伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦(主催:新聞三社連合、日本将棋連盟)は予選が進行中。10月2日(月)には第4ブロックの永瀬拓矢王座-伊藤匠七段戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、95手で勝利した永瀬王座が予選突破まであと2勝としました。

5度目の正直なるか

両者の対戦はこれまでに4度ありいずれも伊藤七段の勝利。永瀬王座としてはこの夏に争われた竜王戦挑戦者決定戦のリベンジを果たしたいところです。振り駒が行われた本局は先手となった永瀬王座の注文で角換わり腰掛け銀の定跡形へ。対して6筋の歩を突いて先攻したのが後手・伊藤七段が用意した作戦でした。

水面下で研究が進められるテーマ図を前に両者速いペースで指し手を進めます。永瀬王座は9月に指された本棋戦予選の本田奎六段戦でも同様の作戦に直面しており、その際は緩急自在の押し引きで快勝。これを踏まえてか本局では後手の伊藤七段が54手目に変化を見せました。端への垂れ歩は先手の攻め駒を攻める狙いです。

永瀬王座が攻め切って快勝

伊藤七段の研究手に対しても永瀬王座は指し手のペースを落としません。1筋にと金を作って香得を果たしたのは確実な戦果で、ここから先手はこの香を敵銀との交換に持ち込み駒得を拡大。後手の伊藤七段も先手陣右方に作った成駒を起点に反撃を目指しますが、永瀬王座の視線はすでに敵陣に向けられていました。

手番を握った永瀬王座は後手陣に配置した角・桂を次々に切り飛ばして寄せに踏み切ります。手にした金で王手したのが素朴な決め手。1筋に作っておいたと金が伏線となり伊藤七段の玉ははさみうちの受けなしに追い込まれました。終局時刻は18時53分、自玉の受けなしを認めた伊藤七段が投了を告げて永瀬王座の勝利が決まりました。

勝った永瀬王座は次戦で山本博志五段と対戦します。

  • 第61期に永瀬二冠が藤井聡太七段(いずれも当時)と挑戦者決定戦を戦ったのは記憶に新しい(写真は第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

    第61期に永瀬二冠が藤井聡太七段(いずれも当時)と挑戦者決定戦を戦ったのは記憶に新しい(写真は第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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