南海電気鉄道と泉北高速鉄道は20日、両社の取締役会にて経営統合することで基本合意したと発表した。南海電鉄を吸収合併存続会社、泉北高速鉄道を吸収合併消滅会社とし、2025年度早期の経営統合に向けて検討を進める。

  • 泉北高速鉄道の新型通勤車両9300系。南海電鉄の8300系をベースとしている

泉北高速鉄道の運営する鉄道事業(中百舌鳥~和泉中央間)は、南海電鉄の高野線難波~中百舌鳥間で相互直通運転を行い、泉北ニュータウンなど堺市・和泉市にまたがる郊外住宅エリアと大阪都心を結ぶ交通インフラとしての役割を担う。東大阪流通センター(東大阪市)、北大阪流通センター(茨木市)の運営も担い、一大流通拠点として国民生活や産業活動を支える重要な役割も果たしている。

南海電鉄は2014年7月1日、大阪府などから旧大阪府都市開発の株式譲渡を受け、名称を泉北高速鉄道に改め、同社をグループ化した。2022年4月1日には、南海電鉄がグループ会社の保有する泉北高速鉄道の全株式を取得し、完全子会社化している。

沿線人口の減少、コロナ禍を通じた生活様式の変化等により、鉄道事業の構造的な需要減は歯止めがかからない状況にあり、将来にわたって事業を担う人材の確保が困難になることが確実されている。そうした中、同種の事業を営む南海電鉄と泉北高速鉄道の経営を統合し、グループ経営の効率を改善することで、「サステナブルな公共交通の経営の実現や更に競争力のある流通センターの確立に向けて経営資源を投入していくサステナブルな事業体制を確立してまいります」と説明する。

  • 今年9月まで、「ラピート」車両の「泉北ライナー」が運転されていた

あわせて鉄道利用がしやすい運賃設定等も行い、泉北高速鉄道の沿線(堺・泉北エリア)における「暮らす・働く・訪れる」価値を高め、南海電鉄グループのまちづくりを深化させる。初乗り運賃の二度払い解消など、地域からの声に応えられるよう検討を進めるとしており、現在検討中の運賃案も示された。一例として、難波~泉ケ丘間の運賃は現行の普通運賃490円・通勤定期2万3,980円・通学定期9,670円から、普通運賃490円(変更なし)・通勤定期1万8,770円(5,210円値下げ)・通学定期6,060円(3,610円値下げ)への変更を検討。ただし、今後変更する可能性もある。

今回は南海電鉄と完全子会社である泉北高速鉄道の経営統合であることから、連結業績に与える影響は軽微だという。両社の経営統合について、南海電鉄を存続会社、泉北高速鉄道を消滅会社とする吸収合併を前提に検討することを定めた法的拘束力のない覚書を締結。吸収合併契約の内容は未定とされ、両社間で協議の上、決定する。2025年度早期の経営統合に向けて検討を進め、最終合意の決議が完了し次第、速やかに知らせるとのこと。