2020年以降は半導体不足やコロナ禍のロックダウンも影響し、自動車メーカーも大幅な減産を余儀なくされていた。人気車種になると納期まで2年近く待たされるケースもあったが、これも改善の兆しを見せているようだ。しかし、コロナの次はロシアのウクライナ軍事侵攻が、食料やエネルギーの高騰、貿易や金融などの世界経済に影響を及ぼしている。

このような情勢で迎えた2023年、日本国内ではどんなクルマが売れたのだろうか? 自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)が発表した2023年2月の販売台数をもとに、ランキング形式で人気車種の特長を紹介する。

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【2023年2月】人気車種販売ランキング

順位 ブランド通称名 ブランド名 販売台数
1 トヨタ ヤリス 15,760
2 トヨタ カローラ 14,738
3 トヨタ シエンタ 11,767
4 日産 ノート 10,709
5 トヨタ ルーミー 8,645
6 トヨタ ヴォクシー 8,523
7 トヨタ ノア 8,518
8 トヨタ アクア 8,191
9 トヨタ ハリアー 7,843
10 トヨタ プリウス 7,681

※軽自動車および海外ブランド車を除く

1位:トヨタ「ヤリス」

国内ではトヨタの主力小型車だった「ヴィッツ」が、フルモデルチェンジを機に世界名称「ヤリス」に統一されてから早くも4年目。コンパクトカーとして初採用のTENGAプラットフォームにより、デザイン・走行性能・安全性といった自動車全体のトータルバランスは大きく引き上げられている。また、車体がひと回り大きく、見た目も異なるSUVタイプのバリエーションモデル「ヤリスクロス」も登場し、こちらも大ヒット。このほかにも、WRC(世界ラリー選手権)参戦のホモロゲーションモデルとして「GRヤリス」も加えられた。

「ヤリス」シリーズのエンジンは、TNGAに基づいて開発された3気筒1.5Lのダイナミックフォースエンジンとハイブリッド仕様。エントリーグレードには、中低速のトルクが充実した1.0Lも用意し、トヨタのコンパクトカーに恥じない優れた燃費性能と軽快な走りを実現している。また、プレミアムモデルである「GRヤリス」の4WDモデルには、200kW(272PS)を発生させる1.6Lターボが搭載された。

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2位:トヨタ「カローラ」

世界戦略車「ヤリス」とは別に、トヨタの小型乗用車として55年もの長い歴史を持つモデルが「カローラ」だ。ファミリーカーの主流がミニバンに移った時代には一気に数を減らし、小型セダンにこだわる高齢者向けのような存在になっていたが、12代目では3ナンバー化したTNGAプラットフォームによって完全復活を遂げた。デザインも大幅に変わり、精悍なキーンルックフェイスは若者受けもよく、世界累計販売は5000万台を突破している。

「カローラ」の魅力は、ハッチバック、セダン、ツーリングワゴン、SUVというように、さまざまな年齢層やライフスタイルに対応するボディや、これらに見合うエンジンのバリエーションを持っていることだ。2021年秋に発表されたシリーズ初のSUV「カローラクロス」も下馬評通りに大ヒットし、3気筒1.6Lインタークーラーターボで224kW(304ps)ものパワーを発揮する「GRカローラ」も登場した。なお、5ナンバーサイズの先代モデル「カローラアクシオ」と「カローラフィールダー」も販売が継続されている。

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  • トヨタ「カローラ」

    トヨタ「カローラ」

3位:トヨタ「シエンタ」

「シエンタ」は3列シートと後席スライドドアを備えたトヨタ最小のミニバンで、2003年の初代、2015年の2代目と、モデルチェンジのたびに大ヒットをしてきたモデル。2022年8月に登場した3代目も好調で、同じトヨタの「ヤリス」「カローラ」とトップ3を形成している。車格は扱いやすい5ナンバーサイズを継承しているが、デザインは大胆でスポーティだった2代目に比べると、初代に近いフレンドリーなものになった。

