――今回新たに登場する新型ファイズ=「ネクストファイズ」のデザインについてのお話を聞かせてください。

松浦:ネクストファイズの姿を初めて見たとき、ちょっとファイズっぽくない印象を受けたので、当時世代の人たちもおそらく驚いたんじゃないでしょうか。でも、だからこそ「正解」なんだなと思わせるデザインでした。

白倉:ファイズは放送当時、いろんな武器を使いこなすメカニックライダーだったんです。携帯電話で変身し、デジカメでパンチ、懐中電灯を足に取りつけてキックする。でも今の時代は、カメラもライトもぜんぶスマホの機能に入っているわけですよね。ここ20年でのデジタル機器の進歩を意識しつつ、今のファイズを作ろうとすると、スマホひとつで何でもできるライダーになるんじゃないか。それがネクストファイズです。超高速移動が可能なアクセルフォームになるにしても、以前のような追加パーツもいらない。アプリを操作するだけでいいという(笑)。

松浦:でも変身アイテムがスマホになったことで、撮影は大変だったんですよ。

白倉:ベルトに装着しているときでも表示面が見えてしまうので、「今はなんの画面になっているんだ!?」ということを常に気にしなくてはいけないから、現場の負担は大きかったでしょう。

松浦:その点、昔のファイズフォンは開閉式でしたからよく出来ていますよね。だって、たたんでしまえば画面は見えない(笑)

白倉:今回も「折りたたみスマホ」とかにしてしまえばその問題は解決できていたかな(笑)。表示が出ているのが面白いんだけど、とにかく大変だったね。

――先日、キャスト・関係者のみなさんが集まって試写が行われたとうかがいました。改めて作品をご覧になった感想はいかがですか。

白倉:今回、ネクストファイズをはじめ、入れ込まなければならない難しい「お題」がたくさんあったのですが、恐ろしいことに大先生はお題をぜんぶ飲み込んで、見事に今回のミッションをクリアしてくれました。

松浦:最終的に、脚本で大幅に直すところはありませんでした。白倉さんが話していた「同窓会的なものではない、今の『555』を作りたい」という思いには、大先生もリンクするものがあったんだろうなあと思います。

――最後に『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』の公開を今か今かと待ち望んでいるファンに向け、作品の見どころをお願いします。

松浦:企画が立ち上がったとき、大先生に『555』のテーマって何だったんですか? と尋ねたんです。そうしたらズバッと「テーマは『差別』だな」とおっしゃられて。僕はそういったことを思いもしていなかったので驚いたのですが、言われてみれば確かにそうかと。あれから20年経って、「差別」の先にあったもの。つまり「寛容」や「受容」、そういったことまで描こうとしたのが『パラダイス・リゲインド』なんじゃないかと思っています。大人になるということも含め、巧や真理たちが20年かけて、青春のトゲ、陰りという味を残しつつ、その人生を経てたどりついた場所があるんじゃないか。僕にとっても今回の物語は納得できるものだったので、ぜひかつての『555』を楽しんでいたみなさんも、20年後の『555』を目撃していただきたいです。

白倉:『パラダイス・リゲインド』という、『劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』を受けたようなタイトルですが、当時の映画では「オルフェノクに支配された世界で、少数の人間が戦っている」物語。今回はまるっきり逆で、人間社会で少数のオルフェノクが細々と、しかしたくましく生きている物語です。どうしても、かっこいい仮面ライダーが悪い怪人をやっつけないといけないテレビシリーズの縛りの中では表現が難しかった『555』の有り様が、20年越しに描けたような思いがあります。ネクストファイズに代表される、新しいバトルアクションもふんだんに盛り込みながら、最終的には『555』ファンであればあるほど、おそらく涙を禁じ得ないシーンのつるべうち、怒涛のクライマックスが待ち構えています。『555』が好きな方はもちろんのこと、嫌いな方もぜひご覧ください!

松浦:『555』嫌いな人にも観てほしいんですね(笑)。

白倉:それだけ、懐の深い作品ということかな(笑)。

『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』は、2024年2月2日より新宿バルト9ほかにて期間限定上映、2024年Blu-ray&DVD発売。

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