民放キー5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)の4月改編情報が10日、出そろった。引き続き、ドラマ枠の新設が行われるほか、各局が注力するクリエイター育成・コンテンツ開発のトライアル枠強化では成果も出始めた。各局の改編説明会から、この4月編成の動向をまとめた。

  • 民放キー5局

■日テレ、テレ朝、フジでドラマ新枠

近年、配信視聴の増加やストックコンテンツとして価値が見直されることで、各局が連続ドラマ枠を増やしているが、この4月改編でもその傾向が続いている。

日テレは、金曜に18歳以上の大人女性層をメインターゲットにした“DEEPなドラマ”をラインナップする『金曜ドラマDEEP』(金曜24:30~)を新設し、第1弾として稲森いずみ主演の『夫婦が壊れるとき』を放送。木戸弘士編成部長は「ドラマというジャンルはプラットフォーム、コンテンツメーカーにおいて非常に重要なジャンルというところもあり、提供される作品の数も増えている傾向があります」と現状認識を示した上で、「リアルタイム視聴以外においても、やはりポテンシャルの強いジャンルだと思っておりますので、そういったところをにらんで新しい枠を開設します」と狙いを語る。

  • 『金曜ドラマDEEP』第1弾の『夫婦が壊れるとき』 (C)NTV

昨年4月改編で水曜22時、同10月改編で火曜深夜『火曜ACTION!』、そしてこの4月改編で火曜23時『火ドラ☆イレブン』(カンテレ制作)と、半年ごとに枠を増やしているフジ。中村百合子編成センター室長兼編成部長は「(GP帯の自社制作枠が)月9・水10・木10と3枠になったことによって、フジテレビのドラマ全体の配信の結果が顕著に出ております。昨年AVOD(広告付き動画配信)三冠(再生数、UB=ユニークブラウザ数、総視聴時間)となったのは、ドラマ枠が増えたことで戦略的に3枠のカラーを異ならせることによって、様々な視聴者の皆さまに見ていただけた結果だと捉えております」と分析した。

  • 『火ドラ☆イレブン』第1弾の『ホスト相続しちゃいました』』 (C)カンテレ

テレ朝は、日曜22時台にABCテレビ制作の新枠を設置し、第1弾として清野菜名主演の『日曜の夜ぐらいは...』を放送。日曜のGP帯は、「大河ドラマ」(NHK)、「日曜劇場」(TBS)、「日曜ドラマ」(日テレ)とドラマがひしめき合っているが、奥川晃弘総合編成部長は「日曜の夜という明日から1週間が始まる中で活力になるような作品を期待しての編成となっております」と語っている。

  • 『日曜の夜ぐらいは...』 (C)ABCテレビ

深夜帯を中心に最も多くのドラマ枠を持つテレ東の平山大吾編成部長は「IP(知的財産)やコンテンツを持つという上で、ドラマというのはやっぱり大きいと思います。『孤独のグルメ』はシーズン10まで行っていますし、テレビ東京のイメージでアンケートを採るとブランドイメージとして非常に大きいんです。今回もかなり意欲的な作品が並びましたし、切り口も新しいものがいろんな方向になっています。大きな面でやるといろんなドラマができるので、やはり数をこなすというのが非常に大事だと思っています」という姿勢。

また、『孤独のグルメ』に『勇者ヨシヒコ』『モテキ』など、深夜ドラマをけん引してきた自負がある中で、近年各局でも注力していることを受け、「枠(の数)を持っているということで、深夜ドラマ=テレビ東京ということを謳っていければと強く思っているので、ドラマ室と協力しながら、配信を念頭に置いたドラマというのも常に意識しているので、広がりある作品になっていくと面白くなると思っています」と、引き続き深夜ドラマをリードしていく意欲を示した。

■視聴ターゲット変化…枠刷新に長期シリーズ終了も

配信視聴やコアターゲット(13~49歳など)を重視する流れがある中で、かつて唯一の番組指標だった“世帯視聴率”を支えてきた視聴者層がメインのドラマは、曲がり角を迎えている。

テレ東は、これまでベテラン俳優の主演による刑事ドラマを多く編成してきた『金曜8時のドラマ』枠を、若い層にも視聴ターゲットを広げる『ドラマ8』に刷新。主演を30~40代中心とし、第1弾は福士蒼汰主演の『弁護士ソドム』を放送する。平山部長は「やはりゴールデン編成を重視しているので、この金曜8時のドラマ枠が今までと方針が変わるということが、分かりやすく見えるほうが面白いのではないかと考えています」と話す。

  • 『ドラマ8』第1弾の『弁護士事務所』 (C)テレビ東京

テレ朝は、昨年10月改編で様々な刑事ドラマを生み出した『木曜ミステリー』枠を終了すると同時に『火曜ドラマ』枠を設置し、現在は吉高由里子主演の『星降る夜に』、4月期は高畑充希&田中圭の『unknown』を放送。レギュラー枠以外を見渡しても、この3月で『赤い霊柩車』シリーズ(フジ)が、昨年12月で『終着駅シリーズ』『西村京太郎トラベルミステリー』(テレ朝)と、いわゆる「2時間ドラマ」の専門枠が廃止された後も続いていた長期シリーズが幕を下ろしている。