梅雨に入り、ジメジメした天気が続くとなんだか体調がすぐれない……頭が痛くなりやすい……といった不調を抱えている人は多いのではないでしょうか。頭痛や関節痛、倦怠感(だるさ)など、梅雨の時期に起こる不調は「気象病」や「天気痛」といわれています。これらを改善するにはどうすればいいのでしょうか。TOTO株式会社関西支社健康管理室産業医の甲斐沼孟先生にお伺いしました。

――「気象病」といわれる症状にはどのようなものがありますか。代表的な症状を教えてください。

甲斐沼孟先生:台風や大雨の日が近づくと徐々に頭痛がひどくなる、湿気が多い季節には関節が痛い、梅雨の時期はだるくて倦怠感が改善しないなど気圧の変化によって引き起こされるこれらの一連の症状は「気象病」と呼称されています。

決して少なくない人が気象病の症状を抱えていて、気象病(天気痛)に関連する症状はケースバイケースです。

代表的には片頭痛など慢性的な一次性頭痛の悪化、肩周囲や首の凝り、膝や腰部分の痛み、めまい、抑うつ症状などが挙げられます。

気象病の症状は、一定期間安静にすれば我慢できるぐらいの場合もあれば、家事や仕事が手につかないほど重大な症状に悩まされるケースもあります。

さらに、体調変化に対する不安や心理的要素が複雑に関与して症状が深刻化する傾向も見受けられます。

ひどい場合には、いつ何時気象病(天気痛)が出現するか判断できないという理由で、親しい友人や家族と旅行できない、台風や落雷が襲ってくるという天気予報を見るだけで体調が悪化することもあります。

――「気象病」の症状が出やすい人の特徴はありますか。

甲斐沼孟先生:気圧の変化を耳の奥にある内耳がセンサーとして検知すると、前庭神経や三叉神経が刺激されて、神経伝達物質や炎症性サイトカインを放出することで、脳の血管が拡張して頭痛を引き起こすと言われています。

内耳の部分に気圧を感じるセンサーがあると考えられていますので、日常的にめまいや耳鳴り症状を起こしやすい人、あるいは乗り物酔いをしやすい場合などにおいては、このセンサーが過敏に検知する結果、通常よりも気象病(天気痛)を起こしやすいリスクがあります。

――「気象病」の原因は何ですか。また梅雨の時期に症状が現れるのはなぜでしょうか。

甲斐沼孟先生:現代人は、エアコン環境下で過ごすことが多く、普段から運動しないという人が少なくありませんので、外的環境における温度変化や湿度変化に体が自然に適応できず、自律神経のバランスが乱れて様々な不調を起こしやすいと考えられています。

気象病の症状が出るのは、主に自律神経の調節がうまくできないことが原因であると指摘されています。

また、一般的に天気が崩れると気圧が下がる傾向がありますが、気象病などの体調不良をきたす大きな要因は「気圧」であると考えられています。

気象病を患っている人は、梅雨の時期など天候が不安定になるシーズンに気圧変化に伴う刺激がストレスとなり、脳が過敏に反応して、交感神経の働きが高まる結果として、脳血管の収縮などの変化を招き、頭痛症状などを強く感じるようになります。

――「気象病」の症状が出やすい天気や気候はありますか。

甲斐沼孟先生:気象病の症状が起こりやすいのは、主に寒暖差が激しくなる季節の変わり目や台風など気圧変動の大きくなる気候の時期であると言われています。

天気図に示されない程にわずかな気圧の変化によって影響を受けて症状を認める人も存在しますが、特に注意が必要なのは台風シーズンであり、低気圧の塊である台風が襲ってくると気圧の変化が通常より大きくなって不調を引き起こしやすくなります。

また、天気が崩れる前後や季節の変わり目も要注意であり、特に春先は気温の寒暖差が大きく、気圧変動も一定伴うために気象病による症状が出やすいと考えられています。

梅雨の時期には、湿気が多く、低気圧が続いて、頭痛や関節痛などの症状が悪化する傾向も見受けられます。

――「気象病」への対処方法や予防方法を教えてください。

甲斐沼孟先生:気象病に対処する、あるいは事前に症状出現を予防するために、まずは自律神経を整えることがキーポイントです。

そのためには、常日頃から十分な睡眠、適度な運動、バランスの良い食事摂取などを含めて規則正しい日常生活を送ることが重要なポイントとなります。

また、気象病の治療に際して、有力な武器になるのが「痛み日記」です。

頭痛に関する自分の日記には、その日その日ごとの天気や気圧変化、痛みの強さ、薬の服用の有無や行動パターン、症状が出たタイミング、運動したかどうか、あるいは良質な睡眠が確保できているかなどの状態を定期的に記録するようにします。

数か月程度日記を書き続けると、体調と天気がどう連動しているかがある程度判明します。

自分なりの「痛み日記」で気象病(天気痛)が出現するパターンや時期などが事前に予測できるので、気圧や天候の変化に応じてもっとも効果的なタイミングで予防的に鎮痛剤などの薬を服用して、疼痛症状やメンタル不調を防ぐ作用が期待できます。

――気象病と思われる症状が重い時はどの病院(何科)を受診すればよいでしょうか。

甲斐沼孟先生:気象病の症状が重大な場合には、総合内科や総合診療科などを標榜している医療機関、あるいは耳鼻咽喉科や漢方外来などを併設している総合病院を受診されることをお勧めします。

特に、気象病に効果的とされている薬剤としては、抗めまい薬や内耳の血液循環を良好にする五苓散などの漢方薬が具体例として挙げられます。

実際の診療場面では、個々のケースによってどの薬剤が適しているかを少しずつ試しながら様子を見ていきます。

――ありがとうございました

監修者 : 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)先生


甲斐沼 孟

国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医/大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 /国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 /大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 / 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員

この記事は、医療健康情報を含むコンテンツを公開前の段階で専門医がオンライン上で確認する「メディコレWEB」の認証を受けています。