久保が演じている五徳は、幼くして家康の嫡男・信康(細田佳央太)のもとに嫁いだ、信長の娘。気の強いキャラクターだが、演じる際に優しさを意識したという。

「史料では築山殿や信康さまとの関係はあまり良いとされていませんが、演出陣やプロデューサーさんから『五徳はきっと優しい方だったと思う』というお話をいただきました。それを飲み込むのに時間がかかりましたが、現場で徳川家の皆さんと会話を交わしていく中で五徳の優しさが浮き彫りになり、表立ってわからないかもしれないけれども優しさは常に持っておくようにしました」

史実では、瀬名(築山殿/有村架純)と信康は悲しい最期を遂げることになっており、2人の謀を五徳が父・信長に密告したことが悲劇の元凶になったとされている。

「知っている方が多い事件だと思いますが、果たして五徳が元凶なのか、事件が起こる瞬間までこの人は結局どの選択をするのかは見えないほうが面白いのではないかなと思いました。織田家としてのプライドや威厳、気の強さが見えているところから、どう徳川家に馴染んでいくのかというのが、五徳として大事な部分になってくると思います」

そして、悪女と見られることは「うれしい」とにっこり。「それだけ織田家としての威厳を五徳からも感じていただけているのかなと思うので、すごく光栄なことだと思います」と話した。

第22回「設楽原の戦い」では、信長が五徳に「今後、我らにとって最も恐るべき相手は徳川じゃ。この家の連中をよーく見張れ」と顔をわしづかみにしながら命令するシーンが描かれ、SNSでは「怖すぎる」という声が上がった。

久保自身も演じながら恐怖を感じたそうで、「『はい』と言うしかない気持ちは、あの場で岡田さんに引き出していただいたと思います」と感謝。そして、岡田について「リハーサルのときなどはものすごく優しい方で、あのシーンのときも『ごめんね』と言ってくださいましたが、現場に入るとすごく威厳のある敵わない存在だなと感じました」と語った。

織田方であると見られていた五徳だが、第24回「築山へ集え!」では、“慈愛の国”を目指す瀬名と信康の謀を聞いて「五徳は信康さまについていきます」と明言した。

「織田信長の娘というプライドを強く持っていたと思いますが、徳川家の皆さんと一緒に時間を共にしていくうちに、信康さまの妻であるというプライドも同じぐらい強く持つようになったと思っていて、『徳川家を見張れ』と言われたときは織田方に気持ちが寄りましたが、徳川家の家族の形に憧れを抱いたのだと思います。その中で身ごもって自分にも家族ができるとなったときに、自分の家族を守りたいという気持ちが強くなって決意が固まったのかなと思います」

また、五徳が徳川方に気持ちが動いた瞬間はいつなのかという話を現場でよく話していたそうで、有村を含めみんなの意見が一致したのが、第20回で家臣の看護をしない五徳に対して、瀬名が「そなたも三河のおなごであろう!」と叱責したシーンだったという。

「幼さやプライドで『織田信長の娘じゃ! 無礼者!』と言ってしまったけれど、『三河のおなごであろう』と言われたことが心に引っかかっていたような気がして、徳川家に嫁いだ女性としての意思が芽生えた瞬間だったと思うので、思い出深いシーンになりました」