松本の座長ぶりも「リーダーシップを取るのがうまい」と絶賛する。
「嵐のコンサートの演出をしたり指揮を執るのはとてもうまいので、現場の士気を上げたり、どういう風にこの作品を持っていこうか常に考えているのだと思います。メイクに関しても自分なりに考えて、しかもそれを押すのではなく、スタッフの方々に聞いて最善のものを出そうという心意気は、役者としての松本潤は初めて見ましたが、真っすぐ突き進むタイプで私と似ているなと思います。故に衝突もあるでしょうけど、それは作品を少しでも素晴らしいものにするという情熱なのですごいなと思います」
家康そのものだと感じさせる演技力も称える。
「1年ちょっと同じ役をやるというのはすごいことだと思います。彼なりに計算していろいろな方と相談してやってきたことでしょうけど、染みついていて、現場で立派な家康公だなと。すごい吸収力と計算の中で、現場ではそんなものは忘れて動物的に、家康公として心が動いて演じている松本潤はさすがだなと思います」
そして、「彼も40歳ですし、いろんな経験を重ねてきて、本当に立派な役者になったと思います」と感慨深げに語る七之助。
「彼は、役者はあまり自信がないと言っていますが、立派な役者になったのではないかなと。『どうする家康』でまた一皮も二皮も剥けたので、今後もいろんなことにチャレンジしてほしいですし、ファンの方もびっくりしているんじゃないですかね」
■松本潤は家康とは真逆 「どうする」ではなく「どうしてやろうか」
さらに、松本の初舞台を振り返って、役者としてではなくアイドル“松本潤”として見られる中で演技する大変さがあったのではないかと推察する。
「かなりきつかったと思いますが、彼は自分の力で切り開いていった。嵐という華々しい成果を作りましたが、ずっと『クソー!』という根性の中で生きてきた人間だというのが、この『どうする家康』にも染み出ていると思うので、これから先もすごく楽しみです」
少年時代からの家康の成長が描かれている本作。少年時代の松本と家康に重なる部分はあるかという問いには、「真逆です」と即答し、「松本は『どうする』なんて思ってなかったですよ。そんな弱気ではなかったです。『どうしてやろうか』とギラギラしていましたし、『よーし見てろ!』と、努力して血の涙を流しながらやっていこうという人間だったので、家康さんとはちょっと違うなと思います」と話していた。
1983年5月18日生まれ、東京都出身。十八代目中村勘三郎の次男。1986年9月、歌舞伎座『檻(おり)』の祭りの子勘吉で初お目見得。1987年1月、歌舞伎座『歌舞伎二人桃太郎』の弟の桃太郎で二代目中村七之助を名乗り初舞台。歌舞伎に限らずさまざまな分野でも活躍し、映画『ラスト サムライ』(2003)、『真夜中の弥次さん喜多さん』(2005)、ドラマ『豊臣秀吉 天下を獲る!』(1995)、『河井継之助~駆け抜けた蒼龍~』(2005)、『大河ドラマが生まれた日』(2023)、舞台『ETERNAL CHIKAMATSU』(2016)など。大河ドラマへの出演は、『武田信玄』(1988)、『元禄繚乱』(1999)、『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019)に続き、『どうする家康』は4回目。