茨城県水戸市に本拠地を置くサッカーJ2・水戸ホーリーホック。クラブエンブレムに水戸徳川の家紋・三つ葉葵を採用するなど、水戸学という歴史があるほど教育熱心な土壌に準ずるかのように、同クラブも“人材育成”に力を入れている。「オフザピッチでも通用する人材を」というクラブ理念について、水戸ホーリーホック社会連携担当・選手教育担当の中川賀之氏と、同クラブに所属するゴールキーパー山口瑠偉選手に話を聞いた。

  • 水戸ホーリーホックの山口瑠伊選手(左)と社会連携担当・選手教育担当の中川賀之氏

水戸ホーリーホックは、「多様性」「交流」というキーワードで、所属選手のプロアスリートとしての人間的成長をサポートし、社会に貢献できる人材を育てるための研修プログラムを導入するなどの試みを行っている。

こうした試みの根幹をなしているのが「人・街・クラブ」という3つが相乗効果で成長していくという考え方。中川氏は「クラブがこうした活動を始めたきっかけは、ゼネラルマネージャーである西村卓朗という人間が、水戸ホーリーホックに加入してからです」と語る。西村氏の考えとは「オンザピッチだけではなく、オフザピッチでも人間として大切なものは何か、何のためにサッカーをやっているのか」ということを常に選手たちに問いかけることだという。

こうした考えのもと、水戸ホーリーホックは、「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」のプログラム「make value project」を導入した。中川氏は「これまでも、サッカー以外の業種の方々の日常を経験するなど、さまざまな取り組みを行ってきました。こうした活動によって、多様な価値観が育ち、人間力を高めることがきる。そうすることでサッカーというスポーツの価値向上はもちろん、地域活性化、さらには社会貢献にもつながる」と語る。

さらに、広い視野を持つことで、サッカー選手としての活動を終えたあとのセカンドキャリアにも大きな影響が及ぶという。中川氏は「現役時代にこうした活動を行うことで、アスリートを引退したときに、人間的な貯金ができているので、そこからまた大きく羽ばたくことができる」と断言する。

■山口瑠伊選手がルイ・ヴィトンのインターンに参加

これらの研修を受け、上記のような効果を実感しているというのが、水戸ホーリーホックに在籍している現役ゴールキーパーの山口瑠伊選手だ。

「僕は海外でいろいろなチームを少し回ってきたのですが、なかなかこういう取り組みをしているクラブはないですね。サッカー以外のところで、いろいろな教育をしてくれるクラブは初めてでした。日々ピッチ以外のところでいろいろなことを学んでいます」

そんな山口選手は12月に、ルイ・ヴィトンが近年社会課題化しているアスリートのセカンドキャリアへの取り組みとして行ったインターンに参加した。

世界一流のラグジュアリーブランドであるルイ・ヴィトンの店舗で、朝礼からブランドに関する講義、製品の扱い方、さらには接客のサポートまでを経験した。

山口選手は「本当にすごかったです。最初は超一流ブランドの店舗と言うことで、ピリッとしているのかなと思ったのですが、皆さんとても明るくて、楽しく取り組んでいました。あとは皆さんルイ・ヴィトンに対する愛情がすごい。それがすごく伝わりました。僕もサッカーをやっている中で、夢中になることの大切さみたいなものは、ファンにもチームメイトにもしっかり伝えていきたいなと思いました。また製品の置き方一つでも、ディテールにこだわる方々を目の当たりにして、ゴールキーパーとしてフィールドの選手への指示の出し方なども、しっかり見直していこうと思えるようになりました」と感想を述べる。

  • ルイ・ヴィトンのインターンに参加した山口瑠伊選手 (C)LOUIS VUITTON