第36期竜王戦3組昇級者決定戦(主催:読売新聞社)は、2回戦の中村修九段―黒沢怜生六段戦が5月24日(水)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、128手で勝利した中村九段が次回戦進出を決めました。

黒沢六段の5筋位取り中飛車

振り駒が行われた本局、先手となった黒沢六段は得意の中飛車に構えます。後手が角道を開けたタイミングで5筋の位を取ったのが工夫の駒組みで、いわゆる後手超速の急戦を警戒しつつ中央に銀を繰り出す狙いが見て取れます。これを受けた後手の中村九段は舟囲いを完成させたのち、袖飛車の要領で7筋からの動きを用意しました。

中村九段による7筋の歩交換を見た黒沢六段は「戦いの起こった筋に飛車を回れ」の原則通りの飛車回りで対応。すぐに角を引いて飛車交換を迫りました。押さえ込みを狙う中村九段がこれを拒否したことで盤上はジリジリとした第二次駒組みに移行します。この直後、中村九段が5筋に歩を合わせた局面が中盤におけるひとつの分岐点となりました。

代名詞の受けで中村九段勝利

中央での銀交換の展開を嫌った先手の黒沢六段は5筋の位を放棄して駒組みを続けますが、こうなれば後手の中村九段の主張が通った形。形勢は互角ながら中央の制空権を得た中村九段がペースをつかみます。平凡に指していては作戦負けと見た黒沢六段が1筋の端攻めから暴れたのに対し、中村九段は代名詞ともいえる丁寧な受けでリードを拡大しました。

手番を握った黒沢六段は飛車を犠牲に最後の猛攻に出ますが、中村九段の受けは一貫して冷静でした。後手陣への角成りを防ぐ金寄りが受けの決め手で、黒沢六段の攻めは完全に受け止められた格好です。終局時刻は20時8分、先手の攻めをいなしながらすばやい反撃を決めた中村九段が快勝。勝った中村九段は次回戦で大橋貴洸七段と対戦します。

  • 中村九段は自身の今年度初対局を勝利で飾った(写真は第79期順位戦B級2組のもの 提供:日本将棋連盟)

    中村九段は自身の今年度初対局を勝利で飾った(写真は第79期順位戦B級2組のもの 提供:日本将棋連盟)

水留 啓(将棋情報局)

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