――昨今は、人を“資産”ではなく“コスト”と考える風潮があります。そんな中で“人は資産”という言葉は強烈なアンチテーゼになるのではないかと思うのですが、どうでしょう?

僕はそこまで友達が多いほうではありません。でもだからこそ、「この人はファミリーだ」と思う人たちをとても大切にしています。今はデジタルの時代ですが、やっぱり僕は人とは会って、対面で話さないと腹の底は伝わらないと思っています。結果とか数字というものは当然、起業としては大事です。だとしても僕は、それ以前の過程での熱量とか、人と人との間に生まれるエネルギーみたいなものを大事にしたいし、大事にしてきたからこそ、今回の大陽の役柄が来たのではないかとさえ思います。結局、人を動かすのは“人”。人って本当に大切なんです。

――それを聞いて以前、中井貴一さんから伺った話を思い出しました。中井さんは「役者というものはどれだけデジタル化が進んでいってもアナログな職業なんだ」と。アナログを強く意識しているからこそ、中井さんはあれだけ素晴らしい演技を見せられるのではないか。それと似た感覚を竜星さんにも感じたのですが。

そうですね。どう自分の本心に向き合うか。この作品で言えば、大陽も起業して結果や数字を出すというより、人を立ち上がらせ、自分と向き合うことを重視し、そこから「変わろう」という意思を導き出している。そこから出たその人の「答え」を、(自分の考えの押し付けではなく)受け止めるというのが大陽という人物ですので、お芝居の上でも、そうしたアナログで泥臭い相手への向き合い方を大事にしたいと思っています。

■若い頃は人のせいにしていた自分がいた

――竜星さんは元々はパティシエをされていました。そこから役者へとリ“スタート”されたわけですが、そこに葛藤や不安はなかったのでしょうか。

もちろん不安は必ず出てきますし、若いときは早く売れたい、早くいろんなことをやりたい、俺はやってやるぞと意気込んでいて、それがうまくいかないとどんどんすり減っていく自分がいました。オーディションに落ちたときも、悔しがっていた20代があったおかげで、今はちゃんと自分の負けを認められるようになった。人のせいじゃなく、自分のせいなんだ、と。そんな自分を振り返って現在の自分と向き合ったとき、まずは自分の格好悪さを認めることが、新しいスタートに立つ上で重要なのではないか、という考えに至っています。

――では、最後に視聴者へメッセージをお願いします。

見てもらったらスッキリしてもらえるような痛快なドラマになっていると思います。もし現状に満足してない人がいらっしゃったとしたら、ここから「変わってみよう」と背中が押せる作品になっていると思いますので、ぜひご覧ください。

  • (C)フジテレビ

●竜星涼
1993年生まれ。2010年にドラマ『素直になれなくて』(フジテレビ)で俳優デビューし、13年に『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日)でドラマ初主演を務めて以来、幅広く活躍。主な出演作に映画『orange -オレンジ-』『シマウマ』『君と100回目の恋』『先生! 、、、好きになってもいいですか?』、ドラマ『小さな巨人』『ひよっこ』『アンナチュラル』『昭和元禄落語心中』『テセウスの船』『ちむどんどん』など。長身を生かしたモデル活動にも積極的で、パリ・コレクション、ミラノ・コレクションなど日本に留まらない活躍を見せている。