少子化問題が叫ばれて久しいですが、収入が思ったように増えない中で、子育てにかかる費用は膨らむばかり。産んで育てるハードルが徐々に高くなっているように思います。では実際に出産から大学卒業まで、どのくらい費用がかかるのでしょうか。複数のデータをもとにして総額を計算してみました。公立と私立の場合の比較なども載せているので参考にしてみてください。
■妊娠・出産の費用
妊娠中は、妊婦健診を定期的に受ける必要があります。個人差や地域差がありますが、14回が目安。費用は自治体からの助成があり、それを超える場合は自己負担となります。
では次に、出産費用をみてみましょう。
2020年(令和2年度)の公的病院の平均出産費用(室料差額等除く)は45.2万円、全施設の平均出産費用は46.7万円(室料差額等除く)となっています(※)。
・公的病院の平均出産費用……45.2万円
・全施設の平均出産費用 ……46.7万円
※厚生労働省「出産費用の実態把握に関する調査研究(令和3年度)の結果等について」より
出産育児一時金
前述した妊娠・出産にかかわる経済的負担を軽減するため、健康保険や国民健康保険などから出産育児一時金が支給されます。支給額は、一児につき42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関などで出産した場合は40万8000円)が支給されます。
・出産育児一時金……原則42万円
出産費用は出産育児一時金によって多くはカバーできますが、年々増加傾向にあります。そこで、政府は2023年4月から出産育児一時金を50万円に増額することを決めています。8万円引き上げられることで、だいぶ負担が軽減されるでしょう。
■0歳から中学卒業までの子育て費用
子育て費用は大きく分けて、「養育費」と「教育費」に分類できます。
「教育費」は、授業料や入学金などの学費にあたる「学校教育費」、塾代や教材費、家庭学習のための費用などの「学校外教育費」、塾以外の習い事費用などの「学校外活動費」を合わせた費用です。一方、「養育費」は、教育費以外の食費や被服費、生活用品費など、子どもの日々の生活でかかってくる費用です。
ここでは、養育費と教育費に分けて、0歳から中学卒業までの費用をみてみましょう。
●0歳から中学卒業までの養育費
●幼稚園から中学校までの教育費
養育費にそれほど大きな違いはないと思いますが、教育費は公立に進むか、私立に進むかで、かかってくる費用に大きな差が出ます。幼稚園から中学まですべて公立の場合の教育費の総額は420万1085円ですが、すべて私立の場合は1522万8101円となります。
■高校3年間の子育て費用
続いては、高校時代にかかる費用をチェックしていきます。
●高校3年間の養育費
養育費を参照した、内閣府「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査」は中学3年生までの調査データとなっています。そこで、本記事では養育費に関して、中学3年時と高校の3年間でそれほど違いはないとみて、95万7853円(中学3年生の子育て費用総額から教育費を除いた額)の3年分を高校3年間の養育費としています。
95万7853円×3年間=287万3559円
・高校3年間の養育費……約287万円
●高校3年間の教育費
教育費の総額は、公立の場合は154万3116円、私立の場合は315万6401円となりました。私立は公立の約2倍の費用かかっていることがわかります。
■大学4年間の子育て費用
ここからは大学に進学したらいくらかかるのかみていきましょう。
●大学4年間の養育費
大学4年間の養育費は、日本学生支援機構(JASSO)「令和2年度 学生生活調査結果」の生活費を参照しました。
<大学4年間の生活費総額>
出所:日本学生支援機構(JASSO)「令和2年度 学生生活調査結果」をもとに筆者作成|
自宅から大学に通う場合と、アパートなどを借りて大学に通う場合とでは、生活費は大きく変わってきます。自宅生(154万6000円)と下宿生(443万3600円)とでは生活費がおよそ3倍違うことがわかります。
●大学4年間の教育費
文部科学省の資料から、国立大学の学費と私立大学の学費を参照して表にしました(※授業料と施設設備費の4年分に入学料を足した金額)。国立の場合242万5200円、私立文系の場合407万1377円、私立理系の場合550万7207円というように、進学先の学部によっても費用は異なってきます。
■子ども1人あたりの子育て費用総額
ここまで、養育費と教育費に分けて、0歳から22歳(大学卒業)までの費用を出しました。それぞれの総額を計算してみましょう。
●養育費の総額
0歳から中学卒業までの養育費……1298万3523円
高校3年間の養育費……287万円
大学4年間の養育費……265万7200円(平均)、154万6000円(自宅生)、443万3600円(下宿生)
<0歳から22歳までの養育費総額>
●教育費の総額
教育費は、進学コース(公立/私立)によって異なってきます。いくつかのパターンを作ってみたので参考にしてください。
<0歳から22歳までの教育費総額>
これ以外にもさまざまなパターンがあります。お子さまの進路にあわせて総額を計算してみてください。すべて公立だった場合とすべて私立だった場合を比べるとおよそ3倍の差があることがわかります。
また、養育費と教育費を合わせれば、子育て費用の総額が出ます。養育費を約2000万円とすると、子育て費用は1人あたり2800万円~4400万円になります。医学部や歯学部など、進路によってはさらに多くの費用がかかることも。
子ども1人でこの金額となると、2人目、3人目を躊躇してしまうケースは容易に想像できます。幼児教育無償化や出産育児一時金の増額など、政府は子育て費用の軽減策に取り組んでいるようですが、さらに思い切った策を打ちださないと少子化は止まらないのではないでしょうか。