつきまとう。

またインイヤー型は耳の中(外耳道)にピッタリ装着するので物理的に雑音の入る余地がなく、音がいちばんクリアに聴けるが、ピッタリ装着するために「外耳炎(外耳道炎)」にかかってしまうリスクがある。これは耳の穴から鼓膜の手前までの“外耳道”で起きる炎症のこと。

ご存知だろうか? 耳の中はとてもデリケートなので、耳鼻科のお医者さんは「耳そうじ」を推奨していない。耳そうじが外耳道の皮膚の表面を細菌感染から守ってくれている常在菌のじゃまをして、悪い細菌が炎症を起こしてしまうことがあるからだ。

インイヤー型のイヤフォンを、外耳道にはまるイヤーチップをクリーニングせずに長時間使い続けると、耳そうじしたような状態になって、この外耳炎にかかってしまうことがある、筆者も何度か経験しているがかなり痛くて、耳鼻科に行かないと治らないなかなかやっかいな病気だ。

  • インイヤー型(上)はイヤーチップ(半透明のもの)が耳の中(外耳道)に耳栓のようにピッタリはめて使う。だから外の音は基本的にシャットダウンされる。だがオープンイヤー型(下)は、耳の穴に音の出る部分をかぶせて使う。耳の中には何も入れない。

■そこで気になったのが「外の音」が耳で直接聞けるタイプ

こうした不安感と閉塞感を何とかしたい。街歩きでも安全に、好きなラジオやポッドキャストの番組、音楽が聴きたい。外耳道炎になる心配がなく、長時間安心して着けられるワイヤレスイヤフォンがほしい。数年前からそう思って、オーディオの専門家でもないのに「外の音も直接耳で聴ける」ワイヤレスイヤフォンを個人的に「研究」してきた。

たとえば、メーカーの発表会で「周囲の音が聞ける」ワイヤレスイヤフォンの試作品を試させてもらったり、取材したモデルを自腹で購入したり。この「周囲の音が聞ける」ワイヤレスイヤフォンは、各社からさまざまな製品が発売されている。

そのひとつが「骨伝導タイプ」。これは耳の穴の中にユニットを入れるのではなくて、こめかみ(耳の上のあたり)や、耳たぶの上の「くぼみ」に振動ユニットを装着して使うもの。

ふつうのヘッドフォンやイヤフォンは音の信号を振動子で空気の振動にして鼓膜を震わせ、この振動が鼓膜から内耳に伝わって、それで音が聞こえる。だが骨伝導タイプは音の振動を、空気を経由しないで骨を通じて直接内耳に伝えることで音が聞こえる。

そしてもうひとつが、耳にセットするイヤフォンの中央部に「外の音が通る穴」が開いていて、その周辺から音が出る。この中央の穴から外の音が鼓膜に伝わる「穴開き」タイプ。

さらにもうひとつが今回紹介する「オープンイヤー型」と呼ばれる耳掛け式、つまり「音の出る部分を耳の穴の上に軽くかぶせて使う」タイプだ。

■外の音と聴いている音。どちらも“ちゃんと聞ける”オープンイヤー

そしてこれまで、骨伝導タイプと穴開きタイプを自腹で購入して使ってきた。でも正直なところ、どちらも音質が、ふつうのインイヤー型と比べるとクリアさに欠ける。だからインイヤー型より音量を上げて聞くことになる。それは構造上、仕方がないことなのだろう。でも音量を上げると、他の人にシャカシャカ音が聞こえる“音漏れ”がやはり気になる。

筆者が購入して使っている骨伝導タイプはこめかみではなく、耳たぶの上のくぼみに装着するタイプ。ラジオやポッドキャストのトーク番組を聴くならいい感じだが、音楽を聴く場合は、音質がイマイチ。聞こえる音の周波数が狭いという印象だ。

それに、同じモデルを使ったことのある知人の中には「長時間だと、耳の装着部分が痛くなる」という人もいた。確かに骨伝導タイプは原理的に、皮膚に音の出るユニットを強く押し付けることが必要なので、そうなってしまうのもよくわかる。

この点、耳掛け式のオープンイヤー型で「音の出る部分を耳の穴にかぶせて使う」タイプのワイヤレスイヤフォンはこうした問題が起きにくい。インイヤー型のような、耳の穴をふさがれていることで起きる閉塞感や圧迫感はない。また音の出る部分が小さく、しかも出る音の指向性を高めてあるからだろう、音漏れも少なく音量も充分。

しかも、耳の穴を上からカバーしてあっても、周囲の音はしっかり聞こえる。またノイキャン機能はないけれど、電話するとき「周囲の雑音をカットしてこちらの声をクリアに相手に伝える」ノイズリダクション機能が搭載されているので、外での通話も快適。だから音声コンテンツを聴きながらの“安全&安心の街歩き”には、これに以上ベストな選択肢はないと思う。

■オススメはノイキャン付きと使い分け

筆者が今使っているのは、純正の付属品以上に使いやすい、スマートフォンやノートパソコンの携帯用充電器やUSB充電器やケーブル類でおなじみ「アンカー(Anker)」ブランドのオーディオブランド「Soundcore by Anker」のオープンイヤー型ワイヤレスイヤフォン「サウンドコア エアロフィット(Soundcore AeroFit)」シリーズのスタンダードモデル「エアロフィット(AeroFit)」だ。

  • Ankerのオーディオブランド「Soundcore」から2023年11月1日から発売されている、同社初のオープンイヤー型ワイヤレスイヤフォン「サウンドコア エアロフィット(Soundcore AeroFit)」。片耳約8.5gの軽量設計。イヤフォン単体で約11時間、付属のケースで約10分間充電することで約4時間、最大約42時間の使用が可能だ。公式サイトでの価格は1万6990円(税込 。2024年1月16日現在)。

このシリーズには上級モデルの「 サウンドコアエアロフィット プロ(Soundcore AeroFit Pro)」もある。2つの違いは本体&ケースのサイズ、音質、そして防水性の違い。スタンダードモデルより「プロ」の方が本体もケースもひと回り大きく、音質も大きな分だけ低音が充実。
さらにライブ会場や映画館にいるような臨場感と立体感を実現してくれる「3Dオーディオ」機能も備えている。また、本体に装着することで激しい運動でもイヤフォンの落下が防げる丈夫な着脱式バンドも付属する。

  • 左が「サウンドコア エアロフィット(Soundcore AeroFit)」。右が上級版の「サウンドコア エアロフィットプロ(Soundcore AeroFit Pro)」。イヤフォンは片耳で約12.2g。単体で約14時間、ケースで最大約46時間の使用が可能。公式サイトでの価格は2万2990円(税込。1月16日現在)。

また防水性はスタンダードモデルが「IPX7」等級なのに対して、プロの方は「IPX5」等級。IPX7は常温の水道水(静水)の水深1mに機器を沈めて約30分間放置されても大丈夫という、いわゆる「水没」にも短時間なら耐えられるもの。

一方、IPX5は約3mの距離から1分間あたり12.5リットルの水を3分間、あらゆる方向から当てても大丈夫というもの。でもIPX5等級は、大量の汗をかいても大雨に濡れても問題がないというもの。つまり実用上はどちらも充分なレベル。

だからどちらを選ぶかは、全国の大きなショッピングセンターなどにある「Anker Store」を訪れて、実機を試着して本体のサイズ感と音質の好みを確認。さらにあなたがハードな運動をするかどうか、で判断されるといいと思う。

オープンイヤー型のこの「サウンドコア エアロフィット(Soundcore AeroFit)」を使ってまずうれしいのは、周囲の音がしっかり自然に聞こえる安心感。そして、耳栓と同様の閉塞感がゼロで装着感が軽快で、周囲の人と話すときも違和感がまったくないこと。そして感心したのは、周囲が静かな場所ならインイヤー型と変わらないクリアで豊かな音がすること。

しかも、もうひとつ持っている他社のオープンイヤー型イヤフォンほど音量を大きくしなくてもいいこと。これはプレスリリースに書かれているように「音の指向性」を高めた工夫のおかげだろう。

  • 写真左:「サウンドコア エアロフィット(Soundcore AeroFit)」のドライバー(音の出る)部分。多くの人の耳にフィットして音漏れなく確実に音が届くように設計されている。身近な4〜5人に試着してもらったが、フィット感で問題がある人。音が届かないという人はいなかった。写真中・右:また、「サウンドコア エアロフィット(Soundcore AeroFit)」はAnkerのスマートフォンの専用アプリで設定やカスタマイズができる。

なお、筆者はいつもこの「サウンドコア エアロフィット(Soundcore AeroFit)」に加えてもうひとつ、耳の中にぴったり装着するノイズキャンセリング機能付きのインイヤー型ワイヤレスイヤフォンも持ち歩いて、街歩きには「サウンドコア エアロフィット(Soundcore AeroFit)」、地下鉄や電車の中など交通機関の中ではノイズキャンセリング機能付きのインイヤー型と、ふたつを使い分けている。

地下鉄や電車の中の「周囲の音」は大きいので、ノイズキャンセリング機能のないオープンイヤー型だと、聴きたい音がしっかり聞こえない。だからそんなときはノイキャン機能付きのインイヤー型を使っている。この使い分け、本当にオススメだ。

■オフィスや家でも、便利で安心

それに、もしあなたが筆者のように“ながら族”なら、そしていつもワイヤレスヘッドフォンやイヤフォンを着けて生活しているなら、街歩き以外の場面でも、このオープンイヤー型ワイヤレスイヤフォンをぜひ使うことをぜひ勧めたい。

このコラムのラジオの回でも書いたが、小学生の頃からずっと今まで、私は“ながら族”だ。授業中にこっそり好きな本を読む。下校中に歩きながら本を読む。とにかく本が好きだった。本に夢中になり過ぎて、電柱に衝突したことが何度もある。

そして中学生以降は、読書ではなくラジオや音楽などの音声コンテンツを聴きながら勉強する、音でも“ながら族”になった。社会人になって以降は、許される環境なら、聴きたくなったらできる限りラジオを、最近ではポッドキャストや画像ナシでYouTubeのコンテンツも聴いている。なぜなら、こうしたメディアほど仕事や家事と両立できる、しかも「聴くだけで最新の情報や知識、新しいアイデアにつながる」情報源は自分にとって他にないからだ。

ただオフィスや家庭は、外とは違った意味で「周囲の音」、つまり一緒に居る人の言葉や声を聞くことが必要不可欠。そうでなければ会話が成立しない。相手に失礼だし自分も困る。

その点、外の音もしっかり聞こえるオープンイヤー型なら、聴いているコンテンツの音量をよほど大きくしていない限り、耳に届くから安心。会話しなければならない場面でちゃんと会話ができる。ただオフィスや家庭で使うとしても、周囲や家族の理解と承認が得られる状況に限られるのはもちろんだ。

文・写真/渋谷ヤスヒト