初代「シエンタ」が登場した時期は3列7人乗り小型ミニバンが流行し、ホンダや日産などのライバルメーカーも同様のパッケージを持つモデルをリリースしていた。しかし、実際には7人乗る機会は少ないため、5名乗車時の快適性や、ラゲージスペースの容量と利便性を求める声が多かったようだ。そのため、3代目では2代目の途中で追加した5人乗り仕様「FUNBASE」を吸収し、全グレードで2列5人乗り仕様が選択可能になっている。

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  • トヨタ「シエンタ」

    トヨタ「シエンタ」

4位:日産「ノート」

電動化という時代の追い風を受け、トヨタのトップ3台を追っているのが日産の3代目「ノート」。独自の「e-POWER」は、走行を完全に電動モーターで行い、搭載しているガソリンエンジンは発電のみに用いるというシステムだ。進化した第二世代では、エンジン始動をロードノイズの大きなタイミングで行うように制御して、静粛性をさらに向上させている。

発進時や中間加速の力強さと、アクセルオフで減速するワンペダル・コントロールなど、電動車ならではのメリットと新鮮なドライビング感覚が特長的な「ノート」だが、日産自慢の「プロパイロット」や「360°セーフティアシスト」、地図情報をもとに車速をコントロールする「ナビリンク」といった高度な運転支援システムも充実している。また、2021年の8月にはボディを3ナンバー化した上級モデル「ノート オーラ」も追加された。

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5位:トヨタ「ルーミー」

「ルーミー」の登場は2016年だが、細かなマイナーチェンジを続けながらランキング上位の常連となり、2022年4月には首位に立った超ロングセラーモデルだ。ベースはトヨタの子会社であるダイハツが設計した小型ハイトワゴン「トール」のOEMで、同社が軽ワゴン開発で培ってきたノウハウにより、全長約3.7mというコンパクトなボディに広大な室内スペースを確保している。

駆動方式はFF以外にも4WDを揃えているが、エンジンは3気筒1.0Lの1本で、価格も軽自動車並みの150~200万円台に抑えられている。派手な見た目や仕掛けはないが、運転のしやすさはもちろん、衝突警報や誤発進抑制、全車速追従機能付ACCといった標準的な安全性能を装備しており、こういった買いやすさと安心感もベストセラーの秘密だろう。

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依然としてトヨタの強さが続く中、日産の「ノート」が孤軍奮闘

2023年2月のトップ10は9台がトヨタを占めるなか、他社は長年上位に食い込んでいる日産「ノート」のみという結果になった。ただ、「ヤリス」や「カローラ」がSUVやGRといったバリエーションを持つことを考えれば「ノート」は大健闘といえる。しかし、ハイブリッドの代名詞であり、かつての王者「プリウス」も1月にモデルチェンジしてトップ10に滑り込んできた。本命といわれるPHEVも3月に発売されたので、こちらも注目したい。

また、昨年はトヨタ「ヴォクシー」と「ノア」、ホンダ「ステップワゴン」、日産「セレナ」と、各社の中型ミニバンがフルモデルチェンジをしたが、トップ10にはトヨタの2モデルがランクイン。3ナンバーのTNGAプラットフォームに最新のハイブリッドシステムや安全機能を備えたことで、先代モデルから大幅に完成度を高めている。

このほか、トヨタの人気モデルでは6月ごろに「アルファード」のモデルチェンジが噂されている。現状でも高級ミニバンの中では独り勝ちだが、こちらもトヨタの最新技術をすべて注ぎ込まれるはずで、再びトップ10の上位に入ってくることは間違いないだろう。元祖高級ミニバンの日産「エルグランド」も今年中のフルモデルチェンジが予想されているが、つけ入る隙はあるだろうか。

最後に、軽自動車の「N-BOX」が乗用車全体の新車販売で首位に返り咲いているものの、「フリード」や「フィット」がトップ10落ちしたホンダも気になるところ。モータースポーツでの華々しい活躍や、その技術をフィードバックしたスポーツカーのほか、初代「オデッセイ」や「ステップワゴン」など革新的なモデルを次々に繰り出していた時代があった。それを知る人たちは、ぜひ巻き返してもらいたいと思っているはずだ。

※ブランド通称名とは、国産メーカーの同一車名を合算したものであり、海外生産車を含む
※上位台数は車名別の合算値となり、一部教習車などを含む(例:ブランド通称名 カローラはカローラシリーズ全車種と教習車を含む)