前回、確定申告書の書き方について説明しましたが、会社員など確定申告に慣れていない人のなかには「やっぱり難しそう」などと思う人もいるかもしれません。そのような人は、スマホで確定申告をするのがおすすめです。

スマホを使った確定申告は2019年から開始されていますが、2022年の確定申告ではスマホで確定申告できる範囲が増え、使いやすさも向上しています。とはいえスマホで確定申告するには事前に準備しておくものもあり、どのような場合でもスマホ申告ができるわけではありません。そこで本記事では、スマホで確定申告をするための基礎知識について説明するとともに、スマホを使った確定申告のやり方を紹介します。

  • スマホで確定申告するには?

●スマホで確定申告をするには

そもそも確定申告は、e-Taxといって申告書の記入(入力)から申告書類の提出、納税に至るまでオンラインで行うことができます。こうすることで、紙の確定申告書への記入や源泉徴収票などの必要書類の提出を省略できるなど、紙媒体での確定申告に比べて手続きが楽になります。

このe-Taxはスマホからも行うことができますが、申告できる所得や方式が限定されており、すべての場合でスマホによる申告ができるわけではありません。そのためまずは自分がスマホによる確定申告の対象になっているかどうか確認することが必要です。

2019年(2018年分所得)にスマホ申告が導入されて以降、年々申告できる対象範囲や利便性が向上していますが、2022年(2021年所得分)ではさらには対象が拡大し、スマホ申告を利用しやすくなりました。

・2022年(2021年所得分)からスマホで確定申告できる人

次の所得および所得控除を申告する人はスマホで確定申告をすることができます。

  • スマホ確定申告をできるか対象となる所得・所得控除を一覧でチェック

これを見てわかるように、個人事業主やフリーランスとして事業所得を得ている人や家賃収入など不動産所得がある人などは基本的にスマホで申告をすることはできません。

・確定申告に対応しているスマホ機種

スマホで確定申告するためには利用している機種が確定申告に対応していなければなりません。後述しますが、「ID・パスワード方式」と「マイナンバーカード方式」の2種類のやり方があり、このうちマイナンバーカード方式の場合には、マイナポータル(アプリ)に対応している機種でることが必要です。

マイナポータルのサイトによると、2022年1月4日現在で「Android」は合計343機種、「iOS」はiOS 13.1以上がインストールされたiPhone 7以降の機種で対応しています。自分のスマホが対応しているかどうかわからない人は、具体的には国税庁のサイトで確認してみましょう。

参照:マイナポータル「マイナポータル(アプリ)に対応しているスマートフォン等を教えてください。」

・スマホで確定申告するために必要なもの

スマホで確定申告をする場合、スマホはもちろん申告する内容を確認するための書類等を手元に準備しておくことが必要です。申告する内容や申告方式によって必要書類が異なりますが、たとえば次のようなものがあります。

【マイナンバーカード】

マイナンバーカード方式を利用する際はマイナンバーカードが必要です。なお、ID・パスワード方式の場合にも申告時にはマイナンバーの入力が必要です。マイナンバーカードを所有していない場合は通知カード等マイナンバーがわかるものを用意しておきましょう。

【源泉徴収票】

給与所得者は給与支払額や源泉徴収額を申告するために必要です。2022年からはスマホで撮影すれば自動入力され、自分で入力する必要がなくなります。

【領収証・控除証明書など】

申告する所得控除を確認するための領収書や控除証明書等を用意しておきましょう。

医療費の領収証は提出する必要はありませんが、「医療費控除の明細書」を作成するために必要です。なお、マイナポータルと連携して利用する場合、2021年9月~12月分の医療費情報はマイナポータルより取得可能になります(2023年確定申告からは1年分の取得が可能になる予定)。

また、生命保険料控除はすでにマイナポータル連携の対象ですが、2022年からは「ふるさと納税」、「地震保険料控除」も連携対象となります。連携することで控除証明書のデータを確定申告書に自動入力できるようになり便利です。

【特定口座年間取引報告書】

特定口座で取引している上場株式等の譲渡所得や配当所得を申告する人は、証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」が必要です。マイナポータル連携で取得したデータを利用することも可能です。

また、証券会社から受領した特定口座年間取引報告書のXMLデータを取り込むことも可能です。この場合には自分が取引している証券会社がマイナポータル連携に対応していることが必要です。詳しくは証券会社に確認してみましょう。

【ID・パスワード】

「ID・パスワード方式」でスマホ申告をする人は、e-TaxにログインするためのIDとパスワードを事前に税務署から発行してもらっておかなければなりません。発行してもらうためには運転免許証などの本人確認書類を税務署に持参し、発行依頼します。その場でIDとパスワードを発行してもらえます

●確定申告のやり方

初めてスマホで確定申告を行う場合、基本的に「(1)事前準備」、「(2)収入・所得金額の入力」、「(3)控除の入力」、「(4)その他の入力」、「(5)計算結果の確認」、「(6)申告書提出」の流れで行っていきます。

(1)事前準備

事前準備は次の手順で行いましょう。

1.申告書作成前の画面で申告方式を選択する

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、「作成開始」をタップします。申告内容に関する質問が表示されますので順次答えていきましょう。最後に申告方式(マイナンバーカード方式、ID・パスワード方式)の選択を求められますので、自分が行う方式を選びます。

2.マイナポータルアプリをインストール

マイナポータル アプリ をインストールします。インストールした後は、利用規約を確認したうえで、「同意して次へ」をタップし次に進みます。

3.マイナンバーカード読み取りまたはID・パスワードでログイン 「マイナンバーカード方式」の場合には、マイナンバーカードを読み取ります。「マイナンバーの読み取り」をタップしましょう。 「ID・パスワード方式」の場合には、ID・パスワード方式の届出完了通知に記載されている利用者識別番号を入力してe-Taxにログインします。

(2)収入・所得金額の入力

自分が申告する収入・所得金額を指示に従い入力していきます。給与所得の人は、源泉徴収票をスマホで撮影すると自動で内容が取り込まれ、入力の手間を省略できます。

(3)控除の入力

医療費控除や寄附金控除(ふるさと納税)など、自分が申告する所得控除を指示に従い入力していきます。このとき、源泉徴収票に記載されている控除(社会保険料控除や生命保険料控除など)は金額が表示されます。金額が表示されていない所得控除で申告するものがあれば自分で入力しましょう。

(4)その他の入力

予定納税額や繰越損失などを申告する必要がある人は、各項目を入力していきます。その後、住民税等に関する事項および16歳未満の扶養親族の氏名・続柄・生年月日などの情報を入力します。

(5)計算結果の確認

これらの入力がひととおり終わった後に計算結果が画面に表示されます。還付金がある場合には、振込先の口座情報を入力します。

(6)申告書提出

最後に申請書を提出します。e-Taxで提出する場合、「送信前の申告内容確認」画面で間違いをしていないか確認し、指示に従い送信します。「送信に成功しました」のメッセージが表示されれば送信は完了です。入力ミスなどで内容を訂正したい場合には、指示に従い訂正画面に戻りましょう。訂正後はこれまで行ってきた確認→送信の手順を繰り返します。

すべての手順が終われば、「受付結果を確認する」をタップし、申告データが正常に受け付けられたことを確認しておくことをおすすめします。

また申請書は印刷して書面で提出することもできます。画面上にある「帳票表示・印刷」をタップしましょう。データ送信する場合でも控えとして印刷・保管しておくのもいいでしょう。

●忙しい社会人でもスマホで確定申告がしやすくなった

今回、スマホで確定申告をする方法について説明しました。スマホで確定申告できる対象が広がり、これまでe-Tax(オンライン確定申告サービス)を利用するためにパソコンが必要だったものでも今年からはスマホでできるようになったものもあります。スマホでの確定申告は、画面の指示に従い進めていけばいいので初めての人でもわかりやすいメリットがあります。また、確定申告期間中は24時間利用できるため忙しい社会人でも確定申告がしやすく便利です。今年の確定申告はスマホでの申告をしてみてはいかがでしょうか。