2020年春以降のコロナ禍で大打撃を受けたクルーズ業界だが、昨年夏頃から徐々に運航が再開され、すでに世界の来年の人気クルーズ船は予約で埋まりつつあるという。今年9月、クルーズ業界でもラグジュアリー客船の最高峰として知られる「リージェント セブンシーズクルーズ」で、イスタンブールからアテネまでのエーゲ海クルーズを体験する機会に恵まれたので、ご報告したい。

  • ワンランク上のラグユアリー体験ができるリージェント セブンシーズクルーズ

リージェントってどんな船?

クルーズ未体験者のためにサッと世界のクルーズ客船のご紹介から。世界には、プラネタリウムや波乗りプール、スケートリンク、観覧車などのアミューズメント施設を備えた5,000人以上収容の巨大客船から、1人のゲストに対し接客スタッフが3名もつくような、超ラグジュアリー仕様の小型~中型クルーズ船まで、目的に合わせて実に多様な客船が存在する。船のカテゴリーも料金や設備のランクで、スタンダード、プミアム、ラグジュアリーと分かれている。

  • セブンシーズエクスプローラーのロゴ

その中でも、「リージェント セブンシーズクルーズ」といえば超のつくラグジュアリー船だ。9月に乗船したセブンシーズエクスプローラーは、イスタンブールからアテネまで10か所に立ち寄り11泊で1部屋100万円を超えていた。驚くべきことに、ゲストの6~7割はリピーターで、世界の各地をいろいろなクルーズで回ってみて、リージェントの旅が気に入り、最終的にこのリージェントを毎回選んでいるという人が多かった。

  • 華やかな印象のメインロビー

リージェント セブンシーズクルーズは、米国フロリダ州に本拠をおくクルーズブランド。現在は米国の三大クルーズ会社のひとつ、ノルウェージャンクルーズライン・ホールディングス(NCLH)の傘下となっている。2023年秋にデビューする新造船「セブンシーズグランデュアー」を含め、スプレンダー、エクスプローラー、ボイジャー、マリナー、ナビゲーターと6つのシップをもつ。

  • スイミングプールは塩水

  • ほとんど人が来ない隠れ家的な場所もある

「セブンシーズエクスプローラー」は総トン数5万125トン、全長224m、幅31m、乗客定員732名/乗組員数567名、全366部スイート、就航2016年。中型船ではあるが、航海中はほとんど揺れを感じることはなった。2018年に他の中型船に乗った時は、ひどい船酔いをしたので実は心配していたが、杞憂に終わった。また筆者が旅した9月前半は、ゲストの密を避けるために、約半数の乗客に制限していたようだった。

  • サントリーニ島に停泊

最大の魅力は、寄港地観光ツアーも選び放題のウルトラ・オールインクルーシブ!

なぜ、このリージェントのゲストに旅慣れたリピーターが多いのか、実際乗船してみてよく理解できた。その大きな魅力を挙げてみる。

  1. 全室がバルコニー付きのスイートルーム
  2. 食事、お酒、チップ、ランドリー、寄港地観光ツアーすべてが料金に含まれること
  3. 観光地ツアーのコンセプトが素晴らしく、種類も多くレベルが高い
  4. レストランは7つ。極上のサービスと料理、入口で並んで待たされることがない。
  5. 下船の際、通常はロビーなどで順番を待つが、ここは待ち時間なしですぐに下船できる
  • 初日ロビーに入るとウェルカムシャンパンが待っている

"ウルトラ・オールインクルーシブ"と書いたが、本当にそのとおりで、他船だと、オールインクルーシブでもやや高いお酒は別料金を取られたりもするが、リージェントは正真正銘、すべて無料だった(ただし最高級プレミアのお酒は有料)。

  • フレンチレストラン「シャルトリューズ」

寄港地観光ツアーは、より地元へ入り込んで住民との交流もある「ゴーローカル(Go Local)」、船内シェフとともに地元の市場へ行って食材や料理について学ぶ「食べ歩き的ツアー(Culinary)」、温泉に浸かってヨガなどをやる「ウェルネスツアー(Wellness)」など、全部参加したいものばかり! もちろん、その土地が初めて、という人向けに王道の観光地巡りツアーも用意されている。

  • トルコのクシャダシ近郊の農家レストランで典型的な朝食をとる

  • クレタ島イラクリオンの市場でシェフとともに食材を選ぶ

  • ロドス島リンドスのアクロポリスから眺めるエーゲ海

  • ロドス島リンドスのアクロポリス

  • 船内では料理教室も開かれている、もちろん無料だ

さらに今回、出航地のイスタンブールと下船地のアテネでも、無料の観光地ツアーが付いていたのも初めての体験だった。それも、出航前にイスタンブールに前泊できて、まず船の中をゆっくり探索できたことは良かった。

  • イスタンブールのアヤソフィア(博物館)

最後の下船地アテネでもピレウス港に停泊し、アテネ観光を堪能できた。

  • アクロポリスの丘の夜景

港からアクセスするエーゲ海の世界遺産で、知られざる魅力を再発見!

今回のルートは、こちら。

イスタンブール(トルコ)→カヴァラ(ギリシャ)→エフェソス/クシャダス(トルコ)→ロドス(ギシリャ)→アランヤ(トルコ)→アンタルヤ(トルコ)→リマソール(キプロス)→マルマリス(トルコ)→クレタ(ギリシャ)→サントリーニ島(ギリシャ)→アテネ/ピレウス(ギリシャ)

  • アランヤの港

筆者はかつて、ギリシャの旅行ガイド本を制作していたこともあり、ギリシャに十数回ほど通っていたが、その旅はアテネから陸路で移動するものがほとんどで、トルコには渡ったことはなかった。最初にリージェントの乗船が決まって航路を見た時、トルコを全部回ってからギリシャへ行く方がカルチャーが分かりやすいのではないか? と思ったりもしたが、実際エーゲ海をジグザグに縫うように寄港するこのツアーは、大変有意義なものとなった。

  • イスタンブールのガラタ塔からボスポラス海峡を臨む

というのも、ギリシャ文明やエーゲ海の文明が栄えた時代は、移動手段は船だったわけで、現在賑わっている港は、当然昔から交易の港として栄えていた場所。それも、今でこそ、国境線が引かれているが、古代ギリシャ時代、マケドニア時代、ローマ時代、ビザンチン時代・・という長い期間、両国は同じ国だったこともあり、トルコのエーゲ海沿いの街にはギリシャ時代の遺跡が無数に残っている。今回のほとんどの寄港地は世界遺産がある町で、教科書にも出てくる有名な素晴らしい遺跡群をいくつも巡った。

  • ギリシャ、ロドス島の考古学博物館内に展示しているアフロディーテ像

トルコは初めて訪れたので、たとえばエフェソスのように古代都市がそのまま残っている壮大な遺跡群は度肝を抜かれたし、ギリシャ好きであった筆者はこれからもっと両国が文化的につながっていた時代の遺物を巡ってみたい、と無性に知識欲に駆られた。そして年を重ねるとともに、旅の興味も変わってくることを感じさせられた。

  • トルコのアンタルヤから東へ約40Kのところにある巨大劇場アスペンドス

  • エフェソスのケルスス図書館のファサード

ギリシャで知らない港もあった。たとえば、ギリシャ北部の「カヴァラ(フィリッポス)」。ここはアレクサンダー大王の父フィリッポス2世の治世の頃に栄えた町だが、フィリッポス2世といえば、ギリシャ第の都市テッサロニキ西部のヴェルギナの墳墓しか知らなかった。カヴァラでは、フィリッポス遺跡や、紀元前から時代は過ぎたローマ時代の素晴らしいローマ式上水道が残されており、歴史のロマンを感じさせられた。

  • カヴァラの町中に建つローマ式上水道

クルーズ船が教えてくれる新しい旅

すべての旅程を自分の興味で選び、自力で行く個人旅行ももちろん楽しいが、クルーズの旅は、ディスティネーションは自分で選ぶとしても、名も知らぬ港へ連れて行ってもらえて、そこからまた知られざる素晴らしいスポットを教えてもらえること。つまり、自分本位の旅を、もっと外へ広げてくれるということだ。能動ではなく、一度、受動態にしてみる。クルーズに身を任せて託してみると、自分が知らなかった違う世界が広がることを実感した。

  • サンライズ、サンセットの時間は毎日がドラマティック

とくに、今回参加したリージェント セブンシーズクルーズのツアーの企画は、奥深く、地元との繋がりも良好で、素晴らしい現地ガイドにも精通している印象を受けた。

寝ている間に移動するので、時間を有効に使える。町から町へと移動する度に荷作りする時間も省けるのも嬉しい限りだ。

  • 今回泊まったスーペリアスイートの船室

一度、リージェント セブンシーズクルーズの旅に出てみると、きっと旅の世界感が変わるはずだ。

  • 初日に部屋に用意されていたシャンパーニュとレオニダスのチョコレート

エアラインも豪華に、カタール航空のビジネスクラス「Qスイート」を利用

今秋、FIFAワールドカップカタール2022で盛り上がりを見せているアラビア半島の国カタール。今回のエーゲ海クルーズへは、ナショナルフラッグのカタール航空ビジネスクラスQスイートを利用した。

  • 2022年で25周年を迎えたカタール航空

「Qスイート」といえば、実は他航空会社スタッフが欧州への出張に頻繁に利用する!という業界でも評判のビジネスクラスだ。今や全世代に人気のエアラインだが、乗客の人気投票で決まる英国スカイトラックス社「エアライン・オブ・ザ・イヤー」に今年も選出された。3年連続、トータル7度目の受賞という史上初の快挙を成し遂げた。さらに3つの主要アワード「ワールド・ベスト・ビジネスクラス」、「ワールド・ベスト・ビジネスクラス・ラウンジダイニング」、「中東ベスト・エアライン」も獲得し、文句なしの最高峰エアラインといえよう。

  • 座席に着席するとウェルカムシャンパンが。乗客の名前で読んでくれる

世界のエグゼクティブがQスイートを選ぶ理由は下記だ。

  1. ファーストクラスと同様のサービスが多い
  2. 世界初、扉付き完全個室型で、最適なプラバシーが保たれる
  3. 2mのフルフラットベッドで熟睡でき、長時間のフライトでも疲れない
  4. 好きな時間に好きなメニューを選べるオンデマンド機内食、その質の高さ
  5. バラエティ豊かなお酒のセレクト
  6. 日本人CAがいること
  • Qスイートの座席

  • 2022年1月に搭乗した時とは違うカリフォルニア白ワインが入っていた

中央座席の可動式パーテーションを利用すれば、2人掛けの席がダブルベッドに、また4人掛けにしてミーティングもできる。

  • 小さな子どもがいても安心の4人席

座席は完全なプライベート空間になるので、自由に着替えもできて、ストレスなしで熟睡できるのが一番の魅力。成田からイスタンブールまでのトータル約15時間のフライトが、癒しの時間となるのだ。

  • パーテーションを閉めれば完全個室になる

機内食のレベルも高く、細やかなクルーの心遣いも嬉しい。

  • 前菜とともに白ワインをいただいた

恥ずかしい限りの体験談だが、筆者は、帰国便でドーハ・ハマド国際空港の「アルムルジャン・ラウンジ」にノートPCを忘れたまま機内に乗り込んだ。すぐにCAさんにラウンジへ連絡してもらい探してもらう。なんと、帰国して4日目には東京の事務所に届いた。飛行中の手厚い連絡、乗客を不安にさせないための心遣いには、頭が下がった。

  • 好きな時間に好きな料理をオーダーできる

一度乗ってみると、虜になるカタール航空Qスイート、ぜひとも体験してみていただきたい。

取材協力:
リージェント セブンシーズクルーズ
カタール航空