日々の生活を送っていくのも大変なのに、老後資金まで準備できない……多くの人が抱えている本音ではないでしょうか。この点、ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さんは「投資は早くから始めたほうがいいけれど、老後を見据えた守りの資産作りは50代からでいい」と話します。

今回は、新著『「投資をしたことがないけれど、このままで本当に大丈夫?」と思ったら読む 絶対に損をしないお金の増やし方』を出版した坂本さんに、年代別の投資の基本的な考え方や、長期投資で大切なポイントについて伺いました。

■40代はまだ若い! 守りに入るのは50代から

――20代・30代のそれぞれの年代に適した資産形成の方法について、基本的な考え方を教えてください。

20代や30代って転職や結婚、子どもの誕生、住宅購入など、まだライフプランがかなり不確実なので、状況に合わせて積立額を調整できるといいですね。その点、つみたてNISAは途中で売ることもできるし、その年だけ積立をしないという選択肢もとれるので、活用しやすいでしょう。

あとは20代だったら、その人の考え方にもよりますが、投資におけるリスクは高く取ってもいいと思います。例えば投資信託だったら外国株式の割合を高くするなど、攻めてみてもいいのではないでしょうか。一時的に損失が出ても、その先の人生が長いですから取り戻せます。

30代は40代の手前で、いろんなライフイベントが増えてくる年代です。直近で必要なお金を確保するために、円預金の比率もある程度増やしていった方がいいので、投資とのバランスを取ることが重要です。

――40代・50代はいかがでしょうか?

40代もまだ60代まで約20年ありますよね。現預金がある程度あり、安定したお勤め先の方であれば、まだ守りに入るほどではありません。株式を中心とした運用を継続しても大丈夫です。

守りを固めていくのは50代ですね。50代に入ると「ねんきん定期便」で年金額の目安がわかってくるので、必ずチェックしておきましょう。収入が増えて順調に資産も増えているようだったら、例えばつみたてNISAだけでなくiDeCoも始めてみるとか、老後の必要資金も見据えていけるといいと思います。

――40代でも株式を中心にした運用をしても大丈夫と言っていただけると心強いです。

40代ってまだ若いですから、気持ちが"老後"に十分向いてない方も多いですよね。なんとなくうっすら見えるんだけれども、まだ自分事として捉えられないっていうような。老後のことを本格的に考えるのは、50代からでよいでしょう。

40代は50代に比べればまだ投資の時間が残っているので、ある程度リスクを取った投資を続けても問題ないですよ。

■長期投資で大切なのは慌てて売ってしまわないこと

――2022年の株式相場は軟調で、急激な下落もありました。不安を感じる方も多いようですが、このような状況で心がけておくべきことは?

そもそも株は上がったり下がったりするものなんですよね。まずはそれを受け入れることが重要です。逆に言うと、もし下がったところで上手に買えれば、のちのち大きな利益が出ます。

あとは長期の株価チャートを眺めることもおすすすめです。過去10年のくらいのチャートを見ると、下がった後には上がっていることが分かります。

そういう値動きを見て"また上がるから大丈夫"と考えることでメンタル面も強くなります。とにかく、短期的に値下がりしたところで絶対に売らないということを心に決めましょう。

■年代が移り変わったら投資の仕方も徐々に変えていく

――30代から40代へ、40代から50代へと年代が移るにつれ、投資の方法も変えていったほうがよいでしょうか?

過去の運用成績に不満があるとか、例えば投資信託で新しいものが出て信託報酬が低いとか、そういったケースが考えられますね。つみたてNISAでそのような場合は入れ替えてもいいですが、新規で買う分を新しいものにするだけでいいと思います。つみたてNISAは売っちゃったらもうそれで投資枠がなくなってしまいますから、積み立てたものをわざわざ売るのはもったいないですね。

iDeCoの方は口座の中でスイッチングができるので、過去に積み立てた分も一度売って別の商品に買い替えることができます。

――iDeCoでたとえば50代になってきたから、株中心のファンドはちょっと売って、債券とかリスクが低い方の配分を増やすというようなことをやってもいいんでしょうか?

はい、まったく問題ありません。むしろiDeCoは50歳を過ぎたらそういうことを実践してもらいたいです。ただそのタイミングがなかなか難しいんですよね。私もiDeCoでアメリカの株が上がったときにもうこれ以上は上がらないかもと思って、一部利益確定で売ったらその後また上がってしまいました。

だから一度に全部売らないことも大事で、"1回あたり4分の1ずつ売る"というのも手ではないでしょうか? 60代になって貯めたお金を使い始める寸前で株価がリーマンショックのときのように落ちるのは心配だと思うので、少しずつリスクを少なくしていくのは重要ですね。

『「投資をしたことがないけれど、このままで本当に大丈夫?」と思ったら読む 絶対に損をしないお金の増やし方』(坂本綾子 著/CCCメディアハウス 刊)

40代、貯金なしでも老後の2,000万円、貯められます!投資を始めるには、何をどうすればいい?「つみたてNISA」と「iDeCo」、どちらがおすすめ?ロボアドに投資をまかせても大丈夫?勤務先に持株会があるけれど、利用したほうがいい?投資初心者でも、投資信託を選ぶことができるようになる?……いまさら聞けない、投資の超基本的なことをお伝えします。

坂本綾子

ファイナンシャルプランナー。1988年よりマネー誌、女性誌にて家計管理や資産運用の取材記事を執筆。1000人以上に取材。99年ファイナンシャルプランナー資格取得。2010年ファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所設立。20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。著書に、ベストセラーとなった『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』 (朝日新聞出版)、『まだ間に合う! 50歳からのお金の基本』(エムディエヌコーポレーション)などがある